2006年07月28日

このヒトを見よ 02:内部と外部/境界線の相対性

Web2.0を語る言葉の1つに「サイトの垣根を越えたシンジケーション」というものがあります。
その言葉は、具体的には、APIをオープンにすることでマッシュアップを可能にしたり、RSSやトラックバックなどのXML技術によりサイト間の情報のやりとりを簡便化することによるつながりを指していたりします。

Web2.0という環境

私はWeb2.0というものを現在のWeb環境とそれを取り巻く外部環境そのものの変化を指す言葉だと思っています。
ですので、「サイトの垣根を越えたシンジケーション」に関しても、「サイトの垣根を越えたシンジケーション」を行うことよりも、「サイトの垣根を越えたシンジケーション」が行われる環境であること、そして、それによってどんな変化があったかを重視します。
私自身は、Web2.0とは何らかの技術を指す言葉でも、それが儲かるのかと論議する対象でもなく、そうした技術や新しい儲けのスタイルが確立される環境、そして、その環境の以前の環境との変化自体が、Web2.0であると捉えています。

儲けのスタイルと環境といえば、やはりSWOT分析を思い出します。

企業の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の全体的な評価をSWOT分析といいます。SWOT分析は外部環境分析(機会/脅威の分析)と内部環境分析(強み/弱みの分析)に分けることができます。
外部環境分析とは、企業あるいは事業単位が自らの利益をあげる能力に影響を与えるマクロ環境要因(経済、技術、政治、法規制、社会、文化)とミクロ環境要因(顧客、競合他社、流通業者、供給業者)の変化を観察し、関連する機会と脅威を見極めることをいい、内部環境分析とは、魅力的な機会において成功するコンピタンスが自社の内部にあるかどうかを強み、弱みとして評価することをいいます。

技術にしても、儲けのスタイルにしても、実は外部環境と内部環境の双方に関わるものです。
外部に技術はあっても内部にその技術を取り込めていなくては役に立ちませんし、儲けのスタイルも外部の環境に内部の環境の事業スタイルがマッチしたとき、はじめて機能します。

内部と外部の関係をいかに構築するかは、生物進化における自然淘汰においても基本となるものです。
つまり、いくら環境適応しようとしても内部にそのためのデザインを準備する下地がなければ進化は起こりませんし、いくら内部にデザイン変更の下地があっても外部環境に変化がなければ、デザイン変更は起こらないでしょう。



内部と外部

例えば、企業と外部(主に顧客)との関係を簡略化して図示すれば、こんな図が描けるのではないかと思います。

IO.jpg

米国マーケティング協会(AMA)の2004年8月発表によるマーケティングの定義では、「マーケティングとは、組織とステークホルダー(関与者)両者にとって有益となるよう、顧客に向けて「価値」を創造・伝達・提供したり、顧客との関係性を構築したりするための、組織的な働きとその一連の過程である」とされています。
※「「Amazon e託販売サービス」にみる新しいマーケティング発想」参照

上の図は、こうしたマーケティングの定義における「顧客との関係性を構築」を目指す内部、外部における「組織的な働きとその一連の過程」として捉えることが可能です。

また、この図を企業の内/外として捉えるだけでなく、他にも例えばWebサイトの内/外と捉え、Amazonの内部の検索性やレビューなどの機能と、アフィリエイトやオープンAPIなどの外部に提供された機能などの関係を考えてみることも可能です。
当然、自分という内部と、他人や組織、社会という外部をこの図をベースに捉えることもできるはずです。

あいまいな境界線

ただし、上の図でも、「境界線は可変かつ複数存在する」と書かせていただいたように、内部と外部を分かつ、境界線は場合や状況によって常に変化します。
あなたと私が内部と外部として対するときもあれば、あなたと私がともに他の第3者に対するときもあるでしょう。
組織の一員としての私、日本人としての私、ヒトとしての私、物質としての私。
そんな構図を図にすると、下図のような図を描くことも可能です。

border.jpg

パターン処理装置としての脳にとって、身体とそれ以外の世界はまったく変わらない。身体の末端とその先の世界の開始点は連続している。ところが、脳の内部には感覚がないので、新皮質は脳そのもののモデルをつくることができない。そのため、思考が身体から独立していて、心や魂が別個に存在するように感じてしまう。

例えば、私がしゃべっているとします。他人から見ると、私が知識をどこかから出力してきて、内部で変換し、それを出力しているという感じがするかもしれない。でも私自身から見ると、幻想の中でしゃべっているのと同じなのです。私は勝手なことをしゃべっている。夢の中にいるのかもしれない。夢か現実か、どちらなのか、自分で判断できない。誰でもそうなのです。どの生物もそうなのですね。

内部を脳に置こうと、私に置こうと、企業などの組織に置こうと、外部にあるものは環境です。
企業も生物も、環境によって変化を促されます。
前回、まわりが見えてない人のことを書きましたが、その意味でまわりが見えてないと危険なのです。

自然環境は生物に自然淘汰という進化を促します。
生物は自身の置かれた環境に適応するよう自身のデザイン変更を試みます。
それゆえ、内部が外部としてどんな環境に身をおくかは内部の行動やプロセスをある程度規定します。
論理環境、物理環境、自然環境、社会環境、市場環境、オフィス環境、生活環境・・・。

Web2.0環境も何者かの外部としてその者の内部を規定するとともに、Web2.0環境そのものの内部が社会環境や市場環境、そしてもちろん物理環境や論理環境の影響を受けます。

内部が外部の何かとつながれば、そこに新しい内部が発生したりします。
「サイトの垣根を越えたシンジケーション」によりつながってできた内部が、また別の外部と対立を生じることもあるでしょう。
すくなくとも1.0と2.0の隔たりのように。

そして、内部と外部の関係性や境界に変化が起こると、先のSWOT分析のように、外部をどう分析するかと同時に、内部分析として内部リソースの分析の必要性が生じるでしょう。

次回はこのリソースをテーマに書いてみようと思います。

posted by HIROKI tanahashi at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | このヒトを見よ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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