2012年01月19日

サービスデザインのためのデザイン思考のディスカッションの場の創出に向けての第一歩

昨日、会社のほうのブログに「デザイン思考と参加型社会」という記事を更新しました。



『COURRiER Japon 2012年01月号』に掲載されたインタビュー記事の中で、IDEOのCEOであるティム・ブラウンは従来の消費中心の経済モデルに対して、「人とかかわり合い、影響を求め、積極的に自らの消費にかかわろうとする消費者中心の経済」としての「参加型経済モデル」をもうひとつの経済モデルと言っているのを読んだのをきっかけに書いたものです。

ソーシャル化し、社会の持続可能性や個人・企業双方の社会性がより問われるようになった社会において、「意味のあるモノやサービスとはどんなものか?」を考える場合、必要だが人びとが愛着も持てずに使い捨てるしかない商品を次々に売りつけるだけの従来的なマーケティングを行なう商品やサービスに対して、ビジネスとしての持続性があるか?と疑問を投げかける必要があることをティム・ブラウンは指摘しています。

持続可能なサービスのデザインという視点へ

その「参加型経済モデル」においては、企業は消費者にモノとしての商品を売るだけの関係性から、消費者が積極的に参加できるプラットフォームとしてのサービスを提供することで、消費者とインタラクティブな関係性をもつことが必要になってきます。
そのとき、サービスシステムをビジネスとしても持続可能なものとして構築するためには、これまで以上に「デザイン思考」のアプローチが求められる。

アウトプット要求がユーザーの期待どおりでも、サービス要求の面でユーザーに努力を強いる場合(長時間待たされる、担当者の説明や利用画面がわかりづらいのを我慢しなくてはいけない、など)、サービス全体のシステムはうまく機能しません。

同じことはマンジーニが指摘する「アクセスの多様性」についても言え、同じ機能に異なる様々なデバイスからアクセスできるようにしなければ、多様なユーザーの利用や様々なシーンでの利用を期待することはできません。ロンドンのサービスデザインコンサルティング会社であるEngineは、サービスデザインにおける主要な5つの要素の1つに「システム」を上げていますが、そのシステムを期待どおりに機能させ、目的を達成できるようにするためには、デザイナーはユーザーが努力せずともサービスを利用できるよう、ユーザーのサービス利用コンテキストを把握する必要があるのです。いつ、どんな時に、ユーザーはどんなことをサービスに期待するのかをエスノグラフィーなどを通じて把握し、その情報を元にカスタマー・ジャーニー・マッピングのようなツールを用いてサービス利用プロセスをモデル化した上でシステムデザインに落とし込むことが必要でしょう。そうしたデザインプロセスがあってこそ、Zipcarのような利用の円滑さやアクセスの多様性に配慮されたサービスがデザインできるのでしょう。

顧客がサービスを利用する際のプロセス全体を旅と見立て、そのサービス利用のすべてのタッチポイントでの体験価値を高めることでサービスの利用価値をあげていく。ただ、サービスデザインにおいては単純に顧客価値を高めるためだけでなく、サービスプロバイダーがサステナブルにサービス提供ができるようビジネスとしてのサービスの持続性を考え、サービスシステムのデザインをする必要がある。この両方をともに満たすためにも、従来のデザイン思考とビッグデータの活用などの統計的思考の組み合わせが必要になっているのだと僕は考えています。

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「ユーザーの旅をいかに満足度の高いものにするか」という問題をデザイン思考で解決する

このあたりの話は、その前に書いた連載としての「Webサービスとペルソナ(後編)」という記事でも書いています。

今回あらためて「Webサービスとペルソナ」というテーマでブログを書こうと思ったのも、その「体験」の重要性がより高まってきている傾向が見られるからです。Webやネット上の話だけではありません。世界的な規模で市場動向がよりサービスの体験を価値が重視される傾向になっており、さらに、その体験価値の高いサービスを生み出す際にデザイン思考に期待される傾向が見られるのです。

先日、ホームページのコラム(→「エスノグラフィーと体験のデザイン」)にも書きましたが、欧米ではデザイン思考をよりビジネスに結びつける方向性としてサービスデザインに対する注目が集まっています。サービス利用時に限らず、その前後も含めて、様々なタッチポイントでサービスを体験するユーザーの旅をいかに満足度の高いものにするかを目的として行なうサービスデザインにおいては、物理的なモノのデザイン以上に人間中心のデザインのアプローチが求められているのです。

と、こんな観点からデザイン思考と持続可能型の参加型社会の関係を考えてみているので、興味のある方はぜひあわせて読んでみて下さい。



持続可能なサービスのデザインのために、これからいろんな方とデザイン思考のアプローチに関してなどのディスカッションを出来る場が増えてくるとよいなと思っています。
みなさん、よろしくお願いいたします。

posted by HIROKI tanahashi at 10:16| デザイン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする