マーケティングにおいて過去の成功に溺れるという罠

企業のマーケティングにおいて成功し続けるというのは本当にむずかしいことです。

その企業にとって1つの大きな成功を経験してしまうことほど、その後のマーケティングの成功をむずかしくしてしまう要因はほかにないかもしれません。
企業のマーケティングにおいて、過去の成功に溺れるという罠を回避するのはかなりむずかしいことではないかと思っています。

そう。成功した企業ほど、過去の成功事例をベースにマーケティング戦略を展開したがるのは当然です。
しかし、その際、成功事例の本当の成功の理由をきちんと分析しないまま、2匹目、3匹目のどじょうを追いかけても、もうそこには・・・

技術を売るか?効果を売るか?

成功要因を思い違いしてしまうこと。それが一度、成功経験を味わった企業が犯してしまいがちな過ちです。

過去に成功した戦略をおなじように展開しても、売ろうとしている製品・サービスの質が違えば、かならずしも成功を積み重ねられるとは限りません。

たとえば、過去に新しい技術そのものをいち早く市場に投入し、その技術に関する権威を市場に認知されることで、その分野における市場リーダーの地位を獲得したとしても、今度は、技術そのものではなく、提供可能な価値を売り物にした製品・サービスでおんじ戦略により成功を収めようとしても、それは市場の期待値が異なるからうまくいかない場合が多い。

新しい技術そのものをいち早く市場に投入することで、その市場のリーダーになったという点では、auの3G携帯などもそうだといえるでしょう。あとでドコモがFOMAを投入しても、その技術に関する権威や認知は先行者であるauがいまだに守っているのではないかと思います。

一方で、提供可能な価値を売り物にした製品・サービスというのは、たとえば、ダイエット商品なんかを考えてみるとよいでしょう。
ダイエットという効果をうたった商品は数多くあり、その時々で流行するダイエット法があります(最近ですと、豆乳おからクッキーでしょうか?)。
しかし、効果を売り物にした商品は、技術そのものを価値とした製品・サービスと比べて、権威や先行者利益というものを独占しづらいものです。
いや、しづらいというより基本的にはできないと見たほうがよいでしょう。

技術をニーズに結びつけること、ニーズそのものを作り出すこと

なぜなら、効果そのものにいたる方法論は多くの場合、たったひとつではないからです。ダイエットの方法にも様々あるように、ある効果をだす方法は工夫次第で複数考えられる場合が多いでしょう。

そして、もう1つには効果というのはあくまで度合いであるという点です。そして、その度合いは同じ人のなかでは比較できても、違う人同士では比べにくい。あるダイエット商品がすごく効果があるといっても、その効果の度合い「すごい」は人によって捉え方が異なってしまう。

そうした商品においては、権威を独占することはむずかしく、技術的な権威の獲得によって、マーケットを納得させるという方法が通じないはずです。

さらには効果を売る場合、その効果そのものにニーズがなければ、効果そのものの達成度合いは高くてもなかなかその商品を売れません。
マーケターの仕事とは用途とその使い手を創造することでは?」というエントリーで、「マーケターの仕事とは用途(application)とその使い手(user)を創造すること」だと書きましたが、これはなかなか一筋縄ではいきません。

すでにニーズのある用途によって作られた市場に対して、新たな技術をその用途に結びつけることで既存の市場リーダーからその地位を奪うことは可能です。
先のauなどは3G技術をベースに、着うたからリスモにいたる音楽配信、そして、それを後押ししたダブル定額などの価格体系で、文字通り、市場リーダーであるドコモから市場シェアを奪うことに成功しました。

しかし、ニーズがそれほどでもない用途に対する市場を新たに生み出すマーケティングは、それとはまったく違った戦略が必要になってきます。
それこそ、人々の潜在的なニーズをいかに顕在化させるかが戦略上の重要な課題であって、そのコミュニケーションの方法は、すでにある市場を自社の側にむける手法とはまったく異なります。

