Webだけではブランディングはできない
多くのブランドが顧客に親しみ、信頼をもってもらおうとWebでのイメージ訴求や情報発信に力を入れようとしますが、Web上の実際の評価をみると、販売員の態度が悪かった、営業が知識不足だったなどといった意見のほうが目立つことがあったりします。商品そのものの良し悪しよりもそういった売り場、購入の現場でのブランド経験の評価の低さのほうが声に出して語りやすいのかもしれません。自社のWebサイトを使ってブランディングを行なおうとする際に、こうした自社サイトの外の意見を無視して、いくらブランドのイメージをよくしよう、高い価値を感じてもらおうとしてもダメです。ブランドのマイナス側面を削減しようともせず、いくらプラス側面ばかりを訴求しても、基礎となる土台が不安定なのですから、ブランドの価値は積み重なっていきません。
先日の「間違っても人様の会社のブランドをつくることができるなどと勘違いしないこと」というエントリーでは、ブランドをつくるためには、まず、社内の人間がとにかく自分たちの会社は何を追いかけてるのか? どんな夢に向かって進んでいるのか? 自分たちはどうすれば輝き、外部の人に認めてもらえるのか?をとにかくひたすら考え抜くしかないと書きました。
顧客がブランドに接するのがWebだけということはないでしょう。あらゆるタッチポイントが顧客のブランド評価に影響を与えます。その中でも重要なのはブランドを背負ったそれぞれの従業員であることは間違いないのではないでしょうか?
真実の瞬間(Moments Of Truth)
真実の瞬間(Moments Of Truth)とは、ヤン・カールソン(スカンジナビア航空元CEO)が提唱した言葉で、顧客が企業に対して、何らかの印象(肯定的、中立的、否定的)を抱くきっかけとなる出来事、あるいは、プロセス内でそのような出来事が生じる時点のことを指します。顧客がブランドの評価を下すのはこうした真実の瞬間においてです。また、スコット・M・デイビスとマイケル・ダンが『ブランド価値を高める コンタクト・ポイント戦略』で提案したような、売り場、電話応対、ウェブサイト、営業マンなど、顧客がブランドと接するすべてのコンタクト・ポイント(タッチポイント)において、顧客の体験を管理するコンタクト・ポイント戦略という考え方も、真実の瞬間という考え方に近いと思われます。
著者らはコンタクト・ポイントを以下の4つに分類しています。
- 購買前コンタクトポイント
- 購買時コンタクトポイント
- 購買後コンタクトポイント
- 影響コンタクトポイント
顧客の行動モデルで考えると、これはAIDMAという売り切りのモデルよりも、購買後も視野に入れたAISASなどのモデルを想定しているとみてよいでしょう。
シックスシグマにおける真実の瞬間の評価
顧客への価値提供プロセスを重視するシックスシグマにおいてもやはり、「真実の瞬間の評価」が行なわれます。シックスシグマではこれまで紹介してきたように、SIPOCダイアグラムなどを用いて自社のコアプロセスを描くとともに、最終アウトプットに対する顧客要求(アウトプット要求)だけでなく、価値提供プロセスにおけるサービス段階の各時点に対する顧客の要求(サービス要求)についてもきちんと捉えます。このサービス要求への視点が先の真実の瞬間やコンタクト・ポイント戦略に通じるところです。
測定による管理を重視するシックスシグマでは、顧客のこうした要求を捉えた上で重要な顧客接点においては継続的な測定を行なうことで、顧客満足度の評価、管理が可能な状態をつくるのです。
統合的ブランディング
このような意味でやはり「Webだけではブランディングはできない」のです。統合的なブランディング(いや、実はそれ以外にブランディングはないと思うのですが)においては、外部に対するブランディングの前に、企業内部でのインターナル・ブランディング活動を重視する必要があるのでしょう。むしろ、そのインターナル・ブランディング活動のためにイントラも含めたWeb技術を使って、ブランド価値の社内浸透をはかることを考えることができるのではないかと思います。ようするに自社の価値提供プロセスにどうWebを組み入れるかと考えることではじめて、ブランドの価値向上をはじめ、自社が目標とする課題を達成できるかという問いに答えることができるのでしょうね。
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この記事へのコメント
課長007
従業員満足
↓
組織力向上
↓
顧客満足
↓
企業価値向上
少子高齢化=人財不足から見た将来不安の一端なのでしょうか。
tanahashi
極端なことをいえば、従業員それぞれ勝手なことやって満足してる場合には、組織全体としての組織力向上にはつながりませんので。