個人間の会話と信頼の確立はWeb2.0によるビジネスの変化をもたらすのか?

ちょっと考えた。
他人を動かすということ」と「他者に対する想像力(ブログを書く上での責任)」の2つのエントリーの共通項について。

両方とも他人(他者)に対してどういう配慮を行うか、そして、それが自分の行動(仕事、言論)にとってどのような関係性を持ち、行動する上でどんなことを考慮し、それが自分の行動上の責任にどう影響してくるかという点について書いているエントリーです。

ブログによる会話

ブログは明らかに個人の人柄、考え方をいかに本人が誠実に、そして、情熱をもって語るかによって、読んだ人の反応が変わってくるツールです。
そして、それはあとで書評を書こうと思っている『ブログスフィア』でも何度も語られているように、他者との会話を物理的/時間的制限を越えて実現してくれることを可能にするツールです。
それは普段の知人や会社の同僚、家族といった面と向かってできる会話とも違うし、マスメディアから流れるキレイに加工されたメッセージとも違うものです。
とはいえ、どちらに近いかといえば、おそらく前者に近い。
それはネットワーク理論でいわれるところの「弱いつながり」の間で繰り広げられる、ひとりの人間同士の会話を可能にするツールです。
それで家族や友人のようには完全に仲良くなり、信頼しきることはできないまでも、ある程度の親しみや信頼感を書き手と読み手の間に芽生えさせてくれるには十分なツールだと思っています。

Web制作やシステム開発の現場での会話

一方、仕事上の人と人とのつながりでも同じようなところがあるのではないかと思うのです。
特にWeb制作やシステム開発のように、異なるスキルをもった個々人が力をあわせて行うような仕事においては、それがたとえ家族や友人同士のそれには及ばないまでも、やはり、いっしょに1つのプロジェクトを推進する上での互いの信頼感、親しみは絶対に必要になってくるものですし、お互いに相手の仕事に配慮するようなやさしさも必要になってきます。
当然、そうした関係をつくるのは、契約うんぬんのレベル、会社同士の関係うんぬんといったこととはまた違う個人間の会話がなくては成り立たないと思うのです。
私も昨日まで4ヶ月間、名古屋で仕事をしてきた中で、男女それぞれ1人ずつ、仕事上の関係ということを抜いても信頼や親しみを感じられる人に出会うことができたと感じています。
会話のできた期間はそれぞれ異なっても、やはり、その2人とは普通の人間同士の会話ができたからだと思うのです。
プロジェクトそのものは決してお世辞にもうまくいったといえないものでしたが、その2人に出会えたことは今回得られたものの中でも自分にとってはとても大きいものでした。


個人間の会話をベースにした信頼モデル

そんな頭の整理をしていて、さっき思ったのは、このWeb2.0と呼ばれる現在のWeb環境の変化によってもたらされるビジネス上の変化の1つはこうした個人同士の会話をベースにした信頼の確立、親しみの構築という関係づくりによって可能になる、個人の力を活かした事業モデルがこれまで以上に可能になってくるのではないかということです。

個人と個人が物理的な距離や時間の制約を越えて、たがいに会話を行うことにかかるコストが非常に大きかったWeb2.0以前のコミュニケーション空間においては、いかにビジネスにおいて信頼や親しみが大事なことはわかっていてもそれを実現するためのコストはおそらくマスメディアなどを使ったコミュニケーションのほうが、個人同士で会話を成立させるコストより低かったんだと思います。

しかし、すこしずついろんな人が気づき始めたように、ブログやSNSなどによって個人間のコミュニケーションコストは劇的に低価格化しており、家族や同僚、友人などの限られた範囲を超えたより大きな範囲で、個人と個人の会話の中で信頼や親しみを生み出すことはむずかしくなくなってきています。
そうなると、マスコミュニケーションによって信頼や親しみを得ることでしか事業展開を行えなかった企業のビジネスモデルも変化してくる(あるいは変化させることができる)のではないかと思ったのです。
それこそが1.0と2.0の違いであり、企業において個人の力をどう扱うのかという姿勢に今後あらわれてくるのではないかと思うのです。

Web2.0という革命の本質

おそらくWeb2.0と呼ばれる革命の本質はここにあるんだと思います。
もちろん、そうした変化に誰もがすぐに馴染めるということは現実的にないのでしょう。
人にはきっと個人差があり、それを受け入れるのにかかるコストもそれぞれ異なるでしょうし、さらには企業という組織単位ではよりその変化を受け入れるためのコストは各企業で大きく異なるでしょうし、また、そのコストを払ってでも変化を行うかどうかの判断も各企業で異なってくると思います。

しかし、いったん、はじまった変化はおそらく止められはしないでしょう。
特にそれが信頼や親しみという人々が昔から求めていたものを得られるものであるのであれば。
さて、これから皆さん、どうしていきますか?

 

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