2006年12月10日

スーパーエッシャー展 ある特異な版画家の軌跡

渋谷の東急で行なわれている「スーパーエッシャー展 ある特異な版画家の軌跡」に行ってきました。

スーパーエッシャー展 公式サイト http://www.ntv.co.jp/escher/
Bunkamura スーパーエッシャー展 特集ページ http://www.bunkamura.co.jp/shokai/museum/lineup/06_escher/index.html



今回は、オランダのハーグ市立美術館から約160点の作品、資料が紹介されています。中には、エッシャー手書きの制作ノート《エッシャーノート》も出品されていました。

エッシャーとペンローズ

エッシャーといえば、水が下から上へ流れる『滝』や、白い鳥と黒い鳥が互いに図と地の関係を織り成す『昼と夜』などのだまし絵が有名ですが、今日見たかったのは、ペンローズが次のように指摘する『円の極限』に代表されるような「正則分割」の技法を使ったシリーズ。

ロバチェフスキー幾何学を想い描くのに一番いい方法は、エッシャーの版画を見ることである。エッシャーは『円の極限』と名付ける作品を何点か作った。そして図1−17に示したのが『円の極限4』である。これはエッシャーが宇宙を描いたものであり、見ればわかるように、そこは天使と悪魔がいっぱいである! 注目すべき点は、円の端に向かうにつれて、絵が非常に込み入ってくるように見えることである。そのように見えるのは、普通の平らな紙の上(言いかえればユークリッド空間)に双曲型空間が描かれているからである。
ロジャー・ペンローズ『心は量子で語れるか―21世紀物理の進むべき道をさぐる』

最近、ペンローズ関連の本を読んで知ったのが、ペンローズとエッシャーの深いかかわりでした。

たとえば、エッシャーの有名な『階段』のエッチング。
あの不可能図形のアイディアは、幼いロジャーが遺伝子学者の父親とともにエッシャーに教えたものなのだ。偉大なる芸術家の創作意欲を刺激した「ペンローズ三角形」は、ロジャー坊やの非凡な幾何学的才能を予感させるものであった。

ここでいう「ペンローズ三角形」とは、こんな図です。

penrose_triangle


ね、確かにエッシャーを想わせる図形でしょ。

やはり、だまし絵のイメージが強いエッシャーですが、今日作品をみて思ったのは、非常に幾何学的な思考が強かった作家だったんだなということでした。
初期にイタリアに住んでいた頃の「ローマの夜」と題された作品なんかを見ていると、絵よりも版画という平面作品制作においてこそ、3次元空間を平面に落としこむ際の幾何学的感覚が研ぎ澄まされるのかもしれないなと感じました。そう。この視点からみると、そもそも三次元空間を二次元平面に写すこと自体、だまし絵なわけです。

また、そこから「正則分割」と呼ばれるタイリングの技法に向かうのも自然な流れに感じられました。
ペンローズにも有名なペンローズタイルと呼ばれる五角形を用いた準結晶の発見などもあるのですが、このあたりもエッシャーとペンローズに親交があったというのも非常にうなづけたりします。

「スーパーエッシャー展」の会期は来年の1月13日まで。
今日行ったばかりなのに、もう一度みたいなと思わせる展覧会でした。

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posted by HIROKI tanahashi at 18:56| Comment(0) | TrackBack(0) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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