マーケティング・マネジメントの基本に戻る必要性

Webマーケティングというと、SEOやリスティング広告、LPOやSMOなど、アクセスログ解析やCGMマーケティングなどといった手法に関するキーワードばかりが注目されています。なんとなく状況としては、Webマーケティングって既存のマーケティングとは違うの?という印象すら与えていそうですが、実はそんなことないですよ、というお話を。

もうひとつの市場としてのWeb

現在の市場におけるWebマーケティングの動向を整理してみましょう。
まず、企業が積極的にWebでマーケティングを行うようになった背景としては、以下のようなWeb環境の変化を挙げられると思います。

  • Web利用人口の増加(高齢者層の利用増)
  • 情報検索、オンラインバンキング等の各種手続き、商品の購入・予約、動画の閲覧など、利用用途の多様化。それにともなうユーザー一人あたりの利用時間増
  • テクノロジー利用コストの低下
  • Webデザインの標準化とリッチクライアント化
  • CGM(ブログやSNSなど)を舞台としたユーザー間での口コミやアフィリエイトの普及
  • リスティング広告やアクセスログ解析など、Webマーケティング関連サービスの市場浸透

こうした環境の変化を背景として、マーケティングを目的とした企業のWeb利用も積極的になり、Web環境そのものがもう1つの市場といえるほど成熟しています。

ここで「もう1つの市場」というのは、リアルで力のある企業が必ずしもWebでも力をもつとは限らないという面があるからです。これはユーザー側のバラツキというよりも企業側のWebへの取り組みにバラツキに起因するものです。

よりユーザー理解が必要とされるWeb環境でのコミュニケーションをうまく行っている企業とそうでない企業の差が如実に見られるのがWebマーケティングの現状です。
顧客理解から適切なコミュニケーション・スキームを組み立て、それを具体的なコンセプトに落とし込めている企業がWebという市場でのマーケティング活動を効果的に行えている状況なのだと思います。

市場におけるプレイヤー

一方、もうひとつの市場といえるWeb環境にはどんなプレイヤーが存在しているでしょうか?
大まかに分類すると下記のようになると思います。

  1. 一般事業会社(広告主あるいは自社サイト運営)
  2. 検索サイト、ポータルサイト(広告掲載メディアとして)
  3. Webマーケティング関連サービス提供会社(ネット系広告代理店、SEMコンサルティング、アクセスログ解析サービス etc.)
  4. Webサイト制作会社(Webサイトの構築&運用サポート)
  5. 一般ユーザー(利用者として、ブログやSNSを使った口コミやアフィリエイトでのパートナーとして)

このプレイヤーの顔ぶれをあらためて見ると、意外なことにWebマーケティング以前のマス・マーケティングの時代とその顔ぶれに大きな違いはありません。

広告主がいて、広告を掲載するメディアがあって、広告主とメディア、さらには広告制作会社のあいだをとりもつ広告代理店がいる。そして、その先には当然、一般の顧客、消費者がいるわけです。

もちろん、マーケティングとは広告だけではありません。



上図のように、広告という視点からもう一歩広げてバリューチェーン全体で考えても、上記の主要なプレイヤーのリストに、販売面でAmazonや楽天のようなECサイトが加わるくらいでしょうか?
購買や出荷の部分では一部プロセスがWeb化されていたりもしますが、メーカーなど一般事業会社にとってコアとなる生産のプロセスはまったく手付かずの状態ではないかと思います。

その意味では、「もう1つの市場」といえどもプレイヤーという面では大きな違いはないと思います。

そのことに気づいて、しっかりと従来どおりにマーケティング環境の理解から具体的なコンセプト・メイキングというプロセスを経てWebマーケティングを展開している企業と、市場理解も顧客理解もあいまいなまま、SEOやLPO、SMOなどの流行のキーワードに流された表面的なWebマーケティング展開を行っている企業では、明らかに得られる成果に差が出てきているのではないかと思います。

市場理解、顧客理解の欠如がもたらすもの

結局、環境が変わっても市場のプレイヤーを見るかぎり、マーケティングそのものの構造に変化はないんです
また、市場環境が変わることなんて、Webマーケティングが登場する以前にだっていくらでもあったことです。

Webマーケティングがよくわからないと嘆く既存のマーケターの方がいらっしゃるとすれば、マーケティングは何も変わってませんよと言ってあげたい。
また、Webマーケティングではじめてマーケティングに関わった人には、逆に既存のマーケティング・マネジメントの基本くらいはちゃんと押さえておいたおうがいいですよと言ってみたい。

結局、Webという場に市場が移っても、企業がマーケティングを行うにあたり、市場を理解し、顧客視点に立った価値提供を行っていく必要があることには変わりがありません。
その一方で「Webマーケティング」というキーワードを介して語られるマーケティングにはこのあたりの話が抜け落ちているのが問題です。

上流工程での市場理解や機会分析がおろそかになれば、当然、下記のようなデメリットが発生します。

  1. ビジネスの根本的な視点に立ってWebマーケティングを展開できない
    ⇒ ビジネス上の目的とWebマーケティングの目的とするものがリンクしない状態となる
  2. Webマーケティングそのものも市場理解、ターゲットユーザーの理解が不十分なまま施策が展開されることで、ユーザーが魅力や愛着を感じることが困難なWebサイトやキャンペーンが展開されることになる
    ⇒ ユーザーが理解できないものからは期待されたマーケティング効果は得られない

コンセプトがあいまいなら出来るものもあいまい」だとか「ユーザーの生活や思考を知ることからデザインをはじめる」とかのエントリーでも触れましたが、最初の市場や顧客理解からはじめないと、なんだかわからない施策をやるはめになり、時間やコストばかりかかって成果が出ないという結果になりかねません

で、いま、Webマーケティングと呼ばれるものを実行する際に、きちんと市場理解や顧客理解を上流工程のプロセスを踏んだ上で、戦略策定~戦略の実行を行っていますか?というと、うーんという感じではないでしょうか。

このあたり、Webマーケティングにおいても、もう一度、マーケティング・マネジメントの基本に戻る必要があるのではと最近強く感じてます。

すくなくとも、Webマーケティングと呼ばれているものがマーケティングだと思ったら大間違いかと。

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  • ウェブもリアルも基本は同じ
  • Excerpt: ここで「もう1つの市場」というのは、リアルで力のある企業が必ずしもWebでも力をもつとは限らないという面があるからです。これはユーザー側のバラツキというよりも企業側のWebへの取り組みにバラツキに起..
  • Weblog: oduesp
  • Tracked: 2007-02-28 06:43