動詞としての<デザイン>
僕はどちらかというと<デザイン>という言葉を動詞として捉えています。なので、<デザイン>という言葉を使うとき、あんまりデザインされたものとか、結果としてできたモノの見え方や形などをイメージして使っていることはあんまりないのではないかと思います。
情報デザインというときもそうですね。情報に関する設計をするというイメージで用いています。そういうイメージで使っているので、常にその行動を実際に行なう人が誰なのかということが気になります。誰がそれを<デザイン>するのか?です。
目的を目指す行動としての<デザイン>
僕は<デザイン>には目的があると思っています。行動、運動としての<デザイン>を考えているので、そうなのかもしれません。ただなんとなく<デザイン>するとか、楽しいから<デザイン>するという理由も考えられますが、それはどちらかというと<デザイン>するという行動を実際に行なう主体の理由ではあっても、<デザイン>してほしい側の理由とはなりえません。なので、<デザイン>というものが社会的に成り立っている理由としては、<デザイン>することに何かしらの目的があると見ていいのではないかなと思っています。
<デザイン>はどんな目的を達成するのか?
では、<デザイン>はどんな目的を達成するために行なうのでしょうか?その目的にはいろいろあると思っています。最近書いているように、あるツールのユーザビリティを高めることを目的の1つとしてデザインを行なうこともあるでしょうし、Webサイトであれば検索エンジンに評価されやすいようSEO的な面を考慮して情報デザインをしておくこともあるでしょう。また、見栄えで人を魅了することを目指すビジュアル・デザインも当然含まれます。
まだ、結論付けたわけではないのですが、現段階では<デザイン>には必ず目的があるのではないかと仮説を立てています。目的がない<デザイン>の可能性を否定する根拠はありませんが、そうだろうという予測はしています。
ただし、あとで書きますが例外もあると思っています。
芸術作品制作の中の<デザイン>
よく芸術と<デザイン>は違うといいますが、僕はその違いは分類法におけるタイプの違いではないかと思っています。なので、芸術的な絵や立体作品の中にも<デザイン>するという行為は含まれていると言ってよいのではないかと思います。それぞれのアーティストには絵や立体作品を制作する際に、たとえそれが私的なものであっても目的があるのだろうと思います。それが自分のイメージしているものを表現したいという目的だったとしてもです。
「<デザイン>には目的がある」の例外
ただし、<デザイン>には目的があるという場合でも、人が(意識的に)行なう<デザイン>に限らないといけないのだろうなと思います。例えば、生物の<デザイン>は目的があって行われたものではありません。それが形作られる過程は確かに運動的であり、進化論的プロセスを経たものではありますが、ただし、それは何かゴールを目指して行なわれたものではありません。結果的にそのデザインが何らかの目的を達するのにうまくいっているように見える場合でも、それは意図的に目的達成を目指した結果ではなく、自然淘汰というプロセスが生み出したものです。
また、生物以外でも自然が山の形や雲の形をつくりあげるのも同じく運動的なプロセスを経ていても、目的があってそうなっているとはいえないのではないかと思います。
かといって、はじめの動詞としての<デザイン>という意味ではそれらも除外できないのかなと思っています。人が意識的に行なう<デザイン>にだけ目的があると言うのもありかと思いますが、その場合、どういうものが「意識的に行なう」にあてはまるかというグレーゾーンが別に生まれそうな気もしているので、ちょっと保留にしてます。
達成されるべき目的と<デザイン>の技術
そういうグレーな部分は残しつつも、ひとまず<デザイン>には何かしら達成すべき目的があるという方向で話を進めますと、当然、じゃあ、目的達成のために<デザイン>はどのような方法を用いるのかという疑問が出てきます。<デザイン>が目的達成を可能にするなら、デザイン手法と目的には、何がしかの相関関係やさらに強い因果関係のようなものがあると考えることができるでしょう。それは必ずしも1対1対応ではなく、複数のデザイン手法が1つの目的達成のために用いられることもあるでしょうし、逆に1つのデザイン手法が複数の目的達成に役立つことも考えられます。
ここまでどちらかといえば、話を単純にするために、目的が1つのような書き方をしてきましたが、実際、<デザイン>をしようとした場合、最終目的は要約された形の1つであることはあっても、それにはより細分化された中間過程としての目的も数多く存在することの場合のほうが多いでしょう。この中間過程の目的は、別の言い方をすれば最終目的達成のための要件と言い換えることも可能だと思います。
なので、最終目的達成を目指す<デザイン>を行なう場合には、この中間過程の要件も明確にしないといけない。そうした要件が実際にどのデザイン手法あるいはデザイン技術を用いるかを決めるために必要な情報になるはずだからです。
デザイン・プロセスの重要性
そういう風に考えると、「ISO13407:人間中心設計」で紹介したようなデザイン・プロセスが必要とされることの意味がより実感できます。デザイン・プロセスの重要さは何もISO13407が想定しているようなインタラクティブシステムの<デザイン>に関して言えることではなく、そして、Webサイトの設計という狭い範囲におさまるものでもなく、企業の組織デザイン、事業のデザインにもいえるだろうと感じます。そして、その他、様々なものの<デザイン>において、ISO13407が規定しているようなデザイン・プロセス、
- 人間中心設計の必要性の特定
- 利用の状況の把握と明示
- ユーザーと組織の要求事項の明示
- 設計による解決案の作成
- 要求事項に対する設計の評価
は、「人間中心設計」という言葉をその場に応じて置き換えることで、多くのシーンで有効利用できると思いました。
<デザイン>の必要性(目的)の特定→シーン・環境の把握と明示→主要関係者の要求事項の明示→<デザイン>による解決案の作成→要求事項に対する<デザイン>の評価
このプロセス自体は、シックスシグマのDMAICにも通じると考えます。その意味でビジネスシーンにおいて、ビジネスプロセスのリデザインを行なう意味でもこのデザイン・プロセスは有効だと感じるんです。
今後はすこしこの観点で<デザイン>というものを見つめなおしてみようと思います。
そして、それが本来、このブログを'DESIGN IT! w/LOVE'と名付けた理由でもあったのですから。ちょっと初心に帰ってみた感じです。
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