2011年09月05日

King Of Vintage Vol.3 : Heller’s Cafe Featuring Larry’s Collections Part 2

ついに出ました。待ちに待ってました。
先日9月3日の土曜日に『King Of Vintage Vol.3 : Heller’s Cafe Featuring Larry’s Collections Part 2』が発売されました。

前作の『King of Vintage No.1:Heller’s Cafe』が販売後まもなく完売したという伝説をもつ、アメリカにおけるヴィンテージクローズディーラーの草分け的存在であるラリー・マッコインの膨大なコレクションを紹介する写真集の第2弾です。
今回も前回同様、ラリー氏のコレクションの中から厳選された218点の激レア・アイテムが並んでいますが、そのほとんどが19世紀後半から1940年代くらいのきわめて古いワークウェアでどれも個性的な表情をしていて魅力的です。

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ラリー・マッコイン氏は、シカゴにHeller’s Cafeというショップを構える世界ナンバー1といわれるヴィンテージウェアのディラーです。日本では、WAREHOUSEとのコラボレーションで展開する同名ブランドヘラーズカフェ Heller’s Cafeでも知られています。

掲載されるヴィンテージをリプロダクト

僕にとってこの本の魅力の1つは、自分でも着ることのできるリプロダクトされたもののオリジナルのヴィンテージウェアが掲載されていることです。

例えば、この珍しいスタンドカラーのカバーオールもそう。

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先にも書きましたが、この本に掲載されるヴィンテージウェアって、19世紀後半から新しいものでも1940年代のものなので、70年〜100年以上前のものだったりするわけです。このカバーオールもスポケーンドライグッズカンパニー社が作っていたもので、20世紀初頭のものです。
つまり、約100年前に作られたワークウェアのリプロダクトで、デザインだけでなく縫製なども今のものとは違って、そこに気付くと面白い。
このカバーオールも40年代以降のものと比べるときわめて作りはシンプルなんですが、ポケットの生地が横使いだったり、そもそも生地の緯糸が通常の白ではなくグレイのサルファ染め糸と生糸を撚り合わせた撚杢糸を使用していたり、縫製はすべて一本針のミシンで縫われていて、巻縫いになった部分も糸が平行に走っていなかったりと、非常に面白い作りになっています。100年以上前のものなので古いんですが、それが逆に今となっては新しいというわけです。

それから、こちらのストライプのパンツになると、さらに古く、なんと1880年代のもの。そう。130年も前のパンツです。

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アメリカ北東部のミシガン州グランドラピッズ市にあったクロージングメーカーのタグが付くストライプのワークパンツです。本来ウールの生地を使用して仕立てるパンツを当時は比較的安価であったコットン地で代用して作ったもので、当時のワーカーはこれを新しいときは社交用として着用し着古すとワークウエアとして使ったそうです。
バックはワンポケットで、バックルバックで腰のあたりが大きくV字に割れたデザインも特徴的ですが、何よりこのパンツの特徴は撚杢のランダムストライプ生地です。今ならこんな複雑な生地ってコストがかかってなかなか作らないよなと思えるような生地がワークパンツに使われているのがすごいと思う。
ほかにもシャツでもパンツでもこの時代のものって、いまではとても大量生産できないような手の込んだ縫製がされていて驚くと同時に、とても魅力的です。

ヴィンテージクローズに注目が集まることの意味

さて、このヘラーズカフェやウェアハウスなどのリプロダクトブランドに限らず、世界的にヴィンテージクローズに注目が集まっています。でも、それっていわゆる流行とは違うのだろうなと思っています。
むしろ、新しいということ自体にかつてのような価値がなくなってきていて、それは過去のものも今と同じようにアーカイブし検索できるようになった時代背景に大きく関わっていますし、そもそも、それが印刷革命以降、人類が追求してきた情報化技術のひとつの成果なわけです。
それはまったく衣服に限らない話で、これだけ情報のアーカイブ力とその検索・閲覧のツールが整備され、かつプロダクトそのものに関しても過去のものをリプロダクトする製造力があがっている中で、新しいとかどうとかはとっくに価値はなくなってるわけです。
このことについては前に「猛スピードで積み重ねられる過去と不確定な未来に板挟みにされてすでに虫の息である現在において、新しさも懐かしさも感じられなくなった社会で僕らはどうしていくべきか?」という記事も書いているので繰り返しません。
とにかく、この本を読む場合も僕はマクルーハンやスタフォードの問題意識の延長線上で読んでいるわけです。

と、まあ、そんな流れの中、そもそも衣服を流行で売ろうとしていること自体が流行遅れになってきているということに、洋服屋さんは気づかないとダメでしょって思ったりしています。情報化する時代の流れを無視して、今後も流行という戦略でしか、モノを提案できないのだとしたらファッション業界ってシュリンク、弱体化するだけなんじゃないでしょうか?なんてことを思ってみたりもするわけです。
繰り返しますが、それはファッション業界に限ったことだけでなく、新製品をベースに流行の流れを作っていこうとするマーケティングすべてにいえることなのでしょう。

そんなことを考えさせてくれるのが、この本に掲載された100年近く前の魅力的なヴィンテージクローズたちなんですよね。それは僕にとっては民藝品と同じような魅力として映るんです。

posted by HIROKI tanahashi at 23:00| | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする