発見する力、それを喜ぶ力 : 失敗? そんなの気にしてどうするの?

ISO13407における人間中心設計プロセスの上流でも、はたまた、奥出直人さんが『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』の中で提唱している創造のプロセスにおいても、IDEOのイノベーションの技法のうちの1つである観察=フィールドワークにおいても、そして、システム開発の分野での「要求開発」でも、マーケティングにおける市場調査でも、創造の源にはユーザーの顕在的/潜在的なニーズの発見が不可欠です。

言い方を変えれば優れたインプットこそが優れたアウトプットを生むための必要条件なのだと思います。

顧客を観察することの重要さとその有効さ

IDEOのトム・ケリーは、顧客を観察することの重要さとその有効さを繰り返し説いています。

ともあれ、顧客と一日過ごして何が見られるかを試してみたらどうだろう。ひょっとしたら、それが前進の一歩になるかもしれない。より優れた新しいものを作りたいと思っているのなら、ぜひとも人が格闘し苦慮しているところを見るべきだ。
トム・ケリー『イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材』

ISO13407でも、ユーザーの利用状況を分析し、ユーザーの要求仕様を立案するリクワイアメント・エンジニアリング活動が必要とされます。

このように言うと、「ふうん、そんなの当たり前じゃないか」とか、「わかってるけど、実際、顧客の利用状況を理解する時間なんてないし、どうすればいいかわからない」とか思う人が多いのではないかと思います。

しかし、そんな風に考える人は、顧客理解だとか、ユーザーの要求を知るという活動の本質を捉え間違えているはずだと僕は思います。

発見:自分自身が変わること

僕がそんな風に思う理由を、以下の茂木さんの言葉ほど端的に表したものはありません。

創造性の発露の最高の形態の1つは、自分自身が変わることである。
茂木健一郎『脳と創造性 「この私」というクオリアへ』

そう。勘違いしてはいけません。観察や調査で必要なのは、自分自身の見方を変えることです。自分の外にでて、外の世界に創造のきっかけとなるものを得ることで自分自身を変えることだと思います。

これを捉え間違えていると、リクワイアメント・エンジニアリング活動は成り立ちません。それは単に顧客やユーザーに関する知識を得ることではなく、新しい自分を発見することなのです。

失敗? そんなの気にしてどうするの?

もう1つ発見や創造性を重視する上で大事だと思うことは、失敗を気にしない姿勢だと思います。

私は失敗したことがない。一万通りのうまくいかない方法を発見しただけだ。
トーマス・エジソン

そう。僕も失敗も発見なのだと思います。学ぼうとする気持ちがあれば、失敗は「うまくいかない方法の発見」以上のなにものでもありません。失敗をおそれて無難な道を選ぼうとする態度ほど、創造性の障害となるものはないでしょう。

人はライト兄弟のキティー・ホークでの成功をすばらしいと称賛するが、彼らが実際に空を飛べる飛行機に辿りつくまでに200種類以上の翼の形状を試し、7種類の航空機を墜落させて自分の生命まで危険にさらした事実をしばしば見過ごしている。
トム・ケリー『イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材』

とにかく、やってみよう!という姿勢をもっている人とそうでない人では、その後の未来も大きく違うはずです。

今日も仕事をするなかで、いくつか相談を持ちかけた際に「やってみます、時間をください」と言ってくれた人と、逆に、こちらがやってくれではなく、できますか?と相談を投げかけているだけにも関わらず、リスクばかり計算してこちらの相談の仕方の情報不足を指摘するような反応をみせる人の両方に出くわしました。
もちろん、前者には仕事をお願いしましたし、これからもいっしょに仕事をしたいと感じたのに対し、後者はできれば二度と仕事をしたくないなと感じました。

創造は頭の中でするものではない

もちろん、ここで言っているのはリスクなんか考えるなということではありません。

リスクを計算するのは大事です。しかし、リスクを計算することが有効なのは、まず、やってみようという積極的な姿勢があってこそです。積極的にやろうとするときにはじめて、リスクを計算することを含めて仮説を立てるということが意味をもつのです。

トム・ケリーは『イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材』の中でこんな風にも書いています。

人ぜひあなたも辛抱強い観察と迅速なプロトタイプ製作をイノベーションのレシピに加えて欲しい。
トム・ケリー『イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材』

結局、そういうことなんじゃないでしょうか? いくらリスクを計算してもやってみないとわからないし、どんなに知識を形式化された情報から得ても生き生きとした発見にはいたらない。創造とは、イノベーションとは、頭の中やオフィスの中でするものではなく、現実の社会のなかで、人々の暮らしのなかで生み出すものではないかと。

そして、そうした創造、イノベーションにいたる発見を喜べる力を自分はもっているか?
そう、常に問いかけてみる姿勢が重要ではないか、と。

 

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