デ・マーケティング:商品を大事にするための戦略

一般的にマーケティングとは、需要を創造し、刺激し、喚起する活動として認識されていると思います。一方でその逆に、需要を抑制する活動としてのデ・マーケティングが必要な場合があることは案外知られていません。

デ・マーケティングとは

コトラー(P.Kotler)とレビイ(S.T.Levy)が提唱した概念であるデ・マーケティングとは、ある特定階層の顧客需要を一時的ないし永続的に需要を減退させるマーケティングの一局面として定義されます。

この考え方の背景にあるのは、マーケティングは本来、現在の企業の供給能力、価値提供能力とその中・長期的な目標に合うように需要を統制しなくてはならないという考え方です。
つまり、カンタンに言ってしまえば、企業が自分たちのいまの力を超えた販売を、短期的な数字に目が眩んでしてしまったばっかりに、中・長期的な意味での信頼を失ってしまうようなことはやめましょうという話です。

需要と供給のバランス・コントロール

もうすこし言うなら、マーケティングにおいては、常に自社の生産能力、価値提供能力から鑑みた需要と供給のバランスのコントロールを行なうことが大事だということです。
需要活性化の側面が通常認識されているようなマーケティングであり、その需要減退の側面において企業に求められるスキルがデ・マーケティングであるということになります。

これが重要なのは、最近の「賞味期限切れ」云々に絡んだニュースをみてもわかるでしょう。
あのニュースにおいては、もちろん、コンプライアンス的な側面からみた情報開示の透明性みたいな面でも問題がありますが、一方ではそもそも、マーケティング的に需要と供給のバランス・コントロールをうまく機能させるしくみがあれば、起きなかったであろうと考えることができるのではないかと思います。

期待と現実

マーケティング・コミュニケーションにおいては、顧客のニーズを喚起しようと、どうしても耳障り、見栄えのよい形での商品紹介がされます。そこでは期待と現実のギャップが生じることを完全に免れることはできません。

それが個々人においてのマーケティング・コミュニケーションと実際の商品のギャップである分には、仕方がない面もあります。完全に1対1の会話でさえ、あるモノに対する説明と実際のモノに対するギャップを完全に消すことはできませんし、それは単に説明する側の問題だけではなく、説明を聞く側にも依存するからです。

しかし、そうではなく、あるコミュニケーションが多くの人に同じような誤解を生じさせているとなると話は違います。それは明らかに情報の発信者側に問題があると見てよいでしょう。それが意図的なのか、単に失敗なのかは別として、期待と現実のあいだにギャップがあるなら、価値提供という視点から見た需要と供給のバランスをとる意味で、マーケティング・コミュニケーションそのものを見直す必要があるでしょう。

実際の価値以上の期待をもたれ、一時的に商品が売れるのは短期的にみればいいのかもしれない。しかし、中・長期的にみれば、それがマイナスであることは考えればわかることです。その場合には期待値と実際の価値提供能力のあいだのバランスをうまくコントロールしてあげなくてはいけません。

商品を大事にするためのデ・マーケティング

ただし、そうは言ってもそれはカンタンなことではありません。とても需要がある商品がなぜ売れているのかをマーケターなり、そのサービスの提供者がきちんと理解していないと、需要と供給のバランスに気づかないこともあります。

例えば、見栄え的に非常にわかりやすい商品なりサービスがあった場合、見栄えの説得力が実際に提供するサービスの価値を超えた期待を与えてしまうことがあります。それをサービスそのものへの需要だと勘違いして喜んでいると痛い目にあいます。素人目に見栄えのよさが何かをしてくれそうという期待を膨らませるものの、実際には顧客がもともと持っていた効用をそのサービスが果たさないということもありえるからです。

その場合には、現場レベルでのデ・マーケティングを行なわなくてはいけません。顧客が見栄えに騙されている際に、自分たちまでそれに騙されないよう、顧客の本当のニーズを探った上で、それにサービスが適していなければ、むしろ需要減退の行動をする必要があります。そうでなければ、大きすぎる期待が結果として過度な不満を生み、商品そのものの価値を著しく下げてしまうこともあるからです。商品を大事にしようという思いがあれば、デ・マーケティングのスキルは必須です。

外部による不本意な需要の活性

また、需要が外部の力で不本意に活性化されてしまう場合もあります。

今回の「あるある大事典2」の件などは納豆メーカーにとってはいい迷惑だったかもしれません。なかなかこれくらい急激に需要が外部の力で活性化されてしまうと企業側にはどうしようもないかもしれません。
それでも、自社商品を長い目で大事にしようと考えるのであれば、完全に需要を抑えることはできないまでも、デ・マーケティング的行動をとることで期待と現実のギャップが不用意に広がりすぎてしまうことは抑えられるかもしれませんし、そうした商品を大事にする姿勢が後に認められることもあるでしょう。

いずれにせよ、身の丈を必要以上に超えてしまったマーケティング施策は、中・長期的にみればよい結果を生むことはありません。その意味でも常に自分たちの現時点の身の丈と、成長戦略における計画とマーケティング計画をバランスさせるような視点が必要なのでしょう。

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