上位層の設計変更は外部で手助けできても、基盤となる基本設計だけは自分たち自身の手でデザインしていくしかないのではないでしょうか?と書いた箇所での「基本設計」がITシステムの構築における基本設計とダブってしまったようなので、いちお、それを意図していない点をここで補足。
上記のエントリー全体で、私が「基本設計」として想定しているのは、それこそ企業の存在そのものを維持するための基本設計でした。
例えば、ボブ・スリーヴァ氏の『ブランドデザインが会社を救う!』による3つの質問、
- あなたは誰?
- どこへ行きたいか?
- どうやって行くか?
あるいは、これとよく似た『トム・ピーターズのマニフェスト(1)デザイン魂。』のなかの
- あなたは何者なのか?
- あなたの目的は何か?
- あなたはどのようにユニークなのか?
- どうすれば圧倒的な違いを生み出せるのか?
- 誰が気にしているのか?(あなたは気にしているのか?)
あるいは、もうすこし具体的に、
- 事業領域は?
- 誰に何を提供するのか?
- どのような企業文化をもった組織を設計するか?
マーケティング戦略であれ、ITシステムによる改善であれ、こうした基盤となる基本設計ができていないと、どんなに優秀な外部の人間がテコ入れしようと躍起になったところで空回りするのがオチだと思います。
マーケティング施策やITの導入など、新しく上位層に加わる企業のプロセスのデザイン変更に対して、いかに柔軟に対応できるかは、企業そのものの基本設計が進化における生物の基本設計同様に、優れた設計となっていない限り、なかなかうまくはまらないというのが私の経験上いえることだったりします。
逆に基本設計がしっかりしている企業では、新しいものの導入への対応も柔軟で、導入後もうまく使いこなすことが多かったりします。
では、その基本設計がしっかりしている企業とはどういうものかを1つ具体的な例をいうなら、とにかく無闇に外部にたよったり、他人のせいにしたりしない文化がしっかり根付いている企業だったりします。
新たなことをはじめるのにも小さなところから担当者自身の力で責任をもってはじめ、不必要に外部の力も借りないし、人手が足りないからできないなんて泣き言はいいません。
人手が足りなくてできないことや外部の力を最初からあてにしたものがうまくいくかどうかがきわめて博打的であることを従業員の大部分が理解していたりする企業です。
先のエントリーで「基盤となる基本設計だけは自分たち自身の手でデザインしていくしかないのではないでしょうか?」と書いたのはまさにそういう意味でした。
補足になっていれば幸い。
この記事へのコメント
takahanomori
この点を指摘されたとき、
「自分たちは何者なのか」
を理解している医療従事者が
どれだけいるのか、
不安を禁じ得ません。
私自身も耳が痛いことこの上ありません。
私たちの世代は、
「医療はサービス業だ」とだけ
考えていることが多いでしょう。
それはそれでたぶん正しいのですが、
「医療は情報産業だ」と
気づいている人がどれだけいるのか。
以前のコメントで
「気づいている人は多いはず」と書きました。
でも本当に多いのか。
電子カルテがいまいちうまくいかない理由が
実はこんな根本的思想の欠如にあるような
気がしてきました。
作り手ではなく、使い手の問題なのでは
ないかと。
「情報は、だれかが扱ってくれるだろう」などと
他人事のように考えているのではないかと。
私が世間知らずなだけならよいのですが
ちょっと空恐ろしくなってしまいました。
gitanez
そんな時間にも関わらず診察を待つ患者さんはたくさんいて、当然、私も含めてどこかしら痛かったりだるかったりして訪れているわけですが、そうした患者へ気配りする余裕もなさそうな印象を受けました。
子供の患者がたくさんいて、熱を測ったりする際に泣くのですが、そういう様子を前にしても、落ち着いているというより、そもそも関心がないといった様子の看護婦さんをみて、ちょっと寂しい感じがしました。
そんなことがあった直後だったので、takahanomoriさんのいう「それどころではない」という言葉はなんとなく体感的に感じることができたわけです。
でも、そこでやっぱり思うのは、そういう状況を変えていくのは、自分達の努力によってでしかないということだったりします。
もちろん、現場のスタッフ個々がいくらがんばってもダメでしょう。
現場からのボトムアップであれ、経営側からのトップダウンであれ、組織的にがんばっていくしかないのだと思います。
医療に関しては門外漢である私がこんなことを書くのはもしかしたら不躾なことなのかもしれません。
でも、私自身が普段、生活/仕事をしている企業の現場では実際にここに書いたことが当てはまっています。
同じことがもしかしたら医療の現場でも当てはまるかもしれないなと思ったわけです。