ユーザビリティという言葉の適用範囲は? Web? インタラクティブシステム全般?

まぁ、いちお、念のため。

あくまでユーザビリティはWeb限定でしょう。リアルなほうには、既にユニバーサルデザインという言葉がある。ユーザビリティという言葉の意味を拡大解釈させるのはよろしくないと思う。
はてなブックマーク - デザインを考える上では、外部刺激よりユーザー個々の記憶やコンテキストが重要:DESIGN IT! w/LOVE

いや、それは違うでしょう。あまり拡大解釈するのはいけないという意見には一理ありますが、ユーザビリティがWebに関するものという解釈はやはり間違っています。

むしろ、他のインタラクションシステムでも問題とされていたユーザビリティが、Webの普及により、Webでも問題とされるようになったというのが歴史的な経緯としては正しいのかなと思ったりしてます。僕自身も歴史的な経緯が本当にそうかはちゃんと調べたわけではないので明確ではありませんが。
ただ、ドナルド・ノーマンの『誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論』などでの指摘があって、デザインにおけるユーザビリティへの関心が高まったということもあると思いますので、あながち間違ってはいないのかなとは思います。

ISO9241-11

いわゆるユーザビリティに関する国際規格として様々なところで取り上げられるISO9241-11。

この企画は、視覚表示装置(VDTs)を用いたオフィス作業に対する人間工学的要求事項を取り扱った、第1章から第17章で構成されるISO9241の一部です。
この第11章で取り上げられるのが、引用されることの多いユーザビリティを定義です。

usability:
Extent to which a product can be used by specified users to achieve specified goals with effectiveness, efficiency and satisfaction in a specified context of use.

・effectiveness: Accuracy and completeness with users achieve specified goals.
・efficiency: Resources expended in relation to the accuracy and completeness with which users achieve goals.
・satisfaction: Freedom from discomfort, and positive attitudes towards the use of the product.

従って、これはWebに限らずオフィス作業に対する人間工学的要求事項を考慮すべき「視覚表示装置(VDTs)」に範囲が及ぶものと考えるのが妥当かと思われます。

この定義をみると「ユニバーサル・デザイン」とユーザビリティを対応させるのもどうかと思います。
というのも、ここでの定義は「ユニバーサル」とはむしろ正反対の状況("pecified")を指し示していると思えるからです。

"specified users","specified goals","specified context of use"

むしろ、Web関連に用語で言えば、「ユニバーサル・デザイン」に近いと考えられるのはアクセシビリティのほうかなと思います。
これも単純に同意語とはいえないと思いますが。その意味ではWebにもWebの「ユニバーサル・デザイン」があるのかもしれませんね。

ISO13407

もうひとつISO9241-11と同じく、ユーザビリティという話で言及されることの多いISO13407。
これもこのブログで度々取り上げさせていただいているとおり、"Human-centred design process for Interactive systems"(インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス)です。
なので、やはりWebという限定はないと考えたほうが妥当です。

combination of hardware and software components that receive input from, and communicate output to, a human user in order to support his or her performance of a task

上記のISO13407からの引用をみてもWebに限らない、ユーザーのインプットに対して、コンピュータが何らかの処理を行い、アウトプットするあらゆる製品がその適用範囲になるかと思います。
これは結構、適用範囲は広いと考えたほうがよいでしょう。

以上。
ユーザビリティという言葉は、すくなくともインタラクティブシステム全般に適用されうる言葉ではないかという指摘でした。

P.S.
人とコンピュータを利用した製品のインタラクションのデザインということでいうと、このユーザビリティの話といっしょにHCI(human computer interaction)的な研究に関してもすこしは抑えておいたほうがよいのかなと思ったので追記。

それから、このエントリーのきっかけとなった「デザインを考える上では、外部刺激よりユーザー個々の記憶やコンテキストが重要」では、「本当にむずかしいのは人によるサービスのユーザビリティを高めることですね」といったことを書こうと思っていた、なんてことを書いて、それが拡張しすぎでは?という指摘につながってるんですが、まあ、ユーザビリティという言葉にこだわるかどうかはともかく、僕がこういう方向に思考を進めてしまうのも、『アンビエント・ファインダビリティ』でも紹介されているようなHCIからHIIへといった流れにそもそも僕の思考が親和性をもっていて、だからこそ、"Human Information Interface lab"なんてものを作ってたりするんだろうなと自分の中でなんとなく整理されたこともあわせて追記。

そうそう。僕の最近の関心として"インタラクション・デザイン"は結構熱いんです。新しいデザインのアプローチにつながるかな、と。

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