2006年10月24日

私的インフォメーション・アーキテクチャ考:5.構造と要素間の関係性:並び順と導線

何かを伝えるには意思がいる。意思にはそれが納まる入れ物がいる。ただ、漠然と述べただけでは伝わらない。それはエレガントさに欠ける。内なる世界観によって形作ること。あなたはいったい何を伝えたいのか? そして、相手にどうして欲しいのか?

ナビゲーション

もしあなたがWebサイトの設計者なら、ナビゲーションの並び順をどう決めているのでしょう?

今日、ある業界のWebサイトをいくつか見ていたのですが、どうもわかりづらい。使っていて意思が感じられないし、何をしてほしいのかがよくわからない。とりわけナビゲーションの並び順が何を伝えようとしているのかが伝わってこない。
おそらく原因は昨日までのエントリーで問題としていたようなコンテンツのカテゴライズの問題もあるような気がしましたが、それだけではなくメニューの並び順にストーリー性を感じられなかったのです。

ナビゲーションとはその名のとおり、ナビゲートするものです。それはただ単に目立たせたい順に、上から下へ、左から右へと並べるだけでは伝えたいストーリーが見えてこなかったりします。

例えば、誰かに昨日自分の身に起こったことでも、ちゃんと順を追って話すでしょう。それは単純に時系列である必要はありません。時系列的にはバラバラでも起承転結があれば話は伝わるかもしれません。はじめ淡々としていても、最後にすべてのエピソードが1つにつながり、そして、あっと驚くオチが用意されていれば、ストーリーとしては合格でしょう。

Webサイトのナビゲーションでも同じことが言えると思います。
左から右へと流れるグローバルナビゲーションに、そして、上から下へと連なるローカルナビゲーションに、あなたが伝えたいストーリーが埋め込まれていれば、サイトはあなたの世界観を伝えてくれる器となるでしょう。

マーケティング目的のサイトであれば、そのストーリーは例えばAIDMAの法則に沿ったものであってもいいのかもしれません。注意をひくコンテンツから徐々に理解を深めるようなコンテンツを経て、最終的にアクションにつながる流れでもよいでしょう。そうしたナビゲーションであれば、少なくともそのサイトが顧客に対して語りかけ、自社の商品を買ってもらいたいと思っていることは伝わるでしょう。

採用募集のサイトでも同じでしょう。まず、自分たちが何者かをアピールすることからはじめて、会社の考え方や社内の風景、先輩たちの声、そして、詳しい募集要項や福利厚生、待遇面などのデータを紹介した上で、エントリーフォームに誘導するという流れが考えられるでしょう。

こうした語りかける姿勢がナビゲーションという形で表現されていないと、それだけでユーザーはそのサイトが何なのかがわかりにくくなったりします。特にポータルのようなサイトとは違い、ユーザーとのコミュニケーション、関係性の構築・維持を目的でしたサイトであれば、なおさらだと思います。

時系列、人気順、その他

しかし、Webサイトのコンテンツの並び順を決めるのは、単に作られたストーリーだけとは限りません。
実際、あなたが今読んでらっしゃるブログはどういう順番で並んでいますか? Weblogであるブログは日々のログがエントリーという形で、時系列の逆順序で並びます。それは過去から現在へとつながる蓄積として、別のストーリーを語ることができるでしょう。

他にもコンテンツの並び順はいくつか考えられます。
売上、アクセス数、コメント数など、なんでもカウントできるものをランキング化して、コンテンツの並びを決めることもできるでしょう。Googleなどの検索結果も僕たちは自然とランキングだと思っています。
それから地図と組み合わせれば、地図の中心地を基点としてそこから近い順にお店などのポイントを並べることもできますし、単純に日本地図で北から南へと都道府県を並べているのもよく見かけられます。
金額の明示された商品であれば、値段の高い順/安い順にソートすることもできますし、用語集などは五十音順に並んでいたほうがわかりやすいでしょう。

どの場合でも、それがどんな順序で並んでいるかが、使う人が一目でわかることは大切なことです。リストが長ければ長いほど、ユーザーが並び順を予想できなければ目的の情報を探しにくくなります。この場合でもそこには伝えようとする意思があります。その宇宙がどんな意思によって、どんな法則によって形作られているか? その息吹を感じさせるような並び順がユーザーとの対話には必要なのではないでしょうか?

複雑なストーリー

ここまではWebサイトに話を絞って進めてきましたが、それ以外に目を向けるとどうなのでしょう?

