2006年12月21日

ブランドの肌触り

今日、MarkeZineの編集部の方と打ち合わせをしていて、ブランドとWebユーザビリティの関係についての話になりました。
とある会社さんでは、Webのユーザビリティを考える際に、ブランドとの関係を考慮に入れるそうです。

ブランドの肌触り

確かにそれは一理あるなと思いました。前から書いているように、ブランドの価値はユーザーがブランドに接するあらゆるタッチポイントでの総合的な評価によって築かれます。様々なブランド体験がユーザーのなかであわさった形でそのブランドの評価が決まります。当然、そこにはWebでの体験も含まれるでしょう。

ブランドにはそのブランドなりの肌触りみたいなものがあると思います。
ぬいぐるみクマのようなやわらかな触感もあれば、女性の肌のようななめらかな肌触り、シルクのような冷たい感触、ツイードのジャケットのようなざっくりとした温かみのある素朴な感触などもあるでしょう。そうした肌触りが感じられるブランドになれば、それこそそのブランドが肌に触れてもいいほどの親近感を持ってもらえている証拠なのではないかと思ったりもします。

しかし、一方で遠めで見ていた印象と、実際に触れた肌触りが異なると、ブランドに対する思いがちょっと冷めてしまうこともあるかもしれません。
意外性それ自体は悪いものではないのですけど、その意外に感じた違和感がうまくそのブランドの世界に統合できなかった場合、どうしてもブランドの評価が下がってしまうということはあるでしょう。
ブランドのタッチポイントを設計する際にはそうした点も考慮に入れることはとても大事なことだと思います。

肌触りとユーザビリティ

そういう意味で、Webでのブランド体験はやはりそのブランドらしいものにする必要はあるでしょう。
でも、それがユーザビリティという話と直結するかというと必ずしもそうではないなという気もしています。

そう思うのは、肌触りととっつきやすさ、接しやすさみたいなものは違うと感じるからです。
ユーザビリティというのは後者に属するもので、効率性や不満のなさみたいなところに関連するものです。一方の肌触りというのはそうした目的のあるものとは違った、より感覚的で、生理的な好き嫌いに関するものだと思います。

とっつきやすさや接しやすさのようなものをブランドのパーソナリティの一部としているブランドであれば、タッチポイントとしてのWebのユーザビリティには人一倍、力を入れていく必要があるでしょう。そうでなくては一貫したブランド・イメージを保つことができないと思います。
しかし、それ以外のブランドであれば、一定のユーザビリティを確保すれば、特にブランドとユーザビリティの関係に必要以上に神経質になる必要はないはずです。

例えば、すこしやんちゃでワイルドなパーソナリティをもつブランドであれば、多少の使いにくさなどは大目に見てもらえる可能性だってあるはずです。もちろん、その場合にはユーザビリティ以上にきちんとブランドの世界観を使えるようなユーザー経験をWeb上で伝えられているかどうかということのほうが問題で、それができていなければ、実際にはあんまり重要ではなかったユーザビリティ的なところに不満の矛先が向いてしまうことはあるでしょうけど。そうなると、やつあたりみたいなものです。

肌のお手入れ

一部のブランドにとっては必要以上にユーザビリティに神経質になることより、自分たちのブランドの世界観をちゃんと表現できているか、自分たちのブランドがもつ肌触りがWebというタッチポイントでの接触でも損なわれていないかに注意を払うことのほうがより重要だろうと思います。

脳科学者の茂木健一郎さんも『欲望解剖』という本の中で、こんなことを書いているようですし。

子供がお母さんを探し求め、いないと寂しがる気持ち、これがマーケティングの本質。愛着(アタッチメント)を持たせることがブランドへのロイヤリティとなる。

子供が母親に感じるほどの愛着を感じてもらうくらいには、遠目からみた魅力以上の肌で感じる魅力を感じてもらうしかないでしょう。

いまWeb上では様々なプレゼンテーション技術が実現可能で、昔のようにブランドサイトといえば、FLASHでのプレゼンテーション一辺倒といった似たり寄ったりの表現にこりかたまる必要はなくなっています。Ajaxを使ったプレゼンテーションもあれば、同じFLASHでもPIPを使ったプレゼンテーションやブログやヴィデオキャストなどをFLASHでプレゼンテーションすることも可能です。

また、ブランドの肌触りはそれこそ、そうした単純な音声や視覚表現によるものから生まれるだけでなく、ブランドの中の人のパーソナリティやコミュニケーションの頻度、より基本的な言葉遣いなどからも生み出されるはずです。あとはユーザーコミュニティとの関わり方、距離のとり方などもブランドの肌触りを左右するでしょう。

ブランド・エステティシャン

こうしたすべての面において、ブランドは自身の肌触りをいつでも魅力あるものに保つため、日々のお手入れを行なう必要があると思います。
と思うものの、なかなかそこまで熱心に、そして、一貫した姿勢でブランドの肌のお手入れに力をいれているところってあんまり見かけないですよね。
Webが注目されているといってもまだまだその程度です。

その意味では、Webブランディングという領域はまだ成長期なわけで、これからブランドの肌のお手入れをお手伝いするブランド・エステティシャンみたいな仕事も増えてくるんでしょうね。

とりあえず、まず僕がブランド・エステティシャン第一号に就任しておきます。

お肌にお悩みの方は気軽にぜひご相談を。
あなたの美肌ケアをお手伝いします。

HIIとしての肌触り

と、こんな風に情報の解釈としての結果としての「肌触り」の重要性に触れると、最近書き続けている「私的インフォメーション・アーキテクチャ考」での僕の狙いもすこしは伝わるでしょうか?
いまのような情報社会になるとHII(Human Information Interface)から受け取られる肌触りというものがあるわけですよ。そして、それはヒトというものの認知の性向を考えないとちゃんと見えてこないものだと思っているわけです。

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posted by HIROKI tanahashi at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ブランディング | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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