成功した企業ほど真の成功要因を見間違う

こうした例のように、過去に成功をおさめた企業が成功をおさめた方法とおなじマーケティング戦略に従い、2匹目、3匹目のどじょうを探そうとする場合には、過去の成功事例そのものが足かせになってしまうことがあります。

一度成功した企業は、過去の成功要因そのものにならって、次の製品をおなじ戦略で市場展開を行い、それでなかなか結果がでなくても、時間がたてばおなじように成功にいたると誤解してしまうこともあります。
しかし、実際にはそれは時間が解決してくれるものではありません。
必要な成功要因そのものが異なる製品・サービスであれば、いくら時間をかけても、過去の成功事例とおなじ戦略を用いていては成功が訪れることはないはずです。
成功経験のない企業であれば、戦略が間違っているのではと気づくのも早いのですが、過去に成功している企業であるほど、その成功事例の方法に自信をもってしまっている分だけ、その過ちに気づかないのです。

市場を奪うか、創出するか

異なる性質をもった製品・サービスにはやはり異なる戦略が必要になります。

上にも書いたように、マーケティングで成功するには、基本的に、

  1. 既存の市場を自社の側に引き寄せる何がしかの施策(たとえば、新しい技術)を投入する
  2. 未開拓の市場を新たに創造するために市場の潜在的なニーズを発見する

の2通りしかありません。

それぞれに対して、実際に市場を攻略、あるいは市場を開拓する方法は複数あるでしょう。
しかし、一方での成功のための戦略が他方でも成功する保障はどこにもないし、むしろ、成功につながらないと考えたほうがよいはずです。

このあたりの見極めは本当にむずかしいところです。
しかし、すくなくても過去に成功した企業であればあるほど、このあたりに敏感になる必要があるのだろうなと考えます。

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この記事へのコメント

  • りょーち

    こんにちは。りょーちと申します。

    >市場を奪うか、創出するか
    うーむ。これも永遠の課題ですよね。
    そもそも現在実施しているサービスでさえ、正確な市場(正確性はこの際問わないのかもしれませんが)が認識できているものがどれくらい存在するか疑問ですよね。
    ・ターゲットとしようとしている層
    ・ターゲットになってしまっている層
    ・ターゲットにすると利益が上がりそうな層
    などなど、「ターゲット」という言葉ひとつとってみても議論の余地はいろいろありそーですね。

    ただ「成功体験がある」というのはひとつの強みでもあるかもしれませんね。チームとして「あのときみたいに頑張ろう!」っていう士気が上がる可能性も(若干)秘めてそーな気がいたします。

    ただ、私として思っているのは「日常生活の負」には市場があるのではないかと考えます。
    人は日常でのいやな出来事を解決したいと思っており、解決した結果に対価を払うのではないでしょうか?(古い考えかもしれませんが・・・)

    >既存の市場を自社の側に引き寄せる何がしかの施策(たとえば、新しい技術)を投入する
    >未開拓の市場を新たに創造するために市場の潜在的なニーズを発見する

    これはWeb系の話しだけではなく、どのビジネスにも言えそうですね。難しいですが。
    携帯電話が今のように小型化されたのも微小な電子部材を作ることができるようになったからであって、技術はより小さなモノをつくろうとしていますよね。そこには潜在的なニーズがあり、小さな電子部材を作成できる技術を持つ会社があり、通信インフラを擁立できる会社があり、サービスを考える会社があり、といろんな企業の叡智を集結してひとつの「アプリケーション」を作っています。
    Web系の会社でも、更に得意分野が細分化されていくよーな気がします。
    そんななか、「自分の会社の得意技は何か?」というものを正しく把握しておくことが強みになるよーな気がします。

    だらだらと書いてしまってもうしわけないです・・・orz
    ではでは。
    2007年04月10日 17:16

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