コンセプトがあいまいなら出来るものもあいまい

ちょっと前に書いた「そのサイトに魂はあるのか?」と絡む話なんですが、Webサイトの構築やリニューアルの際に見られるコンセプトってどうもピリッとしないものが多くありませんか。

言葉としては、なんとなくきれいに(無難に)まとまっていて、決して内容的にも間違っているとはいえないのだけど、コンセプトとして表現しているものがあいまいなものが多いと思います。
コンセプトは、そのWebサイトが何なのかを要点をまとめて示したものです。当然、コンセプトがあいまいなら出来るものもあいまいになります。

コンセプトは標語じゃない

それがどういうわけかどこにでもありそうな標語みたいになっちゃってるものが多くて、それでいて要望は差別化だったりするので意味がわかりません。

コンセプトと聞くと、コンパクトにまとめないといけないという強迫観念でもあるのでしょうか? 
短くまとめようとするあまり重要な部分の独自性や具体的にどんな価値を提供するのか、ユーザーとどんな関係をどう築くのかといった部分を割愛してしまっているのでしょうか?

もちろん、そんなおかしな話はなくて、短く簡潔にまとめるヒマがあったら、意味のある内容になっているかを検討することに時間を割いたほうがいいのはいうまでもありません。

繰り返しますが、Webサイトのコンセプトとは、そのWebサイトが何なのかということを要点をまとめて示したもので、そのWebサイトの独自性や具体的にサイトがどんな価値を提供するのか、ユーザーとどんな関係をどう築くのかといったことを表現したものです。
なので、要素としては「誰に」「何を」「どうやって」「何故」提供するものなのかが含まれている必要があると思います。

コンセプトはユーザー視点で描いたサイトの目的

その意味で、コンセプトはユーザー視点で描いたサイトの目的なんだと思います。
企業など、サイトオーナー側にとってのサイトの目的は別にあるとしたら、それとは矛盾のない形で、ユーザー視点に変換したものがWebサイトのコンセプトとして最初に明示することが大事です。

その後の作業、企画の詳細、設計、コンテンツの調達などは、そのコンセプトに従って行うのですから、企業側の「サイトの目的」とユーザー視点に立った「コンセプト」がともに明確な形で示されていなければ、できたものがあいまいで箸にも棒にもかからないようなものになるのは、ある意味、当然です。それどころか、コンセプトがあいまいなら、何をやっていいのかいまひとつ明確にならず、作業自体が遅くなってコストも余計にかかってしまったり。できるものもいまひとつで、コストも必要以上にかかるなんて最悪ですよね。で、挙句の果てにコンセプトがユーザーにも伝わらないから、ユーザーにも使ってもらえない。このサイトっていったい何だろうと感じるようなサイトをユーザーが利用するわけないですから。

はじめに哲学ありき

先日、IA Spectrumさんで、『Human Interface Guidelines:The Apple Desktop Interface』に関するエントリーがありました。その中のこんな一文はとても納得しました。

ちなみに上野さんのテキストで触れられていますが、この本は「Philosophy」という章から始まっているそうですね。
UIデザインが、言わば“価値観の確立と共有”から始まるということ ―― これが、Appleならではの魅力溢れる製品デザインの根底にある思想だというのは、文句なく納得できる話です。

結局、デザインのはじめに定義すべきは、その「Philosophy」やコンセプトです。そのはじめの哲学が何の力ももたないような代物ならできてくるデザインがゆるーくなるのも仕方がないのではないでしょうか。

やっぱりISO13407

そう考えると、やっぱり結局はISO13407のデザイン・プロセスを踏襲するのがよいのではないか、と。



今年になって書いたエントリーをこのプロセスと関連付けて整理すると、こんな風になると思います。
  1. 人間中心設計の必要性の特定:今回と「そのサイトに魂はあるのか?
  2. 利用の状況の把握と明示:「ユーザーの生活や思考を知ることからデザインをはじめる」、「今ある世界と別の世界を想像してみるスキル
  3. ユーザーと組織の要求事項の明示:「分析の視点:Webデザインの場合
  4. 設計による解決案の作成:「変化するWebのデザインとその設計スキル」、「Webデザインの自由度、膨大な選択肢から選ぶことのむずかしさ
  5. 要求事項に対する設計の評価:「アイトラッキング

あと関連するところとしては、MarkeZineに書いた、この話もそうですね。


1にも2にもまずデザイン・プロセス

こういうプロセスへの意識が、結局、デザインの良し悪し、そして、Webサイトの成功の可否を非常に大きく左右するのだということを最近とても感じています。それもあって、この周辺の話ばかり書いているわけですが、先日も「Webで考えるな、Webのことは一旦忘れろ」と表現したように意外とこのプロセス全体を眺める視点に立つこと自体がむずかしいんです。
なにしろ最初は哲学なわけですから、これは普通にデザインという言葉でイメージする領域とは違います。かなり意識してやらないとできないし、それなりに練習も必要になるはずです。

そういえば、先日、買って読んでる『デザイニング・インターフェース』もかなり面白くて納得いく内容なんですが、これが文字通り納得できて活用できるようになるには、まず最初にこのプロセスを身につけておくことが大事だと感じます。

1にも2にもまずデザイン・プロセスです。

P.S.
続編として「わかるコンセプト」を書きました。
(2007/02/17 2:14追記)

  
Webデザインに関する本はこちら

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