まず、読み物としての本の場合(雑誌などを除く)、その大部分ははじめから終わりへと伸びる1つのストーリーによって展開されることが多いといってよいでしょう。もちろん、中には複数のストーリーが同時並行で進むようなものもありますが、それでも、最初から終わりへ向かってストーリーが進むのという点では同じではないかと思います。

これはテレビのドラマや映画などでも同じような気がします。
スティーブ・ジョンソンは『ダメなものは、タメになる テレビやゲームは頭を良くしている』の中で、最近の『24』や『ER』などに代表されるドラマが、昔に比べて、どんどんそのストーリーが複雑になり、登場人物の数もその相互の相関関係もより複雑になってきていることを示しています。その一方で、昔のドラマではたびたび画面上に登場していたヒントや説明的な台詞が減り、ほとんど説明のないまま高速で展開するストーリーの間隙を視聴者が自分の頭で埋めなくてはならなくなってきている点を指摘しています。
複数のストーリーが複雑に絡み合い、ましてや前のシーズンのエピソードを知らなくてはわからないような描写もときおり織り交ぜながら、決して線形的とはいえない複雑さで進む現在のドラマは、視聴者の頭を良くしているのではないかというのがジョンソン氏の論です。

さらにそれがゲームになると、今度はストーリーだけでなくエンディングさえマルチ化します。あるイベントはそれ以前に別のイベントを起こしていないと発生しないといったルール的なプログラムは存在するとはいえ、それはもはや並び順さえもユーザーの行動によっていくらでも変化しえます。いちおのストーリがあるものもあれば、もはやストーリーとはいえない単なる目的(のようなもの)があるだけのゲームもあります(ジョンソン氏は『シムシティ』の例をあげています)。

この場合、それは単純にストーリー的な意味で何かを伝えようとしているというのとは違うのではないでしょうか? もちろん、それはゲームの作者・開発者が何も伝えようとしていないというのではなく、伝達の手法が大きく異なっていると考えたほうがよいのかもしれません。

こうしたゲーム的なWebサイトというのはあるのでしょうか? もちろん、それはゲームができるサイトという意味ではなく、ユーザーに何かを調査させ、前に進ませることでユーザーに価値を与えるようなサイトがあったりするのでしょうか? 僕にはちょっとそれが見当たりません。

こんな風に、情報の並び順1つとってみても、そこに伝える意思があるかないかを色濃く出すこともできれば、まったく感じさせないものにしてしまうこともできます。

もしあなたがWebサイトの設計者なら、情報の並び順をどう決めているのでしょう?

さて、次回は「モジュール化とモジュール間の関係性」について考えてみます。



関連エントリー


posted by HIROKI tanahashi at 01:28| Comment(3) | TrackBack(0) | IA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。ayaと申します。
今年の4月より、webディレクションチームに配属になりまして。
最初の仕事が、ナビゲーションを考えるといったものでした。

情報アーキテクチャー系で検索していたら、こちらのサイトに飛んできました。

この記事もすごく共感できる部分があり、興味深くよまさせていただきました。

しかし、いまひとつ自分のなかで良いナビゲーションといったものが、落とし込めていないので、何かいい方法はございませんでしょうか?

サイトの目的、種類にもよると思うので、おっしゃるように、ストーリーのあるナビゲーションにすればいいのでしょうが。。。

わからなくなってきて、意を決してコメントさせていただきました。

お忙しいとは思いますが、何かヒントになるアドバイスをお願いいたします。
Posted by aya at 2007年05月26日 23:14
ナビゲーション。
誰をどこにナビゲートするのでしょう?誰が何のためにナビゲートするのでしょう?
ナビゲートする人はナビゲートされる人とどういう関係を築きたいのでしょう?
その関係はナビゲートされる側にとって好ましいのでしょうか?

ナビゲーションってそういう異なる2者の関係をつくるものなのではないでしょうか?
Posted by tanahashi at 2007年05月26日 23:46
棚橋様

早速のお返事ありがとうございました。

>ナビゲーションってそういう異なる2者の関係をつくるもの

そうですね、関係性を築いていかないといけないのでしょうね。
ナビゲートということは、サイトに訪れるお客様をいかに、スムーズに目的地まで到着させるかを考えないといけないのでしょうね。

デザインをしていた時は、ディレクターの指示があったり、自分で考えないといけないときは、他のサイトを参考に作っていました。

そこには、棚橋様の言葉をかりるなら「メニューの並び順にストーリー性を感じられない」ものでした。

ディレクションに移動になり、今さらと思われるでしょうが、その辺り自分でいつも悩んでいることがあります。

どうしても納得いくものができません。
それによって、もしかしたら、沢山のお客様を逃がしているかもしれない…そう思い、少し勉強しないといけないと思っています。

たとえば、棚橋様がナビゲーションを考える時、もちろんストーリー性を重視し、
サイト内に物語を展開していってらっしゃるのでしょうが、その際、自分自身に質問なり何なりをしてらっしゃるのでしょうか?

グローバルナビゲーションとローカルナビゲーションどっちにしようか悩まれることはあるのでしょうか?また、悩んだ時にどんな基準で決定されるのでしょうか?

サイトに訪れるお客様は、初めての方リピータの方、などいろいろいらっしゃると思います。そのどちらに焦点をおいておられるのでしょうか?

立ち上げて間もない場合は、初めてのお客様、認知度が高まってくればリピータの方など サイトの性質によって変化させていくのでしょうか?

ホンと基本的な部分で
たとえば、グローバルナビゲーションとローカルナビゲーションなどの区分けができません。

今さらながら考えだしたら答えがみつかりません。

もう少し考えてみます。
お忙しいのにありがとうございました。

こちらのサイトは初めてですが、色々興味深い記事が多いので、少し読み込んでいこうと思います。
Posted by aya at 2007年05月27日 08:40
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック