2007年01月06日

無秩序や因果関係のなさを嫌うヒトという生物

前からそういう傾向はあったものの、最近、富に認知科学的なものへの興味が増しています。

認知科学への興味

僕が仕事としているマーケティングやブランディングでも、はたまたWebユーザビリティにしても、インフォメーション・アーキテクチャの問題にしても、ヒトの認知について知ることは非常に有益だと思っています。

でも、最近、僕が脳科学や進化心理学などの認知科学の分野に興味をもち、ニコラス・ハンフリーの『赤を見る―感覚の進化と意識の存在理由』ジェラルド・M・エーデルマンの『脳は空より広いか―「私」という現象を考える』などの「ヒトの意識」についての本を読んでいたり、勢いで"Human Information Interface lab"などを開設してしまったのも、そうした有益性を超えた興味がここ最近非常に強くなってきているからだったりします。

あるいは、逆にいうと、もともとこういうことに興味があったからこそ、マーケティングなんてものを仕事にしているのだし、このブログのタイトルで"DESIGN"という言葉を入れているんでしょうね。

下條信輔『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤』

さて、そんな興味の高まりもあって、いま、読んでいるのも「意識」に関する本。下條信輔さんという方が書かれた、その名もずばり、『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤』。

この本がまた新書ということもあって非常に読みやすいんです(おすすめ!)。1つ前に読んだエーデルマンの本が一般向けにわかりやすく書かれているとはいえ、専門的な部分もあって、ある程度理解するには丁寧に読む必要があったのに対して、この本はすんなり読めてしまいます。

読んでいる中でこんな記述が興味深かったんです。

どうやらヒトには元来、秩序や因果を発見しようとする強い認知傾向があるようです。本来意味やつながりがないとわかっているランダムな出来事や事象にも、意味や因果、あるいは法則を見出そうとする。これは非常に根強い、ヒトの本質的な性向です。
下條信輔『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤』

例えば、こんな図をみて、実際には描かれていない三角形の辺を補ってしまうのも、ヒトの意識の傾向であると、エーデルマンの本にも書いてありました。



あとは「スーパーエッシャー展 ある特異な版画家の軌跡」で紹介したペンローズの不可能図形もそうですね。

penrose_triangle.gif

無秩序や因果関係のなさを嫌うヒトという生物

つまり、ヒトはあるものをただそのまま見ている、感じているわけではないということです。むしろ、自分が見たいように、感じたいように見ているわけです。般若心経でいう「色即是空」はまさにそのとおりだというわけです。そうそう。般若心経ってまさに認知科学的な話です。

逆にいえば、ヒトは無秩序や、因果関係のなさを嫌うのです。言い換えれば、意味の「真空状態」を嫌うのです。それはたぶん、ほんとうは秩序や意味や因果関係があるときにそれを見落とすことが、生物の生存にとって致命的になりかねないからでしょう。
下條信輔『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤』

この部分などは、前からこのブログで紹介してきていることに重なりますよね。

例えば、「私的インフォメーション・アーキテクチャ考:番外編:サバンナに合うように設計されたヒトの意識」で、マット・リドレーの『やわらかな遺伝子』の中の一文「人間の意識は、都会というジャングルではなく、更新世のサバンナに合うように作られている。」を引用し、ジョン・トゥービーとレダ・コズミデスが創始した進化心理学について紹介しました。

そのためにヒトの認知の柔軟さはある一定の範囲に限られているといえます。それはサバンナで生き残り、種を繁栄させるために交配行為を行うのに適したデザインであり、自分たちが生きる環境を正しく認識するために、地球が太陽系を回るのを時間の基準として認識し、かつ体のリズムもそれにあわせているわけなので、生命誕生40億年だとか、プランク時間だとかいう身体的でない時間に関しては、感覚的に理解できないような設計になっているわけです。

ヒトは自分で見たいように見るし、行動経済学的にいえば自分が信じたいように信じる傾向もあるわけです。

このあたり、もうすこし、ちゃんとわかってないと、マーケティングをやるにしてもWebのデザインを考えるにしても、ちょっとダメなんじゃないの?って思ってるわけです。

勉強。勉強。

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posted by HIROKI tanahashi at 01:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 脳科学、認知科学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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