つまり、それだけブログを書き続けるのは簡単なのことではないということです。むずかしいとはいわないまでも、ある程度、書き続けようとする意志や、ブログを書くことの喜びやメリット、それからその人なりの書き続けるためのスキルなどがなければ、書き続けることはできないのではないかと思います。
ブログの使いやすさだけでは・・・
さて、「要求開発の必要性:ちょっと間が抜けすぎじゃない?」のエントリーに、goodmanさんから、こんなコメントをいただきました。中小企業はまったく逆で、勢いで導入しちゃったりします。
Lotas Notesや社内wikiが利用されなくなるのは使いにくいからでイントラブログは使いやすいから大丈夫でしょ。なんて短絡的な考えが多いように思います。こういった企業はなんとかしてあげなくてはいけません。
(中略)
最後に、恐れ多い話ですが、棚橋さんがお考えのことと私の考えていることは、思考のレベルや主に対象としているクライアント企業の規模の違いが大いにあるにせよ、本質的には近しいものだと思っております。
恐れ多いことはちっともないんですし、goodmanさん自身が社内で自分の考えを伝えていくのに苦労されている点、工夫されている点などをきちんと伝えようとしているのがよくわかります。それほど企業内での情報共有を行なうこと、同じ目標に向かって、同じツールを使うことはむずかしいことだと思います。
はじめに書いたとおり、個人がブログを続けていくことさえ、むずかしいのですから、社内で多くの人が同じようなことをとてもむずかしい。それには使いやすいブログのようなツールだけではどうにもならないという意味で、goodmanさんのおっしゃるとおりです。
なので、これ以降は別にgoodmanさんの考えに反論するというのではなく、僕自身の考えの中にある別のものについて、あらためて書いておこうと思います。
ツールが機能するための要因を因数分解する
ブログやWebというツールは、情報発信、情報共有、コミュニケーションのためのツールと考えることができると思います。それが意図したとおり機能するには、
- ツールそれ自体
- コンテンツとしての情報
- 利用者
- ツールの用途
- そもそも用途、利用が価値を持つような目的
といった要素が必要だと思っています。
はじめに書いた個人のブログの例であれば、
- ツールそれ自体:ブログ
- コンテンツとしての情報:個人が書き綴るエントリー
- 利用者:ブログを書く人自身、そして、読んでくれる人、ブックマークしてくれる人
- ツールの用途:ブログの書き手がどんな内容のエントリーを書くか、誰に向けて書くかなど
- そもそも用途、利用が価値を持つような目的:ブログを書き続けることでどんな利益を得ようとしているのかなど
といった感じでしょうか?
ツールだけでは人もビジネスも動かない、そして、Webそのものでさえも
僕がビジネスとWebの間にインターフェイスが必要だと感じているのは、まさにこうした要素がすべてうまく機能するようにしてあげないとツールだけ導入しても、人もビジネスも動かないし、そして、導入したWebツールそのものさえも機能しないと思うからです。そのインターフェイスとは、最初にツールありきでその間をつなぐという話ではなくて、むしろ、はじめにそれぞれの企業の課題があって、それは実際どのようなプロセス上の問題で、顧客はどのような要求をしていて、その顧客要求と現状のプロセスのパフォーマンスのギャップはどれぐらいあるのかということからはじまる話です。
現状のパフォーマンスがもつギャップ次第では、プロセスを改善するだけでギャップがうまる場合もありますし、現状のプロセスを廃棄して新しいプロセスを再設計しないといけない場合もあるでしょう。
Webツールの導入という話は主に後者に属する話です。
そして、後者であるがゆえに、現状のプロセスに慣れた人々を別のプロセスとしてWebを使うよう促すのですから、それには大きな障害が当然発生します。
単にブログを書くだけでさえ困難だったりするのに、既存の慣れ親しんだプロセスを捨てて、新たに導入したWebツールを使ったプロセスで業務を行なうのには心理的な抵抗を感じるはずです。先にも書いたとおり、それではせっかくのツールも使ってもらえませんし、それでは、ツールに必要なコンテンツ=情報が蓄積されません。
ましてや、きちんとした現状分析もなく、既存のプロセスでよいものを新しいプロセスに置き換えてしまった場合などは、目的や用途そのものがズレてしまっていることになるわけですから、さらに問題は大きくなります。
誕生当時のMS Officeのように
