ものが届いたのが年末ギリギリだったり、ソフトのインストール用のPCの準備がとまどったりで、ようやく昨日から触れるようになりました。それで、さっそく今日の午後、数時間かけて、いくつかのWebサイトを対象に、社内の人間にモニターになってもらい、調査の練習を行なってみました。
ニュースサイトをアイトラッキング
モニターテストを行なう中で、ニュースサイトの記事閲覧、検索というタスクを与えた調査を実施してみたのですが、これがなかなか興味深かったですね。まず記事閲覧時の目の動き。
これが見事に記事の書かれたエリアだけをテキストの流れに沿って視点が動き、サイドエリアにあるバナー広告だとか、新着記事のリンクなどにはいっさいよそ見したりしないんですね。
あと、途中に写真があったりする場合でも、写真のところに視点の注視点が集まったりということはそんなになかったりして、逆に写真下のキャプションのほうに目が行ったり。
見えてるけど、注視しない
自分でもモニターになってみて、記事を読んでみたりしたんですけど、サイドのバナーとかを見ないのは、自分でやってみるとはっきりと理由がわかるんです。ようはバナー広告とかって視界の片隅にはちゃんと入ってるんです。でも、アイトラッキングのツールって基本的には視界の中心部を記録していくので、片隅で見ているバナー広告は「見ていない」と記録されるわけです。
じゃあ、アイトラッキングツールが間違いなのかというとそうではない。実際、片隅に入ったバナー広告を中心にいれようとしないのは、見る気がないからなんです。今回のテストでは、記事を読むというタスクを指定して行なったので、記事を読むことに集中しようと、いつも以上にバナーを見ることは意識的に避けていたこともあります。
でも、それは僕だけじゃなくて、ほかに何人かやってもバナー広告もみないし、サイドのエリアのほかの記事へのリンクにも目を向けようとしないのは共通してるんですよね。
それが本当にそのサイトのグリッドレイアウトによるエリア設計で境界分けされたとおりに視点が移動していくのがおもしろかったです。ニュースサイトに限らず、エリア分けってそんなに有効なものかとびっくりしたくらいです。
シチュエーション次第というところも
だからといって、すぐにニュースサイトのバナーや別記事へのリンクは見られないと結論づけるのは早計だと思いました。そんなにすぐに一般化してしまう必要など、思考停止状態だったりする場合をのぞけばどこにもないんですよね。確かにアイトラッキングって手法は、ユーザーの行動の事実を科学的に捕らえてくれる手法ではあるんですが、じゃあ、そのデータを見ただけでなにか有益なことがいえるかといえば、そうじゃないわけです。きちんとしたユーザビリティ・エンジニアリングの基礎があって、そのデザイン・プロセスにこうした効果的なツールを導入するから、それが活きてくるんです。プロセスのどこでどんな手法、ツールを使うのが必要で、どのツールは何と組み合わせなければならないか、どう組み合わせることで効果が増すのか、それを把握できていなければ、ただの宝の持ち腐れです。いや、そうでなければ、また無駄な調査データが増えてデザインに混乱を生じさせるというマイナスさえ生じさせるでしょう。
例えば、今回テスト対象にしたのは、WebやIt系のニュースを扱うサイトでしたが、同じニュースサイトでもYahooニュースなどは案外サイドのエリアにある関連情報を見たりするんですよね。
それってなぜかというと、いくつか理由としてあげられることはあると思いますけど、1つにはYahooのニュースって1つの記事が短いこと、もう1つには、なんとなく見てみようって思える記事がわりと多いことの2点があげられるんじゃないかと思うんです。
IT系のニュースサイトの記事はだいたい長いものが多いので、1つの記事に目を通すだけで結構満足したりするし、基本的にRSS経由で見てたりするので、どちらかというと選択はRSSリーダーのほうで行なったりします。
でも、Yahooのニュースだと、僕はわざわざRSS購読などせずに、気が向いたときに見に行く。で、記事もぱっと読み終わっちゃうので、それだけで満足したりということもなく、ついでにパラパラと気になる記事があれば見てみようかなという気になったりもします。
それってぜんぜんシチュエーションが違うんですよね。
情報収集寄りのシチュエーションと暇つぶしに近いシチュエーション。なので、Yahooのバナーとかは結構目に入ったりしますよね。まぁ、クリックすることはほとんどないですけど。
シチュエーションの把握と創造
ようはシチュエーション次第でバナーも見られる可能性はあるし、サイドメニューのい新着記事や関連記事のリンクをはることも必ずしも間違ってるとはいえないわけです。なので、ユーザーがサイトを利用するシチュエーションを把握することが、Webサイトをデザインする上ではとても重要だと思うんですよね。その思いを今回アイトラッキングを使ってみて、あらためて強くしました。
それまでは近くに配置されていれば、見られることもあるのではなんてことも思ってましたが、そんなことは一切ない場合があるということです。ユーザーのサイト閲覧字のシチュエーションによっては、一切よそ見をしてもらえないということも多々あるんだとわかりました。そして、人間の視点というものが、思った以上に意志=志向性に対してまっすぐに働くものだということを。
なので、Webデザインを考える上で、重要なのはユーザーのシチュエーションを把握することと、もう1つ、ユーザーのシチュエーションそのものを作り出すことなんだろうなとも思います。意志に対して、視線がまっすぐに働くのであれば、視覚的デザインによって目の動きをコントロールしようというのとは別に、コンテンツ内容そのもので意志に働きかけることで、逆に視点の動きを誘導することも可能なんだと思うんです。
さっきのYahooの例も意図してそうしてるかは別として、コンテンツ内容が「暇つぶし」できるシチュエーションを創出してるわけです。
これって、どちらかというと、マーケティングとかをまじめに認知科学的な視点も踏まえて考えている人なんかが得意とする分野だと思うんですよ。
最近、特に認知科学にはまってますが、ある程度、そうだろうと予想して興味をもちはめたんですが、やっぱり、これってWebデザインを考える上でもかなり重要なんだなって、アイトラッキングをやってみてあらためて思いました。
これ、しばらくは結構はまりそうですね。
ログ解析やユーザーインタビューなどと交えた複合的な診断もしてみたいし。いろんな角度からデザイン、ユーザーを把握するのって、結構おもしろそうです。
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岡目八目
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昨年末、会社が
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