それは打ち合わせやちょっとした仕事の関連の雑談の際に、他人が「むずかしい」と嘆くのを耳にすることです。
これ、なるべく言っちゃダメですよね、と僕は思う。
改善するスキル
「むずかしい」って口にしちゃうと、それが他人にも伝染しちゃって全体のモチベーションが下がっちゃうことがある。しかも、それを口にした人が本来、そのむずかしさを解決する役目の人だと、まわりは「なんなんだろ?」とこれまたモチベーションが下がる。そのむずかしさをどうにかするアイデアを出し、実行していくのがあなたの仕事でしょ、って感じです。別にそれは今すぐどうにかしてくれって話じゃなくて、「むずかしい」とか嘆いて周囲のモチベーションまで下げることなんかやめて、とにかく「どうにかする」努力をしてくれという話。「どうにかする」過程でそれが実際にはどうにかなっていなくても、それをとがめる人はそんなにいないはず。少なくとも努力してくれていることが見えれば、普通は自分たちの側もモチベーションをあげたくなる。プラスのサイクルが回り始めるわけです。
にもかかわらず、「むずかしい」ってすぐに口にして、周囲のモチベーションまで根こそぎ下げてる人が結構多くいる。
いやいや。簡単だなんて思ってないから、問題をきちんと定義して、ゴールと改善範囲を決めて、スケジュールを切って、とにかく先に進もうという努力をしてほしいと思うわけです。
それは仕事をする上での普通に持っていていいスキルであって、「むずかしい」なんて嘆かなくて済むよう、とっととそのスキルを手に入れてほしいわけです。
解決できるかどうかは別のスキルなので問いませんが、少なくとも、うだうだ嘆いているばかりで何もしないよりは、きちんと努力して、運がよければ解決できる場合がある、改善のためのプロジェクトを立てるスキルは身に着けてほしいわけです。
会社のせいじゃなくて、あなたたち自身の努力が足りないんです
それと関連したことで、もう1つ。大体、「むずかしい」とかという言葉を周囲への影響を鑑みずに口にする人に限って、これまた、会社の改善命令の決定になにかとケチをつけることがあります。
確かに会社の出す改善命令の中には、現場の現状を無視してるんじゃないかと思えるような馬鹿げたものも少なくはありません。
その馬鹿げた会社の決定に対して多くの人は、その馬鹿げた部分のダメ出しのモードに入ってしまう。重箱の隅をつつく勢いで決定事項のほころびばかりをあげつらって、いかにそれがダメな決定事項かを証明しようとしたりします。
アホか。お前らは! そう感じます。
そういう人たちは肝心の部分をあてて見ないようにしてるのでしょうか? 決定事項が目指す方法論は馬鹿げていても、その決定事項の目的はほとんどの場合、間違っていません。会社はなにか問題を見出したからそれを改善しようと何がしかの決定を下しているのであって、そこに問題があるのは事実です。解決法が間違っているように思えても、その間違いをただ指摘したところで、それで何にになるの? それで問題が解決するならそれでいいけど、そんなんじゃ、問題って解決しないよね?
たとえ、間違ってたとしても解決に乗り出した会社のほうが僕は、ただ文句ばっかり言ってて何もしようとしないあなたたちより、まともだと思うけど。
それに何より忘れちゃいけないのは、たいていの場合、問題解決のための業務命令は、現場がいつまでたっても自分たちで解決しようとしない問題に対して、改善命令を出す場合がほとんどで、それは会社がむしろ現場をサポートしようとしてるわけです。
それに文句を言ってどうするの? あなたたちがそもそも力不足あるいは怠惰かのどちらかの原因で処理できてない問題があるから、会社がそこのコストを投じてサポートしようとしてくれてるわけでしょ? あなたたちもしかして本当にアホなの?
決定事項で決まった方法論が間違ってると思うなら、自分たちで違う方法論を提案して、こちらの方法でやらせてくださいと言ってみればいいんじゃないでしょうか。あるいはもっといいのは会社の示した方法論にしたがって見ることです。実はその解決方法が間違ってみえるのは、単に現場が現状の文脈でみた客観性を欠いた目で見るから、会社の提示してきた方法が間違ってみえるだけのことが多かったりするので。
現場にいるから現場のことがわかっていると思ったら大間違いです。
現場にいてわかるのは今の現場のことだけで、未来の現場のことなら、むしろ外からの客観的な目でみたほうがよく見えたりすることがあるわけです。
やらされてる感の脱却
と、ここまでちょっと厳しいことを書いてきた気もしますが、会社の文句を言ったり、仕事のむずかしさを嘆くヒマがあれば、自分でもっと努力しましょうよと感じますし、自分のためだけを考えたら、絶対にそっちのほうが得です。もちろん、会社によってはそういう努力がむくわれない会社があるのも知っています。また、自分が努力しようと思っている方向性と会社の見ている方向性が、単純に相性だったり、会社とあなたのレベル感の違いで、相容れない場合があることも知っています。そいう場合は確かに僕がここで書いてきたような「努力しようよ」というだけでは解決しないと思います。でも、その場合でも自分の不幸を他人にまで感染させてしまうような言葉を口にしてしまうよりは、むしろ、自分の違う道を探すほうがよいのではないかと思います。
さて、上に書いたような場合を除くと、「努力する」ためのスキルを身につけてない人に多く見られるのはやっぱり「やらされてる感」じゃないかと感じます。
どうやったら、やらされてるなんて感じられるのか、僕にしてみれば、そっちのほうがよくわかりませんが、そう感じるのはもしかしたら自分はこんなことをする人じゃないとかいううぬぼれがあるんですか? 大して肥えた舌ももたないくせに差し出された料理を選り好みしてるわけですか?
あるいは単に面倒なだけ? それなら僕もいちお納得。
でも、それも面倒じゃない方法を自分で生み出せばいいって話ですよね。それを考えようとしないから「やらされてる感」を感じるんじゃないですか? だって、自分で考え出しためんどくさくない方法を用いるなら、それは「やらされてる」わけじゃなくて、自分で選択して「やってる」わけですから。
ひとことで言えば「甘えだよね」で終わっちゃうんですが、僕はそういう風に簡潔に書くより、うだうだ物事を複雑に書くほうが好きなので、さらにうだうだと続けます。
「やらされてる感」で仕事をしているように見える人に、「何がやりたいの?」と聞くと、たいていはやりたいことを答えられなかったり、いまの仕事やその人のスキルとはまったく無関係な、たぶん、その人がいま関心を示しているだけの夢見がちな答えが返ってきたりします。
「脳に興味がある」とか、「マーケティングをやりたい」とか。
脳科学者にでもなるの? じゃあ、必死で勉強したり、大学にはいる準備とかすれば。 マーケティングをやりたい? じゃあ、月に最低5、6冊くらいはマーケティングや経営、ブランディングだとかの本を読み続けて、かつ、マーケティングに関連するブログを1日3本くらい書き続けるのを、最低1年くらいは続けてみれば。
でも、そういうことやらないよね? なんで? 言ってること、おかしくね?
単に世界は複雑に絡み合ってるだけ
そこまで突拍子のないことのほうがよっぽど辛いし、たぶん、続けるには無理があることです。昔、ちょっと書きましたが訓練として続けることが可能なのは、実際に続けられる範囲内で、その限度をすこしずつあげていくことです。(参照:「ブログを書くことはスポーツをすることと同じだ」)それも「努力する」スキルだと思います。
「やらされてる感」を脱却しようと思うなら、いま目の前にある仕事が自分の将来(それほど遠い将来である必要はありません!)の何の役に立つかを想像してみることです。
もちろん、そのためには自分の将来のやりたいことが見えてないと想像できませんよね。だから、将来のやりたいことをきちんと思い浮かべるんです。
となると、将来何をやりたいかというと、答えが出せない人が多いと思いますから、次に、もしくは、次の次に何をやりたいかぐらいの近い将来を思い浮かべるほうがいいと思います。
あるいは、もっと単純なことをいうと、目の前の仕事がどうなれば、すこしは自分が「やりたくない」ことから遠ざかり、「やりたい」ことに近づくかを考えてみてください。目の前の仕事がどうすればよくなるのか?です。
あれ、これって仕事の改善?
たぶん、そうです。
あなたが欠いているのは複雑に絡まった現実の糸を解きほぐして整理して、自分が理解できるようマッピングする力です。
あなたは単に自分中心で回っている世界がこんがらがって、自分に不利な状況で回っているように感じてしまっているだけです。
還元主義者のような目で個別要素をいくらほじくりまわしてみても、そこには何もありません。たまねぎの皮をむき続けるサルのようなものです。事実はそこにはなく複雑に絡まって見える世界のネットワークの関係性そしてそれが示す法則性にこそ潜んでます。夢見てないで、現実のネットワークを研ぎほぐす目を身につけましょう。
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この記事へのコメント
とおおりすがり
「営業が赤字案件を取ってきました。開発の人はなぜ難しいのか、営業の見積もりミスに反論したりせずに、馬車馬のようにただ黙々と働けばいいんです。」
「とおおりすがり」さんのコメントをみた「とおりすがり」
「取ってきた」段階では「赤字」ではないのに「赤字案件を取ってきた」とか「見積もりミス」等と簡単に言ってしまう人たちこそ「カイゼン」すべきではないでしょうか?
「赤字」にならずに案件の落しどころを検討する、とか、これまでの自分たちのやり方と違うやり方で赤字にならない方法を考えるとか。
> これ、なるべく言っちゃダメですよね、と僕は思う。
そう、なるべく、というか簡単に判断して口に出しちゃだめだと思います。少なくともちゃんと考えたり工夫する努力をしてから口に出せ、と。
> 開発の人はなぜ難しいのか
↑ここだ、どこにかかるのか(日本語として)わかんない。
「とおおりすがり」さんのコメントをみた「とおりすがり」
tanahashi
「むずかしい」って口にすることすべてがダメだとは思いません。
相手に伝えることを目的とした「むずかしい」なら有益ではないでしょうか。
僕がダメだと思ったのは単なる愚痴レベルに近い「むずかしい」です。
とおおりすがり」さんのコメントをみた「とおりすがり」さんの以下略
考えることをしない人が多すぎ。
ほあん
tanahashi
tanahashi
そう書くと愚痴一般の話になるでしょ。
hogehoge
>決定事項の目的はほとんどの場合、間違っていません
tanahashi
僕がこのエントリーで思い浮かべてたの社内の業務改善プロジェクトでした。あともう一つはノー残業デーに関するもの。
なので営業と開発っていう関係より、会社の決定と一般社員みたいな関係を想定してたわけです。
あいまいな書き方でうまく伝わらない部分ができてしまったようですね。
ごめんなさい。
kl
非常に社員想いの良い方針だとは思うけれど、負荷のかかっている人達にそれを守らせるのは無理な話。
結局帰れる人は帰るし、帰れない人は帰らない。
ノー残業デー
スルーマン
tanahashi
書き方がまずかったですね。
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