フローの空間

この言葉が妙に気になっているんですよ、最近。

新たなグローバル都市自体が、場所であると同時にプロセスとなる。人々は今なお場所において暮らしているが、機能や権力が組織されるのはフローの空間なのである。
デイヴィッド・ライアン『監視社会』

結局、最近のエントリーでベキ法則対数などをつかって、Webまわりの動きを追っているのも「フローの空間」というのをすごく意識しているからだったりします。

昨日も「対数の世界でのマーケティング」の中で触れましたが、「ベキ分布にしても、これまで書いてきたように実は昔から存在はしていたわけで、ただ、その極度なバラつきは正規分布のような世界に慣れ親しんだビジネスシーンではマネジメントのしようがなかった」けれど、だんだんとネットやITの技術が進歩する中で、これまで見えなかった微細な流れの集まりが可視化されはじめ、「見えていればその流れにうまくのって、ユーザーの動きに自分たちの動きを重ね合わせることでマネジメントすることは可能になります」といえるくらいにはなってきているように感じます。

フローの空間の情報デザイン

その意味では、サイトという閉じた「場所」だけ眺めていてもダメで、インターネットというネットワークの流れの中のサイト、あるいはユーザーの情報収集、コミュニケーションのプロセスの中のサイトという風に見ないと「フローの空間」はつかめないと思っています。
そして、フローとかプロセスとかいうだけあって、それは単なる空間ではなく、時空間的なものだったりします。

情報デザインという際も、単に情報構造を決めたり、見栄えや振る舞いを決めるような静的デザインだけでなくなるでしょう。当然、DB設計もあれば、運用設計ということも時空間という視点で情報デザインを行うことは必要だし、CMSを基本としたWebサイトとCRM、ERP、さらにはAdwords運用・効果測定ツールやアクセスログ解析ツール、エンタープライズ・サーチなどとの統合を考えたデザインを行うとなると、どこに何をどう置くというだけでなく、どの情報が次にどんな情報を生み、それはどこに格納して、誰がその情報を何のために扱うのかといったあたりまで含めてデザインする必要がでてきます。

ベキ分布の世界での「予測」

『経済物理学の発見』でもベキ分布の世界での「予測」について触れられていますが、
フローの空間の新たなフレキシビリティーや流動性からいかなる利便性がもたらされようとも、当のフローが伝達するのは、対象の活動のモニターを追跡する、個人やプロセスについてのデータなのである。だが、それだけではない。速度はかくも枢要になると、現時点で何が起こっているか知るだけでなく、何が起ころうとしているか予測することも死活的になる。
デイヴィッド・ライアン『監視社会』

予測のためには、当然、ある程度、自動的なデータの収集~分析~行動が可能な仕組みの設計が必要になるわけです。それを監視といっても、モニタリングといってもよいわけですが。

興味の落としどころとしては「インタラクション・デザイン:行動とフレーム」だったり「情報の樹の根っこ」だったりと関連するWebデザインまわりやこれからのマーケティング・システムみたいなものになるんだろうと思います。
落としどころも、明日できることと1年後、数年後にやれることという風に、分けて考えたほうがよいだろうなと思っています。

なんか4ヶ月ほど、名古屋で暮らしていましたが、そのあいだにずいぶん、東京の状況は変わっていたようです。

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