確かにツールの話にしてしまうのは、わかりやすいのかもしれません。しかし、ツールありきで必ずしも人は動いてはくれませんし、ツールはそれを使う用途や目的をそれを使う人が理解してはじめて機能するものです。ましてやビジネスにおけるツールの導入は、そのツールの利用自体が価値提供プロセスの中で各自の行なうタスクの中に仕事として埋め込まれた状態を作り出さなければ機能しないでしょう。
僕が仕事でpowerpointなどのツールを利用するのは、お客さんなどにプレゼンする必要があるからで、そのための資料をつくるためにpowerpointを使うのです。また、powerpointを使うのは同僚も同様にpowerpointを使っていて、既存のリソースの共有や新しくつくったリソースの共有も可能になるからです。そして、なにより僕がそうしたタスクをこなすのは、僕たちの会社がお客さんへのプレゼンにより、お客さんに僕たちの提案を納得してもらい、業務を委託していただくためです。
そうした目的、用途、自分以外の利用者、そして、ツールに書き込むべき情報自体がなければ、僕はきっと仕事でpowerpointを使ったりしないでしょう。実際、僕のPCにはpowerpointと同じように、wordやaccessなどもインストールされていますが、そうしたツールが使われることはめったにありません。
それこそ、MSのOfficeが登場してきた当初であれば、こうしたツールがインストールされていること自体、価値があることのように考えられていたと思います。しかし、いま、そんな風に考える人はいないでしょう。
それと同じことがWebにもいえるはずです。今でこそ、ブログやSNSなどは登場したばかりのMS Officeと同じようにもてはやされている感がありますが、掲示板やチャットなど、昔からのツールはどうでしょう? ブログを導入しましょうという提案にクライアントは興味をひかれるかもしれませんが、掲示板を導入しましょうでは同じ反応はされないでしょう。しかし、実際に顧客のビジネス課題から考えれば、掲示板のほうがよいということもあるでしょうし、もしかしたら、どちらも課題解決にはなりえないということかもしれません。
インターフェイスはプロセス改善/再設計そのもの
なので、僕がビジネスとWebのインターフェイスと言っているのは、まさにシックスシグマ的なビジネスプロセスを対象にしたような、改善/再設計/管理のような活動そのものです。ツール単位で捉えてしまうと、どうしても全体のプロセスに支障が生じる場合があります。実際には小さな部分から改善を行なっていく場合でも、視点は全体最適におく必要があるでしょう。ITシステムを改善したからといってビジネスシステム全体の改善につながるとは限らないのは、ITシステムとビジネスのシステムをつなぐインターフェイスが明示されていないからで、改善が部分最適になってしまい、全体最適に観点からはむしろマイナスになってしまう可能性もなくはないからです。
とはいえ、ここまでいくと確かに普通のWeb屋では手に負えません。とはいえ、要求開発という手法を確立する上では、身に着けておいてよい手法だと思います。
でなければ、goodmanさんがコメントで書いてくださっているように、経営コンサルティングを行なっているような会社にお願いするのも手でしょう。そのときもプロセス重視の視点を持っていらっしゃるコンサルティング会社さんがよいと思います。
もちろん、この活動自体にシックスシグマの手法を使う必要は必ずしもなく、他の同様の改善手法を用いてもいいと思います。シックスシグマを提案しているのは僕にはそれが一番馴染み深いからです。
Webは高性能なレゴブロックの1パーツ
最近、プロセス重視のシックスシグマという手法は、実は企業内でもともと明示的に存在するプロセスのみを改善の対象にしているのではないと思っています。どういうことかというと、企業内の仕事の中にはその仕事にたずさわる人の暗黙知を中心に行なわれている仕事が実は非常に多く存在しているからです。それはプロセスマップなどを用いて描くことができるものではなく、当然、暗黙知的なのですから、要素分解することがそもそもできない。
シックスシグマのプロセス改善/プロセス再設計っていう活動は、まさにそういう分解不可能な仕事をプロセス分解することで、レゴブロックのように組み替えたりできるようにすることなんだなと思っています。
そして、一枚の分割不可能なシナリオから、レゴブロックへの変換こそがWebツールの導入を可能にするものだと思います。何よりWebツールというのは、非常に高性能なレゴブロックの1つに違いないのですから。
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