2007年01月14日

千客万来のアーキテクチャ

今日、近所の中華屋でご飯を食べていたら、普段気づかない「千客万来」と書かれた木製の看板みたいなのが壁にかかっているのに気づきました。そこの中華屋は中国人の方がやってるんですが、それ見て、「あぁ、これこれ、この発想が日本人って弱いんだよね」って思いました。

「千客万来」は本来システム的発想なのでは?

「千客万来」というのは、文字通り、たくさんの客が何度も来てくれるっていう商売繁盛の基本みたいなものだと思うんですが、日本人はどうもこれをシステム的に捉えないんではないかって、それを見たときに感じたんです。

この言葉って、いまだとただのおまじないみたいになっちゃってますが、本来、中国では思想的なものだったんじゃないかって思うんですよね。思想的というか、理論的かな?

つまり、この「千客万来」をもうすこし拡張すると、こんな風に書けると思うんです。

 売上 = 顧客数 × 商品単価 × 1人あたり販売個数 × 1人あたり購入頻度

もっと違う因数分解の仕方もあると思いますが、まぁ、とりあえずこんな感じで、売上というものを分析してみることは可能でしょう。

でも、なぜか日本のビジネスシーンでは、数字を求められたときに、こういう発想をすることが少ないんではないかと感じるんです。すぐに売れる商品(コンテンツ)は何か?とか、具体的にどうやって売るのか?という表層的なところに話が進んでしまって、それも個別的に話がもっていかれるという印象があります。
それはちょっと違うだろって思うんです。

構造的な発想力の欠如

でも、実際にもう一度上の式をみて考えれば、単によい商品を用意したからといって、売上があがるわけではないのが感じられると思います。

たとえ、ある商品で売上があがったとしても、その先、あがり続ける保障は、この式では導き出せません。1人が1度しか買わないような商品であれば、全員に売ってしまったら終わりです。それは単に勢いにまかせただけの発想でしかないでしょう。

そうではなく、常に上記の式が自社のビジネスの基盤として動くようなしくみを、自社内に構築することのほうが先決なわけです。
個別のプログラムより、まずアーキテクチャということでしょうか。

個人に求められること

また、個人のレベルであれば、すぐに表層に走らない思考の仕方を身につけることが大事だと思います。

これに関しては、前に「「やっぱコンテンツでしょ」という言葉の背後にある誤解」でも同じようなことに触れました。

つまり、いい商品を世に送り出すためにはそれなりに準備が整っていなきゃ、どんなに「いい商品をつくろう!」とはりきったってダメなわけです。いい商品を作り出すための企業の下地ができていなきゃ、どうにもならない。例えば、それは常に顧客の声、市場の動向に関心を寄せてきたのかとか、技術力や開発力を養ってきたのかとか、生産性や品質の向上に日々努力してきたかとか、そういう下地ができているかどうかでスタート地点が違うわけです。

自分に与えられたミッションが、先の売上の方程式のどの部分に関するものなのか、自分のタスクが他の部門のどんなタスクと連結することで売上方程式の何を満たそうとしているのかを常に問いつつ、仕事を進める姿勢が必要だと思うのです。

自分の仕事だけを単独でみていてもあまり意味はない。そのことはシックスシグマでも単独な機能ではなく、顧客の求めるアウトプットを提供するプロセス全体を重視する発想と同じものです。
自分の仕事を単にそれそのものとして考えるのではなく、自分のアウトプットが誰のどんな仕事のインプットとなり、最終的に顧客にどんなアウトプットが提供されるかを考える発想が必要なわけです。

それは自分の仕事を固定化されたものとして捉える視点とは異なり、価値提供プロセスのネットワークのなかで状況に応じて変化する必要のある、より柔軟なタスクとして捉える発想が必要ということです。

ビジネスのアーキテクチャはビジネスモデルとは違う

そう考えると、ここで書いていることはいわゆるビジネスモデルというものとは違うということがわかっていただけるのではないでしょうか? いや、正確に言うと静的に描かれるビジネスモデルを含む、より動的な企業のしくみをここでは想定しています。

動的というのは、ビジネスモデルそのものも状況に応じて変化させることができるような、イノベーションのしくみをもつということです。そして、もちろん、そのためには外部の変化を速やかに感じ取れる能力も企業には求められる。
でも、それって常に顧客や市場とつながっていられるネットワークをもっていれば、実はそんなむずかしい話でもないんでしょうけど、そこでもやっぱりネットワーク構造的な発想が欠けているのかもしれませんね。

とにかく目に見えるものしか考えられないというか、だから、やたらと他社事例だったり成功事例を気にして、それを真似するような発想になるんでしょう。でも、本当はそうじゃなくて、同じ土俵で戦わないという意味でも目の前にある事例そのものではなく、その背後の動的なシステムに目を向ければ、まったく新しいしくみを生み出すためのヒントも得られると思うんです。
ただ、そういう発想が著しく欠けてるのではないかと「千客万来」の看板をみながら思ったわけです。

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posted by HIROKI tanahashi at 02:35| Comment(2) | TrackBack(1) | マーケティング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
思わず膝をうちました。表層に位置するコンテンツと動的なシステムとその奥にある本質を掴んだアーキテクチャを立体的に捉える能力や発想は自分も足りない部分だと痛感しているところなので。
「千客万来」の看板からここに至るところに脱脳です。
Posted by おたこはん at 2007年01月15日 14:36
その立体的な思考はたぶんほとんどの人が苦手です。きっとヒトが普通に暮らしてたら持てるものじゃないんでしょうね。
なので、ちょっと不自然な訓練をしないと身につかないんだろうなと思います。

それから千客万来から、ここにつながったのは、単なるタイミングですよ、タイミング。
Posted by tanahashi at 2007年01月15日 23:49
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