きっかけは、商品開発時やインタラクション・システムのユーザビリティや広くはマーケティング・コミュニケーションのデザインにも活用可能なISO13407:人間中心設計プロセスについてあらためて考えてみたことでしたが、それは何かをデザインするということ全般にいえることだと今では感じています。
新しいデザイン=すなわち新しい価値は、違う文化が交差するところ、異なるコンテキストの重なりから新しい発見が生まれることからしか生じ得ないのではないか?
それが現時点での僕の仮説です。
例えば、先日のエントリーでも「ブレインストーミングの7つの秘訣」を紹介させていただいたトム・ケリーの『イノベーションの達人-発想する会社をつくる10の人材』には、コラボレーションの秘訣として、サッカーチームに5つの鍵が紹介されています。
サッカーチームに学ぶ5つのチームワークの鍵
以下、5つの鍵とされるテーマを見て、僕自身が感じたことを書いてみます。- 1.指導はたっぷり、指示は少なく。
- サッカーチームの監督やコーチは基本的には、いくらそれが大事な試合であってもゲーム中に細かな支持を選手に伝えることはできません。サッカーのゲームにおいては個々の選手とチームワークで様々な展開に対して対応していかなくてはなりません。そのため、指導者に求められるのは、現場での指示ではなく、選手が大事なゲームを戦うためのスキルと自信を伸ばす指導、支援を行うことです。それはデザインの現場でも同じだと僕は思っています。
- 2.パスを重視する。
- ブレインストーミングが創造するデザインチームで有効なのは、チームメンバーがそれぞれアイデアを出し合うことで、とにかくアイデアを量産することができる点です。ひとりの頭で考えるより複数の頭で考えるほうが、単純に人数分のアイデアが出せる以上に、お互いの刺激により出てくるアイデアの数はそれ以上に増える。ひとりで突破できない壁もパスをつなげば突破できることもある。それにはアイデアをパスしあうだけでなく、ボールをもらうという責任をもそれぞれ相手とパスしあえる信頼感がおたがいに必要になります。信頼されること、そして、信頼すること。
- 3.全員がボールに触れる。
- ボールという責任をチーム全員で共有すること。チームなので誰かひとりが何の責任ももたないということではゲームは成り立ちません。デザインチームにおいても必ず参加するメンバーのすべてに重要な責任をになわせることがホットなチームで創造的なデザインを開発するためには必要なことだと思います。
- 4.複数のポジションを守れる技能を教える。
- 僕がこの5つの鍵でもっとも「これだ!」と思うのがこの項目。ようするに専門性だけじゃダメなんです。サッカーのチームならメンバーは11人って決まっている。ようするにそれは必要な専門機能の数だけ人的リソースのコストを使うわけにはいかないという制約条件があるということです。
そこでチーム内で自分の専門分野の仕事しかできない人がいると、途端にその分のしわ寄せは組織の別のところに必ずいってしまいます。ディフェンダーはディフェンスだけ、フォワードは攻撃だけではゲームは成り立ちません。専門性をもつことは大切だけど、それだけやってればいいと考えているなら、ちょっとまわりを見回してみてほしい。きっといくつもミッションを抱えて困ってる人がいるはずです。
専門分野にこだわりすぎると、チームワークをつくるスキルの欠如につながりかねません。なぜなら、チームワークをつくるスキルとはまず自分の専門分野からいかに抜け出して、いかにほかのメンバーの役割のサポートに飛び込んでいけるかということに他ならないから。
できることをやるのは簡単なんです。自分にとっては非専門分野であり、場合によってはできないと思えることにさえ、いかに飛び込んでいけるかがチームワークでは重要なポイントなんだと思います。
目指せ!オランダ・トータル・サッカーですよ。 ディフェンダーでもチャンスがあればサイドラインを前線まで一気に駆け上がっていくくらいじゃないとチームは強くなれないと思います。
- 5.ドリブルを控えて、ゴールを目指す。
- これも当然重要ですよね。単独ドリブルでゴールを目指すのはいいけど、それじゃあ、途中で相手にボールを奪われるまで、他のメンバーはサポートすらできません。ゴールを目指すイニシアティブはメンバー内のパスワークにより相互に入れ替わらないとチームでやってる意味がない。
これは閉じた組織の中だけの話としてではなく、例えば、Webサイトをデザインする業者とそのクライアントの間でも成り立つ話ですし、まったくの異業種のコラボレーションにおいて、新しい価値を生み出すという共通のゴールにおいて、その仕組みをデザインする際にもいえることだと思います。
とにかく自分の専門性にこだわってはダメで、外にある他の専門性といかに交わるかが重要だと思っています。
それを意識的にやらない限り、新しい価値、それから、それを提供することによる新しい利益の創出は生まれえないと思います。
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