「情報の歴史」を考えるためのmemo

やさしさに包まれたなら」のエントリーにLongtailさんからいただいたコメントに、「「やさしさ」への感度が低下は、感度そのものを起動させるインフラの弱体化が原因ではないでしょうか?」と書かせていただいたのですが、インフラの強化のためにはまずきちんとそれが弱体化した歴史をおさえておく必要があると思っています。

情報の歴史

その歴史とはずばり「情報の歴史」です。
HII(Human Information Interface)を考えるにあたって、まずは情報の歴史を考える上でのラフスケッチとしてのmemoを残しておこうと思います。

生命情報が出現したのは、生命が発生した約40億年前です。しかし、社会情報が発生したのは、ホモ・サピエンス・サピエンス、つまりヒトという生物種が出現した十数万年前だと考えられます。そして機械情報が発生したのは、狼煙という原始的なメディアをのぞくと、文字が発生した約5000年前と考えていいと思います。
さらにいうと、地球が誕生したのは50億年前。
40億年前に発生した生物が、ようやく視覚情報を手に入れたのは、5億4300万年前のカンブリア紀の生物進化の大爆発の際です。
そして、約十数万年前に進化の過程で誕生したヒトという生物種は、哺乳類のみがもつといわれる脳の器官、大脳新皮質の面積をさらに拡大させることで知能を獲得しています。

西垣氏は社会情報と機械情報それぞれに対応する語として、コミュニケーション、メディアという言葉を定義していますが、ある時点で言葉を手に入れたヒトという生物が、知能の複製、蓄積、交換などのためのメディアとして、文字を手にしたのは、生物種誕生からもかなり経ったあとの約5000年前でしかないというわけです。

文字というメディアの歴史

インドの古典哲学、ヴェーダーンタ哲学で重要な価値をもつウパニシャッド作品が書かれたのが、BC600年頃からBC200年頃。
旧約聖書の最初の5つの書(「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」)の総称である「モーセ五書」は、BC4世紀頃には正典的な権威が与えられていたといわれています。
新約聖書の執筆時期は紀元32年から90年ごろで、それらが新約聖書としてまとめられたのは150年から225年ごろの間だとされているそうです。
ちなみに、日本最古の歴史書のいわれる古事記の献上は和銅五年(712年)のことです。

しかし、それ以前に、本ということでは、世界史上早期の図書館として、紀元前7世紀のアッシリア王アッシュールバニパルの宮廷図書館があったとされていますし、紀元前3世紀のアレクサンドリア図書館なども有名です。

時代はさらに下り、ヨハネス・グーテンベルクが活版印刷を実用化したのが1440年頃で、1455年頃にはグーテンベルク聖書が印刷されています。
グーテンベルクの印刷術により本が大量生産出来るようになってはじめて、図書館に「誰でも無料で」の原則が広まりはじめたとされています。

デカルトが1637年の著作『方法序説』を、母国語フランス語で書いたことから、フランス文学が社会に認められるとともに、デカルトの書いたフランス語をもとに、フランス語の標準化がフランスという国家の成立と同時に行われたように、近代初期の国家化の段階では各国が母国語の標準化、国内での統一をはかるのが18世紀です。
日本でも1868年10月23日の明治改元とともに、同様の動きが国内外に向けて行われるわけです。
それ以降の時期は開国による西洋文化の受け入れの時期でもあるのですが、英語の spirit が、「精神」という言葉と「酒精」という言葉に変換されたように、それは新たな漢字熟語をつくるという意味では、西洋化の時期であると同時に、中国化の時期でもあるということも可能です。

いわゆるメディアの歴史

1861年には日本初の新聞として官板バタビア新聞が刊行されたといわれています。1874年に讀賣新聞、1879年に朝日新聞がそれぞれ創刊されています。
ニューヨーク・タイムズの創刊は1851年、ウォールストリート・ジャーナルは1889年。
世界最古の日刊新聞はイギリスのタイムズで、1785年の創刊です。

最初の電気的情報の誕生は1844年5月24日のことです。
これはモールスによるワシントンDCの裁判所からボルティモアのモールスの事務所まで66km離れた2つの地点を結ぶ信号の交換実験として行われています。

無線での音声放送(ラジオ)が世界で最初に実現したのは1900年。
公共放送かつ商業放送の最初は、1920年のKDKA局のAM方式によるものだそうです。
FM方式は1902年に考案されたものの、AM方式がすでにビジネスとなっていたことなどの影響も受け、実用化されたのは1933年になってからのことです。
日本初のラジオ放送は、1925年3月22日、社団法人東京放送局(現在のNHK東京放送局)によって行われました。

イギリスのBBCがTVの実験放送をはじめたのが1929年。
1935年にドイツで世界初の定期試験放送が開始され、ベルリンオリンピックの中継が行われました。
日本では、1939年5月13日のNHK技研による公開実験が最初だといわれています。

コンピュータの歴史

1642年、パスカルがピン歯車式計算機(加算機)、パスカリーヌを開発。
1889年、ホレリスがパンチカード方式の自動集計機を実現。
1936年、アラン・チューリングが万能計算機械(チューリングマシン)の論文を発表。
1945年、ジョン・フォン・ノイマンがストアードプログラム方式を提唱。
1946年、ペンシルバニア大学でENIACが完成。
1952年、IBMが初の商用のプログラム内蔵式コンピュータIBM 701を発売。
1956年、プログラム言語FORTRAN誕生。
1964年、IBM社、汎用コンピュータ、システム/360を発売。
1969年、ARPANETが運用開始。
1973年、アラン・ケイらが世界初の本格的GUIを装備した暫定Dynabook環境を構築。
1975年、Microsoft社設立。
1977年、Apple II 発売。
1980年、ティム・バーナーズ=リー、WorldWideWebの元となるEnquireを開発。
1983年、任天堂、ファミリーコンピュータ発売。
1984年、Macintosh発売。
1985年、Windows1.0発売。
1993年、Mosaic公開。
1997年、IBMのディープ・ブルーがチェス世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフに勝利。
1998年、Google社設立。

今日のところはまずデータの羅列のみ。
あくまでHII(Human Information Interface)を考えるのが目的なので、情報の側だけでなく、ヒトの側も考慮していかなくてