Webデザインの自由度、膨大な選択肢から選ぶことのむずかしさ

昨日の「変化するWebのデザインとその設計スキル」の続きとして。

ここで考えているのは、いま、思いつく中でどれくらいWebには<デザイン>するのに使える表現手段や動きを規定する方法があるのかを列挙してみることで、確実な自由度の高まりとそれゆえに生じる膨大な選択肢からどうやって最適な選択を行なうのかについてのヒントを得られないかということでした。

前回は、その中で「リッチ化、シームレス化する画面」と「画面の内と外」について考えました。今回はさらに「Webサイトの内と外」「多様化する入出力端末」「コンテンツの管理とコントロール」について考察してみようと思います。



Webサイトの内と外

以前にも「Webサイトの内と外」というエントリーで、Webサイトへのアクセスは何もサイト内でのページ遷移だけに限られるものではなく、それ以上に検索エンジンやはてななどソーシャルメディアからのアクセスも多く、むしろ、ユーザビリティなどについて考える際も、Webサイトを単純に独立した視点で捉えるのと同時に、Webネットワーク全体(とはいえ、全体を本当に把握するのは不可能ですが)の中での1つ1つの情報、機能として捉えたほうがよいのではと考えました。
それをさらに実際に<デザイン>するという面から展開したのが「SEOをマーケティングの一部だと考えるのなんてもうやめたらいいのに」というエントリーでした。

現在のWebデザインは、当初、出版物のデザインを踏襲して生み出された部分が多くあります。そのためか、本1冊の独立性と同様の考えをWebサイトに持ち込もうとする嫌いがあります。
しかし、ここ最近あちこちで言われるように、もはやWebサイトを1つの独立した単位で扱うよりも、ページ単位、あるいは、より細分化された記事(データ)単位で、Webというものを捉えようとする動きがあります。そこではWebサイトとして記事(データ)をどのように扱うよう設計するかという問題と同時に、Web全体でその記事(データ)をうまく活用するにはどうしたらよいのかという設計上の問題も生じています。

このあたりの広義のWeb標準ともいえる領域には、あまり知識がないので深くは踏み込めませんが、RSS/Atom Feedやmicroformatsなどの動きはこの「Webサイトの内と外」という話と大きく関わってくることなのでしょう。

多様化する入出力端末

最近、あえてPCで音楽を聴くようにしています。last-fmに聴いた音楽のデータをスクローバルするためです。昔から音楽は、本のように積極的に語ることがむずかしく、本と同等かそれ以上にジャンルも多岐にわたるためにコミュニティには向かないだろうと思っていました。
でも、last-fmのように聴いた曲を自動的にデータ化してくれて、それで同じ曲を聴いた人を紹介してくれるような仕組みあれば話は変わってくるのではないかと思いました。実際、趣味が近い人が聴いている曲を見て、その曲を聴いてみようとか、買ってみようと思うという意味で役に立っています。

last-fmに限らず、それまでは人が入力したデータを主に扱っていたWeb上にますます、さまざまなシステムが自動的に吸い上げられたデータが載ってくるのは間違いないでしょう。最近だとNike+iPodもそうですよね。

あるいは、その逆にWeb上の情報を別のシステムに返してあげることもあるでしょう。Web上でのユーザーによるスポット情報をカーナビに転送するGAZOO.comのG-BLOGもその一例でしょう。

このあたりは先の「Webサイトの内と外」でも書いたデータの標準化といった話ともつながってくる話ですね。<デザイン>する際には、こうしたPC-モバイルよりさらに外のことも考慮する必要がでてくるのでしょう。

コンテンツの管理とコントロール

というわけで、データが自社のWebサイトの内だけでなく、その外部やさらにはPCやモバイルなど、それまで想定されていた端末のメディア以外にも広がっていく可能性がでてくると、これまでより広い視点でCMSというものを考える必要が出てくるのでしょう。

Web2.0のなかでデータの重要性が説かれましたが、それは何もネット系の企業だけの問題ではないということです。それは先の例のように、Nikeの問題でもあるし、TOYOTAの問題でもある。もっとわかりやすいところでは、当然、新聞社のような紙媒体をメインに扱ってきたメディアの問題でもあります。自分のところは関係ないやと思っていたら、Web2.x時代には取り残されるのではないかと思います。
Web2.0から2.xへマイナーバージョンアップされる中で、課題となってくるのは、2.0の時点ではまだ一部の企業のうちに留まっていた「データの重要性」がどこまで一般的な企業にまで広がっていくかということではないかと思っています。

その際には、1つのデータがWeb、モバイルに限らず、どういう端末において、メディアにおいて利用されるかということまで踏まえて<デザイン>する必要があるということです。

Webデザインの自由度、膨大な選択肢から選ぶことのむずかしさ

さて、今回と前回の「変化するWebのデザインとその設計スキル」の2回に分けて、ざっと概要をみただけでも、いまWebを<デザイン>するための自由度と選択肢の多さには驚きます。これを単純に、Webデザイナーという職能に任せきってしまうのはかなり無理な話だとわかります。

だからこそ、あらためてデザイン・プロセスをいうのをもうすこし広い意味で見つめなおさなければいけない時期だと思うのです。

このブログでは、繰り返し紹介しているISO13407:人間中心設計では、今まで紹介してきたようなデザイン・プロセスだけでなく、ユーザビリティ試験施設、関連部署・人員の配置、教育の実施などが求められているのが特徴です。

狭義のユーザビリティでは、対象となるものがある特定の利用シーンで、有効か、効率的に利用できるか、利用に際して不満を感じないかのみを問題にします。しかし、ここで書いてきたような<デザイン>に課せられた目的を広義のユーザビリティとして捉えるならば、ISO13407のデザイン・プロセス、<デザイン>する上での試験施設、関連部署・人員の配置、教育の実施などの話は非常に参考になるのではないかと思うのです。

Webデザインに関わる組織においては、今後、こうした点であらためて<デザイン>というものを見つめなおした上で、組織構造やプロセスの変革が求められてくるのではないかと思いました。

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