ブランドのつくりかた:1.シックスシグマを使う

昨夜のエントリー「マーケターの失敗につながる3つの能力欠如」では、「ブランド・マネジメントのために組織・文化・情報を支援するのに必要な、顧客視点でのプロセス形成能力」の欠如を補うためには、シックスシグマを使うことが有効ではないかと書きました。

ブランドのつくりかた

そんなことを考える背景にはやはり「製品のつくりかたは知っていてもブランドのつくりかたは知らないって、ビジネスとしてどうなの?」という思いがあります。
これに関しては、さつませんだい徒然草さんに参考になるトラックバックをいただいたので、ぜひこちらも参考いただければと思います。

たこやき屋の場合だと、「たこ焼きを美味しく作る」ってのはもちろん大事。でもそれだけじゃダメなんです。「美味しいと感じてもらえるたこ焼きを作る」ほうが大事なの。言葉遊びみたいだけど大きな違いなんすよね(この違いをわかってもらいたい)。

とにかくブランドの重要性はわかっていても、そのつかりかたを知らないというマーケターは非常に多いのだろうと思います(僕自身も含めて)。
ブランドがキャンペーンと同じレベルであれば、これまで行なってきたマーケティング手法も使えるのかもしれませんが、その方法ではどうしても長期にわたり競争優位性をもった企業資産としてのブランドを構築、維持していくことはむずかしいでしょう。

昨日も紹介しましたが、『利益を創出する統合マーケティング・マネジメント』という本では「あなたの会社のブランドはあなたの会社のビジネスなのだ」と書かれています。
ビジネスだからこそ、ビジネスにおけるマネジメント・ツールとして有効なシックスシグマの手法や戦略マップ、バランススコアーカードなどのツールが、ビジネスとしての「ブランドのつくりかた」にも利用可能だろうと考えています。

顧客視点で価値提供プロセスを描く

さて、では、さっそくなぜシックスシグマやバランススコアカードが使えると思っているかを書いてみることにしましょう。

まずはシックスシグマから。
『シックスシグマ・ウエイ―全社的経営革新の全ノウハウ』という本でシックスシグマについて勉強したことがある方ならご存知かと思いますが、シックスシグマ活動のロードマップのはじめには、まず「コア・プロセスと主要顧客の確定」を行なうことが必要とされます。
ようするにこれは、主要顧客は誰で、どんな要求を行なっており、そして、企業はその要求を満たすために、どんなプロセスによって価値提供を行なっているかということです。

シックスシグマ活動は基本的に、プロセス改善、プロセス再設計、プロセス管理という具体的な改善策に落とし込まれるわけですから、最初に既存のコア・プロセスを明確にし、それが主要顧客の要求を満たすのに十分なのか、課題はどこにあるのかを把握するタスクが最初に置かれるのはごくごく自然なことだと思われます。
企業内部的にみれば、顧客の要求、顧客が何に価値を感じるのかという視点を、自社で行なっているプロセスに直結させた形で見えるようにするのが、このシックスシグマ活動のロードマップにおいて最初になされるべきことなんだと捉えれます。

では、それは具体的にどのような形で「見える」ようにされるのか?

SIPOCを使う

その最初のコア・プロセスを描くために用いられるツールがSIPOCです。

SIPOCとは、業務プロセスのダイアグラムを構成する5つの要素、サプライヤー(Supplier)、インプット(Input)、プロセス(Process)、アウトプット(Output)、顧客(Customer)の頭文字を組み合わせたもので、具体的には下図のようなものになります。

sipoc

ここでは、このブログ DESIGN IT! w/LOVE の価値提供のコア・プロセスを想定してみました。
また、下の「顧客の声」には、顧客(=読者)の要求として考えられる3つのケースでの仮説を加え、それが上のプロセス上のどのタスクに最も関係していると考えられるかを矢印で描いています。

このようにSIPOCで描いてみることで、誰に何をアウトプットしなくてはいけないか、そのためにはどんなプロセスが必要で、またアウトプット要求以外に、プロセス上のサービス要求としてどんなものが考えられるか、あるいは、事前にどんなインプットを誰から得ることが必要なのかが、可視化できるようになるわけです。

企業で働くほとんどの人たちが自社のブランド価値を左右する

ブログでの顧客満足向上みたいな非常に簡単なケースを想定してみましたが、ようするに「コア・プロセスと主要顧客の確定」というのは、企業がどのようなプロセスで、主要顧客に価値提供しているのかを可視化することだということをわかっていただければよいと思います。
つまり、このように自社のプロセスと顧客の要求を結びつけた形で可視化が行なえれば、ブランド価値の向上という企業の課題は、マーケティング部門やブランドを管理する部門が独立して行なえるようなものでは決してなく、企業で働くほとんどの人たちが自社のブランド価値を左右する立場に立っていることがはっきりと見えてくるわけです。

ここでの注意点は、プロセスは機能とイコールにはならないということでしょう。実際に自分たちが行なっている仕事のプロセスを顧客視点で描いてみれば気づくと思いますが、各プロセスは組織において機能別に組織化された部門をまたがる形になることが多かったりします。
ようするに自社内で他部門がなにをやってるのかわからない、なんていう企業ではブランド価値を高めようとしても、まず社内に障害があるということになるわけです。

続きもWebで

さて、ここまででブランド価値向上がなぜ企業内プロセスと関係をもち、さらにそれを具体的に描くためには、シックスシグマの考え方やSIPOCというツールが有効でありそうだということがなんとなくは感じていただけたかなと思います。

ちょっと長くなりそうなので、この続きは「ブランドのつくりかた:2.戦略マップとバランススコアカードを使う」で書くことにします。

関連エントリー

 

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • シグマの極意
  • Excerpt: 在庫確認については当店のホームページ内の商品には全てに(在庫あり)の表示をしております。更新はリアルタイムに行っておりますが、更新の遅れ及び売れ筋商品の殺到注文の場合、商品が売り切れ状態になる場合もご..
  • Weblog: ケースをあげる
  • Tracked: 2007-08-15 09:05