内容は?
扱っているのは、特殊相対性理論における「ローレンツ収縮」ってほんとに物が縮んで見えるんだっけ?だとか、一般相対性理論の世界におけるブラックホールにはすべての物理量が無限大の大きさと化す特異点が存在するってほんと?だとか、量子力学の観測問題、観測すると収縮が起きるのはなんで?だとか、現代物理学の最大の課題とされる重量理論と量子理論の統合がスピノールというモデルを使うとなんとかなりそうってほんと?だとかいう現代物理学好きの人ならいずれも興味を持ちそうな話で、それが非常に非常にわかりやすく説明されています。でもって、この本の主役であるペンローズは、上にあげたそれぞれの謎に対して、天才的な驚くべき回答を提示したことで、とても評価されているわけです。
例えば、ローレンツ収縮がおきるときは、観測者にはものが縮んでみるんじゃなくて、回転してみえるんですよ、とかね。
スピノールって?
ところで、上にあげた内容にある「スピノール」って何?って思った方。それにもこんなわかりやすい解説がついてます。相対論と量子論の申し子がスピノールと呼ばれる奇妙な数学的(かつ物理的)物体である。おおまかには、スピン1/2のスピノールが2つ合わさるとスピン1の光子になるため、スピノールは光の「平方根」だということができる。これは大きさがゼロ(!)のベクトルの平方根である。竹内薫『ペンローズのねじれた四次元―時空をつくるツイスターの不思議』
えっ、ぜんぜんわかりにくいじゃないかって。
いや、ここだけじゃそうかもしれませんが、ちゃんとそのあとも読めばわかるんですって。僕のブログで全部わかっちゃってもあれでしょ。
時空はスピンから作られているのではないか
で、この続きがまたおもしろい。このスピノールをたくさん集めてネットワークにした「ペンローズのスピン網」が現実の時空構造と酷似していることがわかり、「時空はスピンから作られているのではないか」という推測が生まれた。竹内薫『ペンローズのねじれた四次元―時空をつくるツイスターの不思議』
これ、すごいよね。
通常は量子論なんかでも時空の中に粒子があると考えるわけだけど、ペンローズはそれを見事に逆転してしまっているわけです。スピノールっていう粒子のネットワークが時空をつくりあげてるんじゃないのかなって。
そうなると、いわゆる量子論で問題となる粒子の位置とかが無意味になる。だって、時空が先にあると仮定するからこそ、位置が問題になるわけですが、それが逆転されてしまえば位置や距離という概念を考えることがそもそも意味をなさなくなるわけですから。
と、僕が感覚的に理解できたレベルはここまでなので、あとは各自読んでみてください。
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