これって昨日の「組織的現象としての"相"、そして、市場動向」で書いた「人が集まるクラスターをよりダイナミックなものとして捉え、セグメントではなくネットワークによるつながりで形成されたクラスターに対し、どうすればウイルス的に情報が蔓延し、相転移が生じるか?といった発想でプランを組み立てる」ってことに見事に通じると思うんですが、その前にSMOって何?っていう人もいると思いますので、まず、そこから。
SMOって何?
無視することができないくらい多くなってきたCGM(ブログやSNSなど)、ソーシャルブックマーク、RSSアグリゲータ(リーダー)からのトラフィックをなんとか自社サイトに呼び込もうとすることを狙って、いろんな意味で最適化を行うのがSMOって定義することができると思います。例えば、こんな風に、はてなブックマークへのブックマークボタンを追加したり、
(参考:増えてきた「はてブする」ボタン)
他には、
- RSS/Atom Feedの配信を行う
- 記事単位でPermalinkを用意する
- コメントやトラックバックを用意する
- ブログパーツやYouTubeの動画コンテンツ、Amazonのアフィリエイトのように、ユーザーが自分のブログに気軽にはったりできるものを用意する
- 有益な資料のダウンロードができるようにする
- 何よりコンテンツをユーザーにとって価値のある者にする
などが挙げられるでしょうか?
ようするに、Webサイトに人を集めたければ外部とリンクでつながっていることが必要なわけです。SEOだって、結局はリンクの数を増やすことですよね。
SMOはそれをもっと広範囲に、一般のユーザーまで巻き込んで、どうぞうちのサイトにリンクしてくださいっていうのを、ユーザーに負担を軽減したり、ユーザーがリンクしたくなる仕組みをおいてみたり、コンテンツ自体をよくしてブックマークしたり、RSS登録されるようにしたりといったやり方で行うことだと思います。
でも、よく考えてみると、これって普通のブログだと当たり前にできている機能なんですよね。その意味では、結局、SMOって何なのって考えると、Webサイトをある意味で、「ブログ化」することなんじゃないの?って思うわけです。
『マーケティング2.0』で、シックス・アパートの関さんが「わたしは日頃からブログはウェブそのもだと考えています」って書いてましたが、まさにSMOを行うのって「ウェブをブログ化する」ことだと言ってしまっても、それほど間違いじゃない気がします。
SMOって効果あるの?
じゃあ、SMOって本当に効果あるの?って話に当然なるわけですけど、SMOが「ウェブをブログ化する」ことだとしたら、それは効果があるといえると思います。だって、ブログ・マーケティング自体がこれまで注目されてきて、それなりに成功例もあるわけでしょう。じゃあ、その拡張版ともいえるSMOだって効果があると考えるのは、それほど、間違った考えではないと思います。ブログ・マーケティングの事例をここでお見せすることはできませんが、代わりにといってはなんですが、このブログのアクセス数の変化などであれば公開することは可能です。
マーケティングに近い数字の効果を示すなら、このブログで行っている、Amazonアフィリエイトでの売り上げの推移を示せば、よいでしょうか?
現在、2006年の7-9月の第3Qに入っているわけですが、現在までのところ、その売上額は前期の4-6月の第2Qの倍額となっています(発想済み商品数は現時点で163点)。その第2Qの売上額も実は僕がAmazonアフィリエイトをはじめた2006年の第1Qの倍額を超えるものでした。つまり、3ヶ月ごとに売り上げが倍になる推移をここまでは示しているわけです。このまま倍々ゲームの推移が続くとは思えませんが、それでもブログを続けていれば、こうした効果を出せるのは事実です。
アクセス数の推移
当然、アクセス数のほうも継続的にブログを更新していくと伸びていきます。下のグラフは、このブログの約3ヶ月間のアクセス数の推移を示したものです。ユニーク訪問者数(棒グラフ、左軸)とページビュー数(折れ線グラフ、右軸)になります。
2箇所ほど、訪問者数とページビューが跳ね上がっているのは、この2つのエントリーがはてブで大きな話題となったときのものです。(参考:企業のWebマスターのための「せめこれ2」)
そのエントリーを境に、その後のアクセス数が上積みされている傾向がなんとなく見て取れるかと思います。こうした傾向も僕がSMOは大事だなと感じる理由だったりします。
訪問者数のほうがこのグラフだと徐々に上昇しているのがわかりづらいので、1週間ごとの移動平均のグラフも作ってみました。
すこしずつ日別の訪問者数が伸びているのがおわかりになるでしょうか?
RSS登録者数の推移
アクセス数が伸びている原因の1つは、RSS登録者数もまた徐々に上昇傾向にあるからです。下のグラフは、上のアクセス数のグラフとほぼ同時期の3ヶ月間のRSS登録者数の推移を示しています。
livedoor readerの伸びがあまりに大きいので、グラフだと他のリーダーの伸びがそれほど読み取れませんが、ここ3ヶ月間でそれぞれ、
- livedoor reader:500.0%
- はてなRSS:415.6%
- Bloglines:222.7%
- feedpath:153.9%
といった増加傾向を示しています。4つの合計でも322.2%の増加です。
リーダーごとに伸びが異なるのは、このブログとそれぞれのリーダーを使っているユーザーの相性みたいなものもあるでしょうけど、やっぱりlivedoor readerがこれだけ伸びているのは、livedoor readerがいま一番アクティブなリーダーなんじゃないかとも思います。
外部サイトからの参照
先ほど「Webサイトに人を集めたければ外部とリンクでつながっていること」と書きましたが、では、このブログに外部サイトからどれだけ人が訪れているかを示したのが次のグラフです。外部参照元の上位10サイトをグラフ化しています。対象となる期間は直近1ヶ月で、数字はこれまで示してきたグラフと使っているログ解析ツールが異なるので、若干のズレはあると思います。
見ておわかりのとおり、GoogleやYahoo!に混じって、SMOがターゲットにしているようなソーシャルブックマークやRSSリーダー、ブログなどのサイトが多く混ざっているでしょう。推測でしかありませんが、(deirect)とされる中にはFIREFOXなどのブラウザ型のRSSリーダーからのアクセスも含まれているのではないかと思います。
何より注目したいのは、これだけSEOがもてはやされているにも関わらず、こうやってブログのアクセス数をみると、それ以上にソーシャル・メディア系のサイトからのアクセスが多いということです。このことは前にも「SBMやRSSリーダーからのアクセスを増やす」というエントリーで書いていますので、参照していただけると幸いです。
SMOって効果あるの?
なんとなく、SMOって効果がありそうだな、SMOって大事だなってことが、こうした数字をみて感じ取っていただけたのではないかと思います。SMOという言葉が、ソーシャル・メディア最適化を意味するので、どうもメディアをターゲットに最適化しているように思われるかもしれませんが、ブログやSNSをはもちろん、ソーシャル・ブックマークにしても、RSSリーダーにしても、そうしたソーシャル・メディアを動かしているのは、ひとりひとりのユーザーです。
それゆえ、繰り返しになりますが、「人が集まるクラスターをよりダイナミックなものとして捉え、セグメントではなくネットワークによるつながりで形成されたクラスターに対し、どうすればウイルス的に情報が蔓延し、相転移が生じるか?といった発想でプランを組み立てる」ことがSMOでは非常に大事になるのかなと思うわけです。
『マーケティング2.0』で清田さんが書いていた「「顧客」は消費者ではないのです。顧客はわたしたちとともに、フローを起こし、変化を生み、相互作用し、価値を作り上げていく人々です。ですから、むしろ生産者なのです。ダイナミックに変化するこのネット世界での、情報生産者。その意味で、わたしたちと同じ立場です」という言葉がここでも思い起こされます。
SMOなんていうと、なにかまたむずかしい言葉がでてきたなとか、またバズワードかと思う方もいると思いますが、結局、本来のマーケティングが重視していたはずの顧客との会話や共創を実際に行っていく、むしろ、伝統的とさえいえる考え方なのかなと強く思います。
ところで、企業のWebマスターのための「せめてこれだけは使っておこう」から早3ヶ月。企業のWebマスターさん、ご自身でブログなどを使ってみて、いまのネットの感覚をご自身で体験することはできたでしょうか? できていない? 3ヶ月といえば結構な時間です。Amazonのアフィリエイトの売り上げも倍になるくらい!
それじゃあ、SMOを理解することもできないかもしれませんね。
いくら伝統的とはいっても、そこにはニュートン物理学と量子力学くらいの違いはあるのですから。
量子論の何たるかを知っていると言う人は、量子論を理解してはいない。リチャード・ファインマン
P.S.
関連エントリーとして「SMOに関する補足」をアップしました。ご参考に。
(2006/09/16 14:52追加)
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