SEOをマーケティングの一部だと考えるのなんてもうやめたらいいのに

これはもう前々から思っていることではありますが、もう一度、書いておくことにします。
いまだにWebマーケティングだとかいうと、SEOを思い浮かべる人がいます。
はっきり言います。
そんなのもうやめなさいって。

SEOはWebデザインの一部

また、それが何か特別なことだと考えるのも、もうそろそろやめたほうがいいです。

SEOなんて単なるWebデザインの基本にすぎません。
そう。それはデザインであって、Webサイトの設計者が行なうべき仕事です。
まぁ、どんなキーワードが市場で有効かを知りたければ、それは調査担当者にお願いしてもいい。
でも、調査をいくらやったところで、それがサイトに反映されなければ意味はありません。

じゃあ、誰がそれを反映できるかといえば、設計者以外にありません。
それなのに、SEOコンサルタントとかを頼っているからわけわからなくなるわけです。
繰り返しますが、SEOなんて単なる情報デザインのほんの一部でしかないんです。

SEOはユーザビリティの一部

SEOがマーケティングだと思うのは本当にどうにかならないものかと思います。

ヤコブ・ニールセンの最新著『新ウェブ・ユーザビリティ』では2章がまるまる「検索エンジンでのヒット率向上策」に割かれています。
僕も前からあちこちに書いてますが、SEOなんてユーザビリティに過ぎません。
ユーザビリティがマーケティングと無関係かといえばそうではないので、その限りにおいてはSEOだってマーケティングとは無関係ではありません。

とはいえ、ユーザビリティが「特定の利用状況において、特定のユーザーによって、ある製品が、指定された目標を達成するために用いられる際の、有効さ、効率、ユーザーの満足度の度合い」(ISO9241-11)である限りにおいて、SEOも同様の指標ではかられるほうが正解だと感じています。
ユーザビリティのデザイン・プロセスにおいてはユーザーの利用状況の把握が求められますが、ユーザーのWeb利用状況を把握したら検索エンジン経由で必要な情報を探索することがあるので、その要求に対応してユーザビリティを高めましょうというのがSEOの正しい把握だと思います。
そして、ユーザビリティとは何よりデザインの対象であり、その限りにおいてSEOもまたデザインなのです。

Web設計者の重要性

SEOを考える上でその効果に影響を与える要素ってざっくりいうと次の3つしかないと思います。

  1. 外部要因:検索エンジンのアルゴリズム、被リンク
  2. コンテンツ要因:コンテンツそのものがユーザーにどれだけ受け入れられるか、被リンクの要因ともなる
  3. デザイン要因:Webサイトそのものの情報デザイン

このうち、外部要因なんて本当にどうにもならないし、コンテンツ要因だってある意味ではやってみなきゃわからないところはあります。デザインだけががんばればどうにかなるものです。そして、逆にいえば、どうにかしなきゃいけないものだったりします。

だからこそ、Web設計者の重要性を僕は感じます。

僕はどちらかというと、調査・分析や企画の人間なので、実際の設計をするわけではありません。
もちろん、「ISO13407:人間中心設計」でも紹介したように具体的な設計のみがデザイン・プロセスであるわけでもありません。
しかし、どんなに調査・分析が行なわれても、企画がつめられても、それが設計に組み込まれなければどうにもなりません。
その意味で設計者の役割は重要です。

ユーザビリティにしても、SEOにしても、結局は設計者の腕にかかっているわけです。その設計者がユーザビリティやSEOをわかってないとなると、かなり危ういんです。マーケティングなんて関係ないところで危うい。

だからこそ、Web設計者には、SEOやユーザビリティが自分には手の届かない専門的な仕事だなどという勘違いはしてほしくないなと思います。SEOにしても、ユーザビリティにしても、デザインに責任をもつ設計者以外にはどうにもコントロールしようがないものなのですから。

会社によっては誰がWebサイトの設計というタスクを行なうのかはそれぞれでしょう。専門のIAがいる会社もあれば、Webディレクターが情報設計を行なう会社もあると思います。でも、誰が設計を行なうにしても設計者はWebデザインに求められるものに対して責任をもってその要求をかなえることが必要になるのは間違いないと思っています。

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この記事へのコメント

  • shin

    SEO=マーケティングだと思います。SEO=ユーザビリティはちょっと強引かなと個人的には思います。

    >ユーザーのWeb利用状況を把握したら検索エンジン経由で必要な情報を探索することがあるので、その要求に対応してユーザビリティを高めましょうというのがSEOの正しい把握だと思います。

    これは広告でもいえると思います。

    ユーザーのWeb利用状況を把握したら広告経由で必要な情報を探索することがあるので、その要求に対応してユーザビリティを高めましょうというのが広告の正しい把握だと思います。

    じゃあ、広告がユーザビリティかというと間違ってるとはいえないかもしれないけど結局マーケティングじゃないでしょうか?

    >Web設計者には、SEOやユーザビリティが自分には手の届かない専門的な仕事だなどという勘違いはしてほしくないな

    これはその通りで、ようはSEOを行うWebの設計者はマーケッターであり設計者なのだと思います。
    2007年01月18日 13:42
  • tanahashi

    shinさん、コメントありがとうございます。

    イコールで結んじゃうのは、右辺と左辺が同じものだと言うことですので、記号の使い方に間違いがあると思いますが、その後の内容をみると「含む」という意味だと感じましたので僕もshinさんの考え方に同意です。

    僕のこのエントリーの主意は、サイト立ち上げ時にSEOの実装に近い部分に責任を負うのは誰なの? それはっきりしましょうよ、というところが大きい。どうもWeb設計者がSEOに対して腰がひけ気味な印象をもっていたので。

    >SEOを行うWebの設計者はマーケッターであり設計者なのだと思います。

    特にこれ、同意です。
    これは、このエントリーの前に書いた「狭義のマーケティング、広義のマーケティング」で言っていることとも関係してきますね。
    http://gitanez.seesaa.net/article/31591108.html

    でも、ひとつだけ反論しとくと、
    「ユーザーのWeb利用状況を把握したら広告経由で必要な情報を探索することがある」というのは、なくはないけど、そんなに多くはないですよね、という印象はあります。
    というのは、いい広告ならそれも成り立つと思いますが、広告一般には成り立たないのでは?と感じました。
    やっぱりユーザーは広告はうざいと思ってる人が多いと思いますよ。
    これ、利用状況の把握ではないでしょうか?

    だからこそ、特にWeb上ではユーザーは広告を避けて、検索エンジンで情報を探すほうが多いんじゃないでしょうか?
    そんな企業本位の解釈はユーザビリティとは呼ばないと思います。
    2007年01月18日 14:39
  • shin

    >だからこそ、特にWeb上ではユーザーは広告を避けて、検索エンジンで情報を探すほうが多いんじゃないでしょうか?
    そんな企業本位の解釈はユーザビリティとは呼ばないと思います

    なるほど、"サイトのユーザビリティ"っていうのではなくて、"ブラウザを立ち上げてからユーザがしたいことをする時のユーザビリティ"ってことですね。そういう意味でユーザビリティに含めてしまう考え方は面白いですね。勉強になりました。
    2007年01月18日 15:34
  • サイモンデカ

    はじめまして。

    考え方としては全く同じ意見です。
    理論上は、SEOなんて単なるユーザビリティの一部を構成するものにしか過ぎないと思います。

    ただ現実的には、業種によってSEOはマーケティングの99%と言ってもいいものになっています。
    マーケティングを「市場から客を呼ぶ仕組み」とすると、客の全てを検索エンジンの上位表示から得ている企業があるのも事実です。リピート客が期待できず、客との顔合わせすら必要すらないような仕事では、その「仕事の質」すらマーケティングにならない、なんてこともありえます。

    そりゃSONYのようにマスがターゲットの会社にとっては「SEOなんて単なるユーザビリティの一部」てのが通用すると思います。SONYにとってエンジンの上位表示なんて、「SONYのサイト探そう」って客にストレス無く来客させる意味しかないわけですし。

    ただSONYみたいな企業とエンジン客頼りの零細企業を比較して、一概に後者を無視することはできないと思いますよ。
    2009年01月30日 12:37

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