尺度:Webマーケティングの効果測定を見直す

Webでマーケティングを行っている企業担当者はあまりコンバージョン率みたいな尺度に惑わされすぎないほうがよいのではないかと思います。

ちっぽけな惑星がちっぽけな恒星のまわりを回った数

宇宙は150億年かけて今の状態になったのだが、この人間の決めた無意味な単位-ちっぽけな惑星がちっぽけな恒星のまわりを回った数など関係ないではないか-で測って比較的短い期間は、もっと基本的なプランク時計ではおよそ10の61乗秒というとてつもなく長い時間になる。
ピーター・アトキンス『ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論』

当然、年という時間の尺度は、僕たちが普通に生活するのに便利な時間だからこそ役に立ちます。しかし、上の例のように宇宙の誕生からの歴史を見る場合にはあまりに不適切だったりします。

宇宙がプランク温度よりも冷えると、重力が別の力として分かれた。残りの2つの力はまだ同じ力で、質量のないボソンによって伝達されていた。それからしばらくは特段の変化はなかった。正確に言えば、プランク時間が100億回時を刻むあいだ、つまり、われわれの数え方でビッグバンから1兆分の1の1兆分の1の、そのまた10億分の1秒(10の-33乗秒)が経つまで、電弱力と強い力は同じだった。人間が使うのろまな時計の秒で語るのは、誤解を招きやすい。人間の時計は人間に便利なようにできている。だから、市庁舎の壁にかかった時計の秒は、宇宙が非常に若くて熱くて高密度だったときの事象を論じるのには向いていないのだ。
ピーター・アトキンス『ガリレオの指―現代科学を動かす10大理論』

同じように、ちっぽけなページへのリンクをクリックした人がちっぽけな買い物をした割合を測るコンバージョンレートなるものは、きわめて単純なSEOやSEMの効果を測る際には向いているかもしれないが、該当するコンテンツなり、ページの目標が異なる場合の効果を論じるには向いていません。

バランススコアカードの戦略マップ

僕たちは、Webでのマーケティング施策などを考える際に、バランススコアカードの戦略マップを用いて、最終的なサイトの目的を達成するためのパフォーマンス・ドライバーを、

  • 財務の視点
  • 顧客の視点
  • 業務プロセスの視点
  • 学習と成長の視点

に分解してそれぞれの目標値と測定方法を決めたりすることがあります。
当然、効果測定を行うためには、何を目的としてどんな施策を行い、それをどんなものさしで測るのかを決めることは重要で、そうでなければ何を測っているのかわかりません。

基本的に測定値にも測定法にも絶対的な答えなどないわけで、あるのは現状とあるべき姿のギャップ分析だったり、あるいはベンチマークとしている競合と自社のギャップ、はたまた顧客の期待値と現状提供できているサービスの満足度とのギャップなど、あくまで相対的な差異でしか測れないのが、マーケティングに限らずビジネスシーンでは多いでしょう。
そこに絶対的な測定方法としてコンバージョン率みたいなものを想定してしまうのは、ゾウの体重をキッチン用の秤で測ろうとするようなもので無意味です。

また、同じ意味でサイトの目的が売り上げを上げるためだったとしても、すべてのページをコンバージョンで測ってしまうのもおかしくて、AIDMAでもAISASでもどっちでもいいんですが、Actionにつなげるには他のプロセスのために用意されたページも当然あるわけで、それをすべてActionにつながったかどうかのものさしでしかないコンバージョン率で測ってしまうのは、どう考えてもおかしいわけです。

情報発信の効果はどうして測らないの?

もう1つ付け加えるなら、Webマーケティングをある時点で存在する静的なページのリスト(ストック)で測ろうとするのもおかしな話で、「信用できる企業サイトは? 情報量が多い:77.7%、更新頻度が高い:69.9%」のエントリーで紹介した下記のグラフのような調査結果をみれば、Webマーケティング戦略として、定期的な情報発信(例えばブログを使うのもその1つの手段)によって企業あるいは商品に対する信頼を高めることで、購入を促すような戦略をとる場合、おそらく測定のものさしは更新の度合いに対していかに購入頻度や購入額に変化があったかだったり、どの情報が最も効果につながったのかといったことだったりするでしょう。



まぁ、多くのサイトがリニューアルしたらそれっきりでほとんど情報更新を行わなかったりするので、そうした測定値があまり見受けられないことは理解できるんですが。

情報発信の効果はどうして測らないの?

そんなこともあるので「「ウェブ戦略としての「ユーザーエクスペリエンス」―5つの段階で考えるユーザー中心デザイン/Jesse James Garrett」でも紹介した、戦略~要件~構造~骨格~表層の5つの段階からなる5 Planes Modelが見直されるべきかなと思うわけです。この5 Planes Modelの射程範囲は、あくまでWebの構築であって、Webの運用は含まれていないので、その点はきっちり理解しておくことが大事ですが、はじめに戦略を定義することから構築をはじめるアプローチは、後の効果測定を要件~構造~骨格~表層と結びつける意味でも重要だったりします。

バランススコアカードの戦略マップと5 Planes Modelの組み合わせって、ビジネスとWebサービス(サイト)の目標と効果測定を結びつける上でとてもわかりやすいモデルを提供してくれるものだなって思っています。

  

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