11の次元:認知のツールとその対象

あまりに小さいものの存在に、私たちははじめから気づくことができません。
小さな世界に私たちの知らない次元が存在していたとしても、そのことに私たちはまったく気づかずに過ごすことができるのです。

私たちが3つの拡がった空間次元にしか気づかないからといって、それ以外に巻き上げられた次元が存在しないということにはならないのである。少なくとも、ごく小さいものならありうる。宇宙には目に見えない次元があってもおかしくないのだ。
ブライアン・グリーン『エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する』
実際に超ひも理論においては、私たちの知る3次元の空間(+1つの時間次元)のほかに7つの隠された次元が存在し、宇宙は11次元からなることを理論的には示しているそうです。

この超ひも理論が現代物理学においては、一般相対性理論と量子力学の矛盾を解消し、アインシュタインも夢見た宇宙の統一理論の解明に役立つのではと、物理学界では期待されています。

しかし、その対象となるもの(ひも)はあまりに小さすぎるようです。

しかし、「小さい」とは、どのくらい「小さい」のだろうか。最先端の装置は1メートルの10億分の1の10億分の1という小さな構造を検出できる。新たな次元がこの小さな距離よりも小さいサイズに巻き上げられていれば、小さすぎて私たちには検出できない。(中略)クラインの計算から、環状の次元の大きさはプランク長さほどでしかないことがわかった。これは、実験で検出できる限界にくらべてはるかに小さい。
ブライアン・グリーン『エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する』
ひもはあまりに小さくて、「1メートルの10億分の1の10億分の1という小さな構造を検出できる」最先端の装置を使っても検出できないそうです。

ここで再び、「セグメンテーションとターゲティング:誰が認知するのか?」でも使ったヒトの認知のツールの概略を示した図を見てみましょう。

認知とツール

考える脳 考えるコンピュータ / ジェフ・ホーキンス」でも書きましたが、「脳にとっては(少なくとも感情をもたない新皮質にとっては)、自分の手も、パソコンのキーボードも同じ外部ツール」です。「モニターに映る映像と、目の網膜に映った映像との違いは、新皮質にとっては意味ある区別ではない」のです。目や耳、身体といったツールと、パソコンや文字、自動車などの外部ツールとの違いは、前者が生まれたときからプリインストールされていて、後者は生まれたあとに個々人が必要に応じて獲得するものといった違いでしかありません。
そして、なぜ後者を獲得する必要が生じるかといえば、前者だけで可能な認知だけでは、足りなくなる場合があるからです。1ミリ程度の小ささなら目でも検出可能ですが、「1メートルの10億分の1の10億分の1という小さな構造」は外部ツールの力を借りなければ検出できません。
しかし、上記でわかるように当然、外部ツールにも認知の限界はあるわけです。

箸で分子やミジンコはつかめません
しかし、同じように箸では地球や太陽のような大きなものもつかめないのです。
認知はツールに大きく依存するということです。
しかし、忘れてはいけないのは、認知できないからといって存在しないということではないということです。
40億年前のことなんて想像できないからといって、そこで生命が誕生したことは事実としてあるのです。
同じく100年後には私たちの誰もが死んでいるからといって、きっとその時代にも人間の生活はあるわけで、「将来の世代が彼らのニーズを満たす能力を損なうことなく、現在のニーズを満たす」といったサステナビリティが課題とされるのはまさにそのためです。

私たちの限定された認知力では手の届かないものがたくさんある。だからこそ想像力をたくましくて、認知の限界を超えた理解を手に入れるために科学をはじめとする学問はあるのでしょう。
そして、いうまでもなく科学やほかの学問は外部ツールです。それは私たちの認知を拡張してくれますが、プリインストールされているわけではないので、個々人が努力して手に入れなければその恩恵にあずかることはできないものです。
より自分の認知力を高めたければやっぱり努力するしかないのです。

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