「やっぱコンテンツでしょ」という言葉の背後にある誤解

企業のWebサイトを使ったマーケティング、ブランディングの話をしていると、「やっぱりコンテンツでしょ」という結論に落ち着くことがあります。
でも、それってあやしいと思うんです。
それはマーケティングで「やっぱ商品でしょ」というのと似てるわけで、じゃあ、その言葉が正しいかというと必ずしもそうじゃないわけです。

「やっぱ商品でしょ」といえる商品を作れる企業とそうでない企業

なんで、「やっぱりコンテンツでしょ」とか「やっぱ商品でしょ」という結論が必ずしも正しくないのかといえば、たとえ、そう結論を出したからといって、「やっぱコンテンツ」とか「やっぱ商品」といえるのようなものが必ずしも作れるわけじゃないってのがまず第1点。

当たり前ですけど、いい商品が売れるってことを知るのと、実際にそうい商品を作れるかどうかは別問題なわけです。いい商品が売れるってのはよその会社の成功例をみても気づくことができますが、じゃあ、それと同じことを自社内でできるのっていうとそれはまったく別の話です。

実際に、じゃあ、いい商品をつくろうと考えたときに、顧客の潜在的なニーズってわかってたっけ? いい商品を生み出すだけの技術力、開発力ってあったっけ? 他社に先駆けて市場にいい商品を導入するだけのスピード感ってあったっけ? いい商品を市場に流通させるチャネルがあるんだっけ? また、広告費とか予算はあったっけ?とか、いい商品をつくって世に出すためには、それこそいろいろあるわけですよね。

「やっぱ商品でしょ」と思っても、そんな商品を作れる企業とそうでない企業があるわけです。

いきなり下流にはいけないわけですよ

つまり、いい商品を世に送り出すためにはそれなりに準備が整っていなきゃ、どんなに「いい商品をつくろう!」とはりきったってダメなわけです。いい商品を作り出すための企業の下地ができていなきゃ、どうにもならない。例えば、それは常に顧客の声、市場の動向に関心を寄せてきたのかとか、技術力や開発力を養ってきたのかとか、生産性や品質の向上に日々努力してきたかとか、そういう下地ができているかどうかでスタート地点が違うわけです。

それと同じで「やっぱコンテンツでしょ」なんて、突然思ってもダメなわけです。商品を世に出す苦労に比べれば軽いのかもしれませんが、それでも、日々、新たなコンテンツを世に出し続けるってのは結構大変です。だって、ブログが書けないだとかっていう話、耳にしますよね? なのに、なんで「やっぱコンテンツでしょ」なんて結論になるんでしょ? 不思議を通り越してますよね。そんなの毎日、ブログを書いてから言って欲しいって思いませんか?

それに個人のブログと企業の情報発信じゃ違うわけでしょ。個人のブログであれば、まぁ、その人ががんばって書いていれば、それなりにその人の個性がにじみ出来て、書き続けるうちにいい感じになってきます
でも、企業のWebサイトじゃ、勝手に「やっぱコンテンツでしょ?」といってはじめたところでどうにもならない。だって、一人の人間が書くわけじゃないから、ただいきなりGOを出したところで、それが個性につながる可能性など微塵もないわけです。どうも会社のしくみというものがわかってない気がする。

強者のしくみ

もちろん、それなりに企業文化が浸透していて、自分たちがどんなお客さんにどんな価値提供を行なっていくかも共有できており、一定の品質、一定の価値観の共有ができているなら別です。そんな企業なら、さあ、明日からはじめましょうとさえ言えば、なんとか企業の個性がにじみ出るようなところに向かっていくことができるでしょう。

でもね、そんな企業だったら、いちいち「やっぱコンテンツでしょ」なんてところからはじめないわけです。そんなの当然って思ってますから。「やっぱコンテンツでしょ」なんていうところは、むしろ、コンテンツがないのではなくて、コンテンツを生み出す下地、しくみがないわけです。

"強者のしくみ"というものがあるのなら"弱者のしくみ"というのもあるのだろうか?
 答えはノーだ。"弱者のしくみ"というものはない。弱者にはしくみというものがないからだ。
 しくみがないから弱者にとどまっているとも言える。
 弱者はしくみではなく、日により時によってコロコロ移り変わる上司の恣意、もしくは問題の発生の都度(ということは問題は大小日々発生しているから日常的に)開かれる関係者の会議や打合せによって動いている。
 これに対して、強者はしくみで動いている。

私的インフォメーション・アーキテクチャ考:14.記憶の構成、世界の広さ」でユーザビリティの話としても書きましたが、結局、「やっぱコンテンツでしょ」なんて話も表面的な部分最適化の話で、あとに続くような全体最適化の方向性をもっていないわけです。
全体最適化を目指すのなら、多少時間はかかろうとも、そして、抽象的でわかりにくいところからのスタートになろうとも、企業の根底の部分から掘り返していくしかないわけですよ。
自分たちはいったい何者で、何を目指すのか? 誰に対して価値を提供し、社会に対してどんな利益を生み出していくのか、と。

それをやらずに現場レベルで「ああ、いいコンテンツできたね」なんて言ってるから、いつまで経ってもPVも、具体的な成果も生まれてこないわけです。それって単なる自己満足。そういうので改善につながったかどうか、ちょっとAlexaholicでも使って調べてみてくださいよ。競合との関係はどう? 以前と比べて自社のリーチやPVは伸びてます?

遠回りだと思っても、一度根っこからほじくりかえしてみた方が結局は早かったりするわけですよ。
わかりやすいところに逃げてちゃダメなんです。

P.S.
ある意味ではこのエントリーの続きとして。
マーケティングという問題意識
2006/12/26 16:15

関連エントリー



この記事へのコメント

この記事へのトラックバック