2012年12月04日

不確実な時代に「未知」を「既知」へ変える方法としてのオープンさ

結果的にはあとで間違えてることが明らかになったとしても、最初に自分でそう感じたのなら、そう思ったことは決定的に正しいと思います。


▲TRANS ARTS TOKYO展より

だから、最初から間違えてるんじゃないかと怯える必要はまったくありません。どんどん自分が思ったことをいろんな人にぶつけてみればいいと思います。
けれど、それと同時に大事なのは、あとで自分が思ったことが間違いだと気づかされたら、すぐにその間違いを認めること。そういう謙虚さがあれば、間違えることを過剰に気にせず、自分のアイデアや感じたことを他人と共有することができるようになると思うんです。

スタートアップの勝ち組は自分たちのビジョンが「顧客の証明」のない仮説にすぎないとわかっている

でも、残念ながら、多くの人はたいてい、それが逆になってます。

最初から、誰も間違えているなんていってないのに自分の考えは間違ってるんじゃないかと怯える一方で、あとで他人から間違いを指摘されると認めようとしません。
だから、なかなか積極的に自分の考えを外に向けて発信していかない割に、たまに自分が言ったことを他人に否定されると自分の間違いよりも他人の見方がおかしいと相手を批難したりしてしまったりすることもあります。

それでも、すこし前にくらべるとだいぶ、そういう人は減ってきているようにも思いますが、まだまだ自分の考えをオープンにしながら仮説検証を行っていくアプローチができない人も少なくありません。

それだとなかなか成長もイノベーションもむずかしいよねーとFacebookページに書いたのが昨夜のこと。
それが今日たまたま読みはじめた『アントレプレナーの教科書』の著者として知られるスティーブン・G・ブランクが書いた『スタートアップ・マニュアル』に、以下のようなことが書かれていて、これって根っこは同じだなと思ったわけです。

従来の製品開発や投入の方法論を捨てて新しい方法に切り替えた者たちは、スタートアップの勝ち組となった。彼らはアジャイルエンジニアリングと顧客開発を組み合わせ、ビジネスモデルの構築と検証、探索を繰り返すことで未知を既知へ変える方法論を身につけている。またそうした勝ち組は自分たちスタートアップのビジョンが、「顧客の証明(=裏付け)」のない仮説にすぎないとわかっている。そうした勝ち組スタートアップこそ、自分の見識をしつこく検証し、何日も何週間もかけて修正を繰り返し、顧客が欲しがらない機能や製品を作る無駄な投資や時間を削ろうと努めているのだ。

一方負け組は、製品開発と市場投入を頑なに実行しようとする。アントレプレナーのビジョンこそがビジネス戦略と製品開発を動かすと思い込み、資金さえ集まればあとは実行あるのみ、と考えてしまう。
スティーブン・G・ブランク『スタートアップ・マニュアル』

スタートアップの勝ち組が、自分たちのビジョンが「顧客の証明」のない仮説でしかないことがわかっているからこそ、その仮説を実際に顧客にぶつけてみて、それが本当に価値があることか、自分たちの思い込みでしかなかったのかを何度も検証して、軌道修正も加えながらスケーラブルなビジネスの形を探っていくのに対して、負け組は自分たちのビジョンを検証することなく、はじめに考えたビジネスプランを妄信して猪突猛進で突き進んでしまうといいます。

未知を既知へ変える方法論を身につけているかどうか

間違えることに怯えて、行動の前も後も間違いが露呈することから身を守ろうとするのは、まさに上の引用でいうところの「未知を既知へ変える方法論を身につけて」いないからなのだろうと思います。

スタートアップの勝ち組にしても、間違いに必要以上に怯えることなく自分の考えをオープンに発することができる人にしても、結局、はじめの仮説の段階ではそれが「間違い」ではなく単なる「未知」であることがわかっているのです。なおかつ外の世界の人と接することでしか、その未知は既知にできないことがわかっているのだと思います。

だからこそ、著者が言うように「製品自体が完成していないうちから、頻繁に顧客に会いながら開発した製品は成功確率が高まる」といった結果になるのでしょう。
そして、スタートアップの勝ち組になる人たちは、そうしたことがわかっているからこそ、普段から積極的に可能な限り、自己の見識を検証するため、それをオープンにして周囲の評価を得ようとするのでしょう。

それは僕らが新規サービスデザインのプロジェクトなどで、ユーザーを巻き込みながら最適なサービス体験の形を探っていくのと同じです。
未知のものはプロトタイピングしながら、それが顧客にとっても価値があり、ビジネス的にも有益な形を探っていくことが必要なのでです。
それがいまだ存在しない未知のものを実現していく最適な方法なのだと僕は考えています。

新たな起業の道は不確実さや不安、疑いで満ち満ちている

一方で、負け組の人たちは逆で「未知」とうまく付き合う方法がわからないのではないでしょうか。

しかし、そうした未知の領域に新しい価値を生むことこそがスタートアップに携わるアントレプレナーに求められることでしょう。そこには不確実さや不安はつきものであるはずです。

アントレプレナーはビジョンとビジネスを現実化するために存在する。そこで成功するには現状を捨て、ビジョンを共有できるチームと一緒に新たな道へ打って出なければならない。この新たな起業の道は不確実さや不安、疑いで満ち満ちている。数々の障害や災難が待っている起業の旅では、資金力よりもスタミナや俊敏さ、そして勇気が試されるのだ。
スティーブン・G・ブランク『スタートアップ・マニュアル』

不確実で不安な場所からはじめて、ビジョンとビジネスを現実化するためには、負け組の人たちがそうしてしまうように暗闇に怯えながら猪突猛進でその場をやり過ごそうとするのではなく、勝ち組の人たちがそうするように、1つ1つ仮説を検証することで闇を照らす明かりを照らし、自分の視界がひらける状態をつくることが大事なのだと思います。

だからこそ、著者は「アントレプレナーの仕事は、スタートアップのビジネスモデルについての裏づけのない仮説(思い込み)を検証することだ」と言うのでしょう。

もちろん、この仮説(思い込み)はダメなものだからから検証するというのではありません。
むしろ、その仮説(思い込み)がなければスタートアップの活動もはじまりません。そのことは前々回の「問題定義とは結局「どんな夢を見るか?」ということ」という記事でも書いた通りです。
夢=仮説がなければ活動ははじまらないのです。そして、外の世界と夢について話してみることで、それがそうした人たちにとっても夢といえる価値があるかを確かめていく必要があるのです。

スタートアップとは再現性があってスケーラブルなビジネスモデルを実現するビジネスモデルを探し求める一時的な組織である

夢を夢のまま終わらせるのではなく現実のビジネスにしていくためにも繰り返しの検証を経ながら、スケーラブルなビジネスの形を探っていく。著者のいう顧客開発モデルにおいてはまさにそれがスタートアップ組織の定義にもなっています。

顧客開発は、スタートアップとは再現性があってスケーラブルなビジネスモデルを実現するビジネスモデルを探し求める一時的な組織である、と定義している。そして顧客開発はまさに、探索プロセスを構造化するノウハウなのである。
スティーブン・G・ブランク『スタートアップ・マニュアル』

スケーラブルなビジネスモデルを実現する形を探索するためのプロセスとしての顧客開発モデル。
そして、この探索プロセスを加速する方法の1つが「コモディティ化された製品を販売するような企業で構成される経済では、社会は繁栄せず、国民の利益や繁栄を台無しにする 」でも指摘したようなイノベーションのプロセスをオープンにして、顧客やパートナー起業がイノベーションに参加できるようにするコ・クリエーションな方法だと思います。

暗闇に怯えて生きていけるような時代ではないということですね。
自分で積極的に外に出て明かりを見つけないと。

 

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posted by HIROKI tanahashi at 21:42| オープンイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする