魂、思想、世界観、そして、夢のない企業って、どんなにコミュニケーション=コンテンツを積み上げようと、ブランドとしてつまらなく感じてしまう。
ということに。
独自の世界観や夢がなければ、Webでそれを語ることはできない
そして、おそらく夢や思想、世界観を欠いた企業って、結局のところ、業績をあげるのにも苦労するんだと思います。何しろ、本質的なところで社会を魅了することなく、個別の商品単位で魅了できるかどうかが勝負になってくるわけですから。ようするに、コーポレートブランドの力を借りずに、商品ブランドの力だけでやっていかなきゃいけないわけですから競争的にも、企業内における商品開発力的にも不利になることが予想できます。今回、3社のWebサイトをみて、明らかに1社だけWebサイトからも、その企業がもつ夢や世界観やパワーみたいなものがビシビシと伝わってくるものがありました。そして、他の2社とくらべて、やっぱり、その企業のもつブランド力って違うんですよね。
「事業会社にとってのWeb2.0:その2.Web構築・運用は企業経営の縮図」でもすこし触れましたが、その企業がどんな夢や世界観や哲学をもっていて、それがその企業ブランドにどれだけパワーを与えているのかは、Webサイトにはっきり現れてしまうんだと思います。どんなにWebでコミュニケーションをとろうとしても、元々、独自の夢や世界観をもたない企業にはそれをWeb上に描き出すことはできませんから。
これは企業もそうだけど、たぶん、個人もおんなじ。
魂、思想、世界観、そして、夢のない人。そして、それらを普段から磨いてない人。
そういう人は結局薄っぺらになっちゃうのかな、なんてことを感じます。
夢を育てるっていうのは、たぶん、一種のスキルだと思います。企業においても、個人においても。
それはただぼんやり過ごしていても手に入れられる類いのものではないだろうとはっきりと感じます。
企業の夢と、戦略や組織との関係
と、そんなことを考えつつ、それじゃあ、その夢や世界観なんていう、ある種、精神論的なキーワードと、いわゆる組織だとか戦略だとかとはどういう関係になってるんだろうと思って、整理してみたのがこの図。
なんとなく、僕の感じているイメージが伝わるでしょうか?
「戦略」だとか「組織」だとかの定義
ついでなので、「戦略」だとか「組織」だとかの定義について、これまで僕がいいなと思ったものをいくつかピックアップしておきましょう。例えば「戦略」を定義した言葉で一番エレガントだなと思ったのは、この定義。
本書においては戦略(strategy)を「いかに競争に成功するか、ということに関して一企業が持つ理論」と定義する。ジェイ・B・バーニー『企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続』
理論=セオリーです。そして、もちろん、それは「一企業が持つ」と限定することで、それが完璧な答えなどではなく、戦略実行を行なったうえではじめて成否を論じられる、ある意味では結果論的なものであることを、この定義は示してくれています。
とはいえ、「ある意味では結果論的」というのは、戦略などあってもなくても結果は変わらないとうことを意味しません。なぜなら、上の図に示したとおり、現状とあるべき姿のギャップを埋めるために一企業が描くのが戦略であり、そして、組織は戦略に従うのだから。
組織は、いかに活動し、いかに自らの仕事をするか。初めに組織の機能を明らかにしておかなければ、何を考えても意味がない。組織の機能には3つの側面がある。第1にそれぞれの組織の目的を明らかにし、第2にその目的を果たすためにマネジメントし、第3にそこに働く人たちを生かすことである。P.F. ドラッカー『イノベーターの条件―社会の絆をいかに創造するか』
そう。「初めに組織の機能を明らかにしておかなければ、何を考えても意味がない」。
戦略が組織に従うのではなく、組織が戦略に従うんです。その意味で組織を前提条件に戦略を考えるのは「現状」と「あるべき姿」のギャップを埋めるという視点に立てば、もちろん、間違いではないものの、とはいえ、あまりに現行の組織体制やプロセスに縛られてしまって、柔軟な発想を退けてしまうのも問題なのだと思います。
あっ、これも組織だけに限ったことではなく、図の同じ位置においた情報システムや人材育成(自分自身の育成も含めて)に関しても同じことが言えるんでしょうね。いまの自分に何ができるかよりも、自分が何をすべきなのかを基点に、じゃあ、今の自分に何が足りないかを考えたほうが有益ということです。
とはいえ、大きな組織であればあるほど、戦略をきちんと組織内で共有すること自体がむずかしい。そのためにも戦略の記述、測定、管理が必要になるわけです。
企業は長期的な企業価値の創造のための戦略を特徴的に示す限られた数の重要な変数を測定できるように心がけなければならない。
測定できないものは管理できない。記述できないものは測定できない。ともに、ロバート・S・キャプラン 、デビッド・P・ノートン
『戦略マップ バランスト・スコアカードの新・戦略実行フレームワーク』
ただし、それでもすべてが「測定可能」「計算可能」なものではなく、そこには「計算不可能性」(non-comutability by ロジャー・ペンローズ)があるからこそ、渇望が生まれるってことも忘れてはいけないと思います。
志と目標と夢がある限り、神秘への渇望はなくならない。一体誰が・・・・・統計を渇望するのだろう?ケビン・ロバーツ『永遠に愛されるブランド ラブマークの誕生』
そうなんですよね。こうやって夢やビジョンを基点に、戦略や組織が構築され、それを意思や行動力によって実行し、それとともに測定や管理を行なう。でも、結局は志や目標や夢に戻ってくるんだと思うんですよ。
こういう循環が働いているかどうかが企業の成否にとっては大きなポイントになるんだろうなって思います。
なんか表面的にマーケティングやらブランディングを論じられることが多いような印象を持ちますが、やっぱり、こういうところもいっしょに押さえておかないといけないでしょう、というのがこの1週間、いろいろ勉強させてもらって、すごく感じたことでした。
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