2012年11月21日

アート×自然の力で地域を元気にする:奥入瀬ネイチャー×アーツキャンプ2012

先週末の16日(金)〜18日(日)の3日間で、青森県の十和田・奥入瀬で行われた「奥入瀬ネイチャー×アーツキャンプ2012」に参加してきました。

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▲ 星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルの暖炉の上の巨大な岡本太郎さんの作品

今回のキャンプは、十和田・奥入瀬地区をベースに、これまでにない新しいタイプのアートプロジェクトをつくろうという目的で、全国から集まったアーティスト、キュレーターの方々が、十和田湖、奥入瀬地区の自然や施設をフィールドワークしながら、その地でどんな新しいアートプロジェクトができるか、やりたいかを考えるための3日間でした。

かえっこなどの活動で知られるアーティストであり、十和田市現代美術館の副館長もつとめる藤浩志と、展覧会の企画運営などを事業とするナンジョウアンドアソシエイツの新居音絵がホストとなり、十和田市が主催となって行われたイベントです。
20数名のアーティストやキュレーターの方々が参加するなか、普段はアートに関する仕事をしていない僕が参加したのは、このところずっとテーマにしている「地域を元気にする方法」について、考える手だてになるような予感がしたからでした。

キャンプ1日目

キャンプ1日目はまず13時に十和田市現代美術館に集合しました。

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▲ 十和田市現代美術館

特別展として開催中の奈良美智さんの「青い森の ちいさな ちいさな おうち」や、常設の展示を鑑賞したあと、今回の主旨を説明いただきました。

今回のキャンプは先にも書いたとおり、これまでにない新しいアートプロジェクトを企画するために、参加型でオープンな形でプロジェクトの企画自体を考えていこうという目的で行われたものです。
その背景には、十和田市が抱える観光の課題があり、アートプロジェクトを通じて、その問題の解決を行えればという考えがあります。

この数年、観光客が減っているという問題を抱えています。十和田市現代美術館が集客のためのコンテンツとなっているのですが、そこを訪れた観光客がなかなかもう1つのコンテンツである十和田湖・奥入瀬渓流地域に流れていかないという問題があるのです。
そんな課題もあって、美術館のお客さんを十和田湖・奥入瀬渓流地域にも足を伸ばしてもらうための方法としてアートプロジェクトを立ち上げようというのが今回のキャンプの大まかな目的だったといえます。その一環で、自然とアートをテーマにした「Arts Towada 奥入瀬プロジェクト」もすでに小さくはじめられていたりもします。

そんなオリエンテーションを美術館でうけたあと、送迎バスでベースキャンプ地となる星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルに移動しました。
ここから慌ただしいタイムスケジュールでの活動がスタートです。

部屋に荷物をおいたら、さっそく現地のフィールドワークの開始です。
まずは宿泊先の奥入瀬渓流ホテルの川をはさんだ向かい側にある7年前に営業を停止したホテルの跡地に向かいました。

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▲ 7年前に営業を停止したホテルの跡地

7年前に営業を停止し使われていないホテルの跡地は、まるで宿泊者が帰ったまま、そのまま7年の時間がたってしまったかのように、和室では寝具が畳の上にたたまれたまま置かれていたり、急須や湯のみがお盆のうえにのったまま置かれていたりと、まだ使われていた当時の雰囲気を感じさせる状態でした。
ただ、7年の時間がその「使われていたままの状態」を逆に不気味に感じさせるくらい、ゆるやかに荒廃させてもいたりもしました。

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▲ 施設のなかを見学しました

開始早々から、この不気味なホテルの跡地のフィールドワークからはじまったキャンプでしたが、2日目以降、ここ以外の場所もまわってみるうちに、この地域の観光が抱える課題がより明らかになってくるのです。

夜は、十和田市観光局の方からあらためて観光の課題をご説明いただいたり、十和田湖のカヌーツアーや奥入瀬渓流のネイチャーランブリングツアーなどのアクティビティを提供しているノースヴィレッジの代表の方のお話をお聞きし、情報をインプットしました。
そのあと、アーティストの宮島達男さん、ゲストキュレーターの森司さんと藤さんの3人でのディスカッション。このディスカッションが舞台裏での話のように、ゆるい感じで、参加者はみんな、別の意味で「これから何がはじまるんだろう?」と頭のなかがはてなが渦巻く感じの内容でした。
でも、僕にはそれがおもしろくて、これはなかなか面白くなりそうと感じたのでした。

キャンプ2日目

2日目は早朝から奥入瀬渓流のランブリング。
6時半にホテルを出て、ノースヴィレッジのガイドの方の案内で、奥入瀬渓流の自然に触れながら散策を行いました。

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▲ 苔

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▲ 苔と枯葉

紅葉の季節も終わり、広葉樹の葉が散った渓流の景色に、シダなどとともに緑のいろどりを残してくれている苔をルーペで見てまわる散策は新鮮でした。

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▲ ランブリングをする藤浩志さん

実は今年の夏にも奥入瀬渓流を訪れたのですが、緑が生い茂った夏とはまるで違う場所でした。この景色の変化こそがもともと日本の自然がもっていた多様性だったのだろうなという気がします。この変化があってこそ、四季という言葉の意味がより豊かに感じられるように思います。

ランブリングのあと、ホテルに戻って朝食を食べ、そのあと、またバスに乗って出かけました。
午前中は十和田湖周辺のフィールドワークです。

最初に訪れたのは十和田神社です。

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▲ 十和田神社

ここも夏にも訪れた場所でしたが、神社に関してはあまり当時と印象が変わりませんでした。
夏に訪れたときとは、まったく別の印象を受けたのは、その後、フェリー乗り場に向かって歩いたホテルやお土産屋さんが並ぶ通りの景観でした。
正確には、夏はその場所を通らなかったので印象が違うというのではないのですが、驚くほど、営業を停止してしまったホテルやお土産屋さんが多かったのです。

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▲ 営業を停止してしたホテル、お土産屋

今年の春に営業を停止したというホテルも2軒ありました。
元より日本人の観光客が減っていたのですが、それでも震災前までは韓国人や中国人などの観光客でもっていたところを、あの震災でそれも途絶え、経営が成り立たなくなったそうです。
扉を閉ざした建物のなかには、またあの人気のない客室の不気味な雰囲気があるのではないかと想像すると、通り自体が寒々しく感じられてしまいました。

その後、遊覧船にのり十和田湖の景観を堪能。夏にきたときに負けず、魅力的な風景でした。

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▲ 遊覧船に

この十和田湖の景観や奥入瀬渓流の豊かな自然という魅力的なコンテンツをもってしても、観光客を集められないという課題があるのです。
遊覧船をおりた向かい岸でも営業を停止したり、オフシーズンで店をしめているお土産屋がさみしく並んでいました。

ふたたびホテルに戻って昼食をとったあと、午後はふたたび、使われなくなった宿泊施設のフィールドワーク。
ホテルやユースホステルなど、3軒をみてまわりました。

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▲ 6年前に営業を停止してして、いまは別のホテルの倉庫として使われているホテルの元ロビー

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▲ ユースホステルはいまも定期的に掃除がされているので他の施設のような不気味さがない

こうしたフィールドワークを通じて十和田や奥入瀬という場所の情報をインプットしたあと、夜には今度は参加したメンバーがどんな活動をしているかを紹介しあい、人というリソースについてのインプットを行いました。
この互いの自己紹介で、メンバー間の一体感が一気に高まったのを感じます。
その夜、深夜の3時まで行われたロビーでの飲み会では「本当に何かが起こりそう」という感覚を多くの参加者がもったのではないかと思います。

キャンプ3日目

3日目の朝、3時過ぎまでみんなで語り合ったにもかかわらず、7時からランブリングに出かけました。

この日のガイドはアーティストの山本修路さん。
今週末から千代田区のisland MEDIUMで個展「Forest of Seedling / 実生の森」を開催する山本さんは、学生時代から植木屋の仕事を始め、植物の生態学を学んだ方で、下手なガイドさんよりよっぽど面白く植物についての学びが多い話を聞かせてくれる方。僕は一気にファンになったので、今週末の個展にも足を運ぶつもり。

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▲ 雨のなか、山本修路さんについて早朝ランブリングを楽しむメンバー

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▲ 雨に濡れた苔

その後、朝食を食べてホテルをチェックアウト。
公開ディスカッションが行われる十和田市現代美術館に向かうバスの乗りました。

キャンプの最後のイベントは、各自が3日間の活動を通じて見つけた「これから自分たちがやりたいこと」をプレゼンテーションする公開ディスカッション。
参加したメンバー以外にもフリーに観覧できる形で、プレゼンテーション&ディスカッションが行われました。

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▲ 公開ディスカッションの様子

僕はひたすら記録係となり、話のなかから大事だと思われるキーワードを拾ってメモしてガラス窓に貼ってました。
そして、それ自体を自分のプレゼンテーションに使いました。

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▲ 窓に貼り出された各自のやりたいことを書き出した紙

僕が書いたのは「奥入瀬産業革命」というキーワードでした。

それほど今回のキャンプでは、アーティストの生み出すアートの力が「人を動かす」力を持っていると感じ、その力をきっかけに地域の人々の活動や地域のもつリソースを組み合わせることができたら、これまでとは異なる新しい産業を生み出し、観光だけではない力でこの地域を元気にすることもできそうだと感じたからです。

そんな新しい産業の実生が、古くて力を失った規模の大きなホテルやお土産屋さんのような消費者と生産者を隔ててしまう旧来どおりの消費型観光産業にかわり、よりいろんな立場の人が産業に参加し合い協力し合いながら新たな価値を生み出していくような力になるのではないか。
そんなことを感じた3日間でした。

アートに無関係な僕なんかが参加していいのかな?と不安を感じつつも参加させていただいたキャンプでしたが、いろんな方からいろんな学びを得られた3日間でした。
参加したみなさん、本当にありがとうございました。楽しかったです。

 
posted by HIROKI tanahashi at 23:01| 地域 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする