2012年12月01日

コモディティ化された製品を販売するような企業で構成される経済では、社会は繁栄せず、国民の利益や繁栄を台無しにする

『オープン・サービス・イノベーション』を読み始めています。
「オープン・イノベーション」ということをもう少し自分の頭のなかで整理しようと思って。



その本のなかで著者のヘンリー・チェスブロウがこんな風に書いている箇所に目がとまりました。

中国やインドが世界経済を牽引し、世界各地でアウトソーシングが増大し、コモディティ化がつづいている現状で、私たちの子孫は高収入を得られるような職に就くことができるのだろうか? コモディティ化された製品を販売するような企業で構成される経済では、社会は繁栄せず、国民の利益や繁栄を台無しにすることになるのではないか。

これって凄い指摘だし、的確な指摘だなと読んでいて思いました。

ここでは「コモディティ化された製品を販売するような企業」の個々のビジネスだけが問題視されているわけではなくて、社会の繁栄や国民の利益という観点から「コモディティ化する製品」が問題視されています。

こういう視点の大きさをもって、自分たちのビジネスの現状を見つめ直す姿勢をもっと多くの人がもてるようになるといいのになと思います。
だって、そもそも自分たちの仕事が社会のためになるものを生み出す仕事だと捉えているなら、それがうまくいかない現状があれば逆に社会に不利益をもたらしている可能性もあることも想定するのが理屈というものだと思うので。

そのあたりも含めて自分たち自身がポジティブに生きられる方向性を探っていかなくてはいけないでしょうって思うのです。立ち止まってうなってる場合ではぜんぜんない。

コモディティ・トラップ:なぜオープン・イノベーションが必要なのか

著者がこうした指摘をする背景には、イノベーションの速度が世界的なレベルで早まったことで、製品がコモディティ化する速度と製品のライフサイクルが短縮する傾向が避けられなくなっている状況があります。
著者はそれを「コモディティ・トラップ(コモディティ化の罠)」と呼んでいます。

モノが売れにくくなっているのは、単純にモノが飽和しているからでもないし、イノベーションが足りないからではないということです。
むしろ、新しいイノベーションはどんどん生まれてきているのだけど、その生まれる速度がはやすぎるし、さらに新しいモノがコモディティ化する速度がはやすぎるから、企業はもはや市場が求めるイノベーションの速度についていけなくなっている。コモディティ・トラップに陥らないようにするために、企業にはイノベーションし続けなければいけない圧力がかかりますが、その一方で、現実的には個々の企業の枠内にとどまる限り「イノベーションや投資を永遠に持続することは不可能」という現実にも直面しているのです。

コモディティ化の速度に負けないスピードでイノベーションを生み出そうとしたら、1つの組織のなかに閉じこもってやっていたのでは無理でしょう。
そこでイノベーションの速度をはやめようと、企業は自分たちの組織の枠を超えて、自分たちが新しい製品を開発するために必要な技術をオープンに外部から募るようなオープン・イノベーションの戦略をとるケースも増えているというのが現状です。

若者を労働を排除してしまっている状況をどう考えるか

このプレッシャーが企業にとどまらず先進国経済の発展の障害となっているといいます。

先進国の経済が鈍化する一方で、中国やインドなどの新興国の経済は悪化が見られず、富を創出する力も先進国から新興国へとシフトしている現状です。
景気の低迷に高齢化などの人口構造の変化も重なり、財政不安が広まっている先進国は日本も含めて少なくないのですが、それがよくいわれるとおり、若者の就職にも影響を与えてしまっています。

このような変化に伴う長期的な問題として、先進国の新卒者の就職に及ぼす影響がある。近年、先進国の若者たちは大学卒業後の就職活動で労働市場から排除されていることを痛感している。昔と比べて低賃金の職に就く率も高い。

若者に雇用機会を与えられないような社会では、冒頭に書かれていた通り、「社会は繁栄せず、国民の利益や繁栄を台無しにする」可能性は非常に高いのではないでしょうか?

もちろん、著者が指摘するように必ずしもこれからの社会が従来どおり、経済的な意味での社会の繁栄をマストとしたものでなくてはいけないかというところにも、もう1つ議論の余地はありますが、いずれにせよ明るい未来をつくる上では不可欠な若者の力を社会に取り入れる力を失ってしまっている状況はとても深刻だといわざるをえません。

リスクを冒して実験的な試みをし、イノベーションへとつながる投資をしながら実績を作るのは、各々の企業そのもの

この部分も含めて、自分たちがこれまで当たり前としてきた仕事やビジネスモデルを見直さなくてはいけないのではないでしょうか?

著者もこう書いています。

現状の困難な経済状況を逆転させるには、先進国が再び成長へと転換しなければならず、それは、マクロ経済レベルでの財政政策の変更だけでは不十分だ。個々の業界の個々の企業がミクロ経済レベルで成長とイノベーションを見直さなければならない。マクロ経済政策は成長の環境づくりには役立つが、リスクを冒して実験的な試みをし、イノベーションへとつながる投資をしながら実績を作るのは、各々の企業そのものだ。

個々の企業が変わっていく必要が僕もあると思っています。
そして、その方法としてオープン・イノベーションや共創(コ・クリエーション)が大きな鍵を握っていると思っています。それは大企業でも、中小企業でも同じです。そして、大きな規模であればあるほど、まずは小さくはやくはじめるリーン・スタートアップの形でオープン化を進める必要があります。
「リスクを冒して実験的な試みをし、イノベーションへとつながる投資をしながら実績を作る」のも、最初から大きな規模ではじめようと考えるのではいつまで経ってもはじまりませんし、それではうまくいくはずもありません。リスクを冒して、実験的な試みをするなら、やっぱりプロトタイピングを思考をもってリーン・スタートアップではじめる必要があります。

何より意識を変える必要があるのは、「ゴールに向かうプランを完璧につくってからはじめるのでは遅い」ことを自覚し、「大まかなヴィジョン(夢)を描いたらまずは小さく走り出してみながら、そこで関わるいろんな人といっしょに成果を作り出していく」というスタンスに変わろうとすることだと思います。

そんな大きな企業のなかのリーン・スタートアップをお手伝いするのも、僕のミッションだなと思っています。
それって楽しいなと思うので、ますますこれからがんばらないといけないですね。



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posted by HIROKI tanahashi at 11:17| オープンイノベーション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする