ユーザビリティって単にユーザーインターフェイスの問題ではないよね
上記の2つのエントリーにも何人かの方からはてなでブックマークしてもらったんですが、そのタグに[インターフェース]だとか、[UserInterface]だとかいうタグがあるんですよね。もしかしたら、Webユーザビリティって単にユーザーインターフェイスの問題として捉えられてるのかな?なんて思ったんです。Jesse James Garrettの5 Planes Modelだったり、ISO9241-11によるユーザビリティの定義に含まれる有効さ、効率性、満足度といった評価ポイントなどについても書いたので、Webユーザビリティ=ユーザーインターフェイスの問題ではないことはわかっていると思いますが、もしかしたら、まだ、Webユーザビリティがユーザーインターフェイスだけの問題だと考えているデザイナーさんとかいるのかななんて思ったりもしました。もちろん、単なるタグなので、覚えやすいようつけている可能性が高いのでそうでないとは思いますが、あらためて、なぜ、Webユーザビリティが単にユーザーインターフェイスの設計の問題ではないかをいくつか例をあげて紹介しておきましょう。
ユーザーインターフェイスはユーザー側で変更できる
まず、何よりWeb標準に準拠した形で実装されたWebページであれば、ユーザー側でユーザーインターフェイスを比較的自由に変更できますよね。この場合、「変更できる」という意味は「変更しても読みやすい」もしくは「変更したらさらに読みやすい」という意味で、テーブルレイアウトのWebページでももちろん変更は可能です。変更できるのは、文書構造と見栄えのコントロールがHTMLとCSSに分離されているからで、例えば、OPERAのWebブラウザにある「ユーザースタイル」を使えば、簡単に「擬似テキストブラウザ」表示に切り替えることができます。というか、単にCSSを切った状態で読むことなら、FIREFOXの拡張機能にWeb Developerだとか、InfoaxiaのWebアクセシビリティ・ツールボックスを追加すればできますよね。
以下、OPERAの「ユーザースタイル」による当ブログの見栄えの変更例。
デフォルト状態

CSSを無効にした状態(「ユーザースタイル」への切り替え)

「擬似テキストブラウザ」表示

「アクセシビリティ」表示

つまり、何をここで示したかったかといえば、ユーザーインターフェイスはきっとこれからもっとWeb標準化が進めばユーザー側で自由にカスタマイズができるようになるだろうってこと。
すでにGreasemonkeyを使えば、設計上の不具合を取り除いたり、広告を排除したりできるわけだけど、これはちょっと一般ユーザーにはハードルが高い。
でも、これがOPERAの「ユーザースタイル」のようにブラウザ側で、まるで自分のブログのテンプレートを選択するみたいに自由にユーザーインターフェイスが切り替えられるようになったらどうでしょう?
そうなると、どんなWebページも自分の選んだテンプレートで見ることが可能になるので、ユーザビリティで重視される「ユーザーによる学習」だとか「サイト内でのデザインの統一性」とかって問題にならなくなりますよね。だって、いつもおんなじもので見るようになるんだから。
RSSリーダーでの閲覧
1つはここまで見てきたように、Web標準準拠+ブラウザ側でのスタイル変更という流れが、Webユーザビリティが単にユーザーインターフェイスの問題ではないことを示す1つの理由かなと思うんですが、もう1つ考えられるのは、RSSやAtomなどのフィードによる影響かな。
そう。こういうことです。
RSSやAtomなどのフィードに、コンテンツの全文が含まれていれば、ユーザーは別にフィード発行元のサイトを訪れる必要はない。これはもうRSSリーダーを使ってる人なら普通にやってることですよね。
で、これも場合によるとは思うけど、意外とRSSリーダーで全部読んじゃったほうが読みやすかったりする。「ユーザーによる学習」とか「サイト内でのデザインの統一性」とかがすでに実現されてしまっている効果なんでしょうね。バラバラのユーザーインターフェイスをもった個別のブログで読むより、RSSリーダーの統一されたユーザーインターフェイス上で読んだほうが読みやすいという。もちろん、読みやすさだけがユーザビリティではなくて、違う見た目を楽しむことが満足度につながることもあると思うから、一概にどちらがユーザビリティがいいという話ではありませんけど。
5 Planes Modelの各planeごとにユーザビリティの課題はある
前に「Webサイトの内と外」というエントリーで、(前略)ページ単位のページビューが多いページは、外部から閲覧している割合が高くなる傾向があるのが見えてきています。つまり、それは内部リンクより外部リンクが有効に働いているということとも考えられます。
極論をいってしまえば、サイト内のナビゲーション機能がなくなっても、サイト全体のページビューはそれほど失われない可能性があります。いや、単にページビューの数字を見るだけならきっとそうなるでしょう。
なんて書きましたが、例えば、RSSリーダーでのコンテンツ閲覧などを考えると、ナビゲーションが必要ないというより、単にないわけです。
見た目がユーザー側のコントロール下におかれるとなると、5 Planes Modelでいうところの一番上の層"Surface"は完全にサイト設計者のコントロールの外に置かれる可能性が出てきますし、ナビゲーションがないことも踏まえると、その下の"Skelton"におけるナビゲーション・デザインもコントロール外になります。それでも文中のテキストリンクなどは残りますので、そこに設計者の意図を含めることは可能でしょう。
そんなことを考えてみると、やっぱり5 Planes Modelの各planeごとにユーザビリティの課題はあるんじゃないかと思えてきます。RSSリーダーでの閲覧を想定しても、どういうカテゴリー単位でRSSの取得を可能にするかという問題は、"Structure"に関する問題ですし、さらにどういうコンテンツを発信するかだとかは"Scope"、"Strategy"に関わってくる問題ですし。
そんな風に思うと、Web政策の現場で、IAだったり、もうすこし上流のWeb戦略やスコープをきちんと定義できる人材が不足してるのかななんてことも考えますね。
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