対数の世界でのマーケティング

ロングテールと口コミ」などで、ベキ分布を表現するのに、両対数グラフを使ってきましたが、そもそも対数というのがあまり馴染みがないもののようです。
対数そのものの説明に関しては、以下のページを参考にしていただくとして、


このエントリーでは対数をつかうと何が便利かということを簡単に紹介しておくことにします。

掛け算を足し算のように扱える

まず、よく言われるのは、対数をつかうと掛け算を足し算のように扱うことができるということです。特に大きな数の掛け算だとこれが便利です。

(前略)数値があっという間に大きくなってしまうので、そのままではじつに理解しづらい。対数は、そういう現象の数値を小さく置き換え、足し算的に変化する現象に替えてくれるのである。たとえば、10の掛け算でどんどん大きくなる現象が、1の足し算でゆっくり増える現象に置き換えられるのである。
畑村洋太郎『直観でわかる数学』

100,000×10,000,000は?といわれてもすぐに計算できません。
でも、これが10の5乗×10の7乗だとわかれば、5と7を足すだけなので、答えは10の12乗だとわかります。
10を底にする常用対数は、log10=1、log100=2、log1000=3、・・・という具合に、0の数を数えたものが真数となるので、それこそ、上のような足し算が可能になるわけです。
これは慣れてくると結構便利です。

時間感覚が変わる

次は上の応用みたいなものですが、常用対数を使うと、膨大な数を直感的に扱えるようになります。
先のベキ分布の場合も、自然数表現だとあまりにヘッドの部分が大きいため、テールの部分の値がどんな風に散らばっているか把握できませんが、両対数グラフを用いることで、そのバラつき具合が把握できました。

同じように、地質年代のような長い歴史を見る場合でも、対数表現は役に立ちます。

歴史年表というのは、現代に影響する事件の量ではかるので、現代に近いほど、10年の寸法が長くなる。こうした意味では歴史の時間は均質に流れていない。まして、共通の尺度である人間の生のない時代を考えるとなると、これは対数直線が自然なのである。
森毅『指数・対数のはなし―異世界数学への旅案内』

例えば、こんな歴史年表を想像してみてください。

項目年代(~年前)
地球の誕生4,600,000,000
原核生物の誕生3,900,000,000
真核生物の誕生1,200,000,000
多細胞生物の誕生700,000,000
眼の誕生(カンブリア期の大爆発)543,000,000
恐竜の誕生250,000,000
恐竜の絶滅65,000,000
ホミニド(ヒトとチンパンジーの共通祖先)の誕生6,000,000
アウストラロピテクスの誕生4,500,000
ホモ・エルガステルの誕生1,800,000
ホモ・エレクトスの誕生1,000,000
ホモ・ハイデルベルゲンシスの誕生500,000
ホモ・サピエンスの誕生300,000
ホモ・ネアンデルターレンシスの誕生250,000
メソポタミア文明の誕生5,000
キリスト誕生2,006
Google誕生8

これを普通に自然数であらわした直線上にプロットしようとすると、下のようになって、右側の部分に位置するヒトの歴史はあまりに重なりすぎてしまい、何がなんだかわからなくなります。



しかし、これも対数表示した直線の上にプロットすると、ほら、このとおり。



なんと10年にも満たないGoogle誕生のシーンまで、地球誕生と同じ直線に並べることができるようになります!
これってちょっと感動的じゃないですか?

対数感覚でのマーケティング・マネジメント

最近、思うのは、これまでのマスマーケティングの時代と、これからのWebも含めた情報社会、ネットワーク社会におけるマーケティングの時代の違いって、こうした対数表現によってはじめて見える世界に代表されるような違いなんじゃないかって感じます。
ベキ分布にしても、これまで書いてきたように実は昔から存在はしていたわけで、ただ、その極度なバラつきは正規分布のような世界に慣れ親しんだビジネスシーンではマネジメントのしようがなかった。それこそマネジメントするには、大きな声を出してコントロール中心のマーケティング・マネジメントを行うしかなかったんだと思います。

それがネットによって、数字が見えるようになった。ユーザーの動きがAmazonやGoogleのように膨大なデータを保持しているところでは見えるようになった。こうなるとベキ分布が手の内にはいるわけです。見える化されたわけです。結局、それがロングテールと呼ばれたり、Web2.0と呼ばれたりするのではないでしょうか?

もちろん、相変わらずバラつきは尋常ではないので、コントロールはできません。しかし、見えていればその流れにうまくのって、ユーザーの動きに自分たちの動きを重ね合わせることでマネジメントすることは可能になります。このあたりがわかっていないと、口コミだ、オンラインマーケティングだといっても、何にもならないんじゃないかと思い始めてきています。
そして、非線形なベキ分布の世界はようやく見え始めたばかりです。
まだまだ、裸眼では見えてこない対数的世界の不思議が隠れているはずです。
そのためにもこれからは対数的視野をより磨いていかなくてはいけないのかなと思っています。

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