パターンを見出し、表現をエレガントにする
ランダムな世界に1つのパターンが見い出せると何かしらの効率化が図れることになります。例えば、
2.236067977499・・・
という数字
一見、ランダムに見えるこの数字も実は5の平方根だったりします。それが5の平方根とわかれば随分効率化されます。
パターンを見出せればその法則性はきわめて短縮して言い表すことができます。
今度はこの数字。
010001101100000101010011100101111・・・
これはいわゆるチャンパーナウン数列と呼ばれるものです。
はじめに1個の文字からなる数列(0と1)、次に2個の文字からなる数列(00,01,10,11)、そしてさらに3個の文字からなる数列(000,001,010,100,110,101,111)を順を追って並べていったものです。
これもパターンがわかればランダムではなくなると同時に、簡潔に説明できるし、文字列1つ1つを覚えるよりも簡単に定式化できます。
これがモジュール化のもつ役割の1つです。
ほとんど偶然のように見える何気ない日常の風景に何がしかのパターン、法則性を見い出すこと。それがモジュール化のはじまりだと言ってもよいでしょう。テンプレート化するというのは、このパターン(モジュール)の組み合わせにより、さらに大きなモジュールを構成することだといえるでしょう。
情報の宇宙
前回の「私的インフォメーション・アーキテクチャ考:5.構造と要素間の関係性:並び順と導線」では、IAにおいて並び順を決めることは宇宙観を表現すること、宇宙を語ることにつながると書きました。モジュール化はその宇宙観をさらにそれがもつ法則性をふくめて詳細に描き出すことで、宇宙に一定の秩序を導入し、それが完全なるカオスに落ち込んでしまうことを防ぎます。モジュールの存在しない情報の宇宙は混沌に支配されたものになるでしょう。
それでも小説のように強力なストーリーがあれば、段落や章立てというごく初歩的なモジュールだけでも宇宙が完全にカオスに落ち込むのを避けることはできるでしょう。しかし、それが哲学書などであればどうでしょうか? そこにストーリーがあっても哲学書になじんでいない人には、それがストーリーであることすら判別できず、結局は混沌の波にさらわれてしまうのではないでしょうか?
不確実性に対する2つのアプローチ
手元に本がないので、きちんと引用できませんが、茂木健一郎さんは著書『クオリア降臨』の中で、確率論的に不確実性に挑む科学的な手法と、1回性の表現によって不確実性に対する芸術的、文学的な手法が、実は不確実性に挑む人間の2つのアプローチとしてそれほどかけ離れたものではないといった旨のことを書いてらっしゃったと思います。いわゆる文系、理系の違いに関する議論がたまにブログスフィアでも見受けられますが、僕は茂木さんの言うのと同じような意味で、あんまり文系と理系の差を感じることが実はありません。ようはいずれのアプローチを用いても不確実性に向かい合う姿勢は同じだと感じるからです。
それが先に書いたとおり、徹底的にモジュール化を推し進めることで情報がカオスに落ち込むのを回避するのか、あるいは、ストーリーの強度と最低限のモジュールだけでそれに対するのかというインフォメーション・アーキテクチャのデザイン・アプローチを見ても、根本的にはそう違いはないとも感じます。
Googleが行っていることさえも、ひとりの作家が小説を書くアプローチとそれほど大きな違いはないと僕は感じます。
そして、実は僕たちが法則性がないと感じているだけで、実は多くの小説の文体には何かしらのモジュールが存在しているのかもしれません。
モジュール間の関係性
モジュールは情報の宇宙の1つのパターンです。先ほど書いたように複数のモジュールの組み合わせにより、より大きなモジュールとしてドキュメントのテンプレートを作成することが可能になります。その際、モジュール間の関係性がきちんと定義(定式化)されていないと、それは単なるパッチワークのようで、すこしエレガントさを欠いたものになるかもしれません。それはドキュメント全体が意味するものを伝えるのにはすこし不向きなものになるでしょう。ドキュメント内で組み合わされたモジュール同士はお互いを引き立てあうようなある種の関係性が必要でしょう。
例えば、一般的によく見かけるWebページのように、タイトルのモジュール、グローバルナビゲーションやローカルナビゲーションのモジュール、本文のモジュール、そして、ブログであれば、コメントやトラックバックのモジュールのように、組み合わされることで、1つのドキュメントが意味(宇宙の様相)をあらわすような何がしかの秩序=関係性を描く必要があるのでしょう。
あるいは、テレビやゲームの画面であれば、背景のモジュール、小道具などのモジュール、登場人物のモジュール、音楽などのモジュールによって、ストーリーを描き出すことになるのでしょう。
そして、モジュールが組み合わさりはじめ、それが大きな構築物として組織化されはじめると、小さなモジュール内の情報単位では予想しなかったような組織的現象が起こり始める可能性が出てきます。
次回は、この話と絡むところで「量と頻度」について考えてみます。
- 私的インフォメーション・アーキテクチャ考:0.何を行うのかの定義
- 私的インフォメーション・アーキテクチャ考:1.要素としての情報の種類
- 私的インフォメーション・アーキテクチャ考:2.構造と要素間の関係性:その概要
- 私的インフォメーション・アーキテクチャ考:3.構造と要素間の関係性:分類あるいはメタデータ:その1
- 私的インフォメーション・アーキテクチャ考:4.構造と要素間の関係性:分類あるいはメタデータ:その2
- 私的インフォメーション・アーキテクチャ考:5.構造と要素間の関係性:並び順と導線
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