僕たちはこれから何をデザインしていくのか?

三度、書いておこう。

僕たちはいま何をデザインしているのか?

つまり、本当のイノベーションは買い物という行為をデザインしなおすことなのだ。
トム・ケリー『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』

この言葉は、有名なデザインファームであるIDEOがあるテレビ番組の企画で「五日間でショッピングカートのデザインをせよ」という課題が与えられ、見事に期間内にそれを成し遂げただけでなく、その形態はもちろん、スーパーマーケット内での買い物そのものの仕方を一変させるようなショッピングカートを生み出したあとに語られた言葉です。

先に紹介した奥出直人さんの『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』という本でも、デザイン思考=イノベーションと定義され、実際のデザイン思考でイノベーションとクリエイティビティを実現している企業としてIDEOは紹介されています。
『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』を読んでみても感じましたし、そもそも、僕は昔からそうであるはずだとかたく信じていますが、創造性は決してごく限られた人だけに与えられた能力ではなく、訓練と環境次第で誰でも発揮できるようになるスキルです。

しかし、それと同時に、もちろん一般には下記の引用にもあるな風に考えられているということも知っています。

しかし、多くの企業は新奇な策をとることをためらう。さらに、本当に独創的な人間はきわめてまれにしかでてこないと考える傾向がある。私たちの信条は、それとはまったく逆だ。誰もが独創的な部分をもっており、それを刺激するような社風をつくりだせば、その部分を開花させられる。すなわち、リスクや大胆なアイデアを受け入れ、ときおり失敗があっても大目にみることだ。私たちはそうしてクリエイティビティが育まれるのを見てきた。
トム・ケリー『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』

これは企業だけでなく、個人にもいえることです。
自分には創造力はないと決め付けたりする人は決して少なくはありません。
また、人材を探している人も、なかなか独創性のある人は見つからないし、人件費が高いなどと言ったりします。

でも、決してそんなことはないはずです。
大方の人はちゃんと独創性をもっていますし、創造力を身につけることもできます。

人件費が高いなら、未熟な人を雇って育ててもいいわけです。
いや、企業にとっては下手に他の文化が染み付いている人を中途採用するよりは、手垢のついていない人を自社内で創造的な人材へと育てたほうがいいくらいです。

しかし、その方法がわからないというのが実情なのでしょう。
正直、僕も最近までそう思ってました。
でも、いまはなんとなく育て方、教育の仕方がわかるような気がします。

それは『デザイン思考の道具箱―イノベーションを生む会社のつくり方』を読んで、ああ、これは自分がいままで勝手に実践してきたやり方だなと思えたのがきっかけです。これからはもっと「リスクや大胆なアイデアを受け入れ、ときおり失敗があっても大目にみる」姿勢をとりながら、自分のまわりの若い人にも「デザイン思考」のプロセスとプラクティスを勧めていこうと思っています。

技術そのものによるコストもかかるイノベーションから、市場の現場からヒントを得ることからはじまるミクロなイノベーションへ

それでも、十分に社会に変化は起こせます。
技術そのものでは差別化がむずかしい分野では、後者のミクロなイノベーションだけが企業の競争力となるのでしょう。

社会を豊かな方向に変化させるイノベーションを起こせない企業は、それこそインドなどへの業務のアウトソーシングにより競争力を失っていくでしょう。
そうなってからではどうにもなりません。

いまから組織の創造性とイノベーション力を高めることに努力しないと遅いのかもしれません。いかにそれを企業の経営戦略に据えられるかはひとつのカギなんでしょう。

さて、僕たちはこれから何をデザインしていくのでしょうか?

 

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