棚橋さんが不可視な結びつき、匿名のアイデンティティで語られている「コミュニティ機能の変容」です。僕にはコミュニティ機能の変容というよりも個人の知覚変容であると思っています。
この2つは同時にしか起こりえないというのが僕の立場です。つまり「コミュニティ機能の変容」と「個の知覚変容」が同時にしか起こりえないと考えているのです。どっちが先かといわれると困るものの、卵を産まないにわとりがいないのとおんなじような意味でです。
その意味で、この話の発端になっている大西さんのエントリーでのコミュニティとアイデンティティの関係性の捉え方に僕は共感を感じます。
それが「コミュニティの復権」という単純な話かはともかくとして。あと匿名うんぬんの話もそれほど興味がないのでパスします。
なので、僕が意識しているのは、
岩壁に絵を描いたころから人は自らの記憶を外化し続けています。そうした記憶の外化によって人間は道具を作り、ある意味の進化を行ってきました。
という場合の、岩壁に絵を描きはじめる前と後の違いです。ここにWisdom of Crowdsの有無の1つの線引きができると僕は考えています。実はその前にも線が引けるはずですが、ここではそれは無視します。
他の惑星からきた長期的な視野から見る先入観のない観察者なら、コンピューター、超音速飛行機、宇宙探査機などをもつ私たちの文明意を、飛躍的大前進の後の1つの付け足しくらいにしか見ないかもしれない。非常に長い地質学的な時間尺度のうえでは、システィナ礼拝堂から特殊相対性理論まで、ゴルトベルク変奏曲からゴールドバッハの予想まで。現代までに達成されたすべては、ヴィンドルフのヴィーナスやラスコー壁画とほとんど同時代であり、すべてが同じ文化革命の一部であり、すべてが長い前期旧石器時代の停滞の後に起こった、華々しい文化的高揚の一部であると見ることができるだろう。リチャード・ドーキンス『祖先の物語 ドーキンスの生命史 上』
なので、その後の変化はさほど大きな変化だと捉えていないのが、ここ最近のエントリーでの立場です。
もちろん、だからといって、その後の変化が小さいと思っているのでもありません。また、「ノードの数が増えたことによる自己組織化、創発的な現象が起こりやすくなった」というのを単なる「だけ」と考えているというよりも、Wisdom of Crowdsうんぬんの話に関していえば、そこだけが大きな変化として、そこだけが重要だと考えているわけです。
なにしろ、Wisdom of Crowdsうんぬんに関しては単に岩壁画以前と以後の話でしかないというのが僕の立場ですので。
よって、「ノードの数が増えたことによる自己組織化、創発的な現象が起こりやすくなった」ことの重大な影響も、僕の意見としては、yusukeさんがいうような「個の知覚変容」にだけ起こるのではなく、「コミュニティ機能の変容」にも同時に起こると考えています。なぜなら、個と環境としてのコミュニティは常に結びついているからです。アイデンティティそのものがコミュニティなくして生じないというのは、先にも書いたとおりです。
それゆえに、個が変容可能なのはコミュニティそのものが変容するからであり、ある意味、この変容はコミュニティの変容の特性なのえはないかと僕は考えているのです。
確かに、その意味では僕も世界は新しく変わっているし、今後も変わっていくと思ってます。
しかし、それをWisdom of Crowdsというキーワードで捉えるのはどうもしっくりこない。しっくりこないのは、元々つながっているものを何故いまさらつながったというのかという意味においてです。変わったのはつながったかどうかというところではなく、つながっているのがわかりやすくなったという意味においてのはずです。
先のエントリーで可視/不可視の問題だと書いたのはそのような意味においてです。
つながっているノードが増えることで、かつ、それが可視化されていて実感できるということで「個人の知覚」および「コミュニティ」の変容が起きるなら、emergenceの時代とかいってもいいのではないでしょうか? そのほうがWeb2.x的なもの以外のものも取り込めてよいと思うのです。
でも、これは個人的な嗜好の問題かもしれませんね。
Wisdom of Crowdsそのものもそうだと思いますが。
まぁ、ただ、ここまで書いたら、あとは単にその命名に関するこだわりだけかもしれませんね。
いや、見えないものの重要性というとこにもこだわりはあるな。無意識あっての意識、地あっての図、身体と環境あっての意識、そして、まわりの人あっての自己ですから。
なので、見えるようにして、あるいは、記述できるようにして、わかりやすけりゃ、それでいいみたいな風潮には反対! わかりやすいものがあるのはいいと思うけど。
というか、寝ようっと。
(眠れないと思ってPC開いたら、トラックバックが来てたので思わず書いちゃいました。yusukeさん、ありがとう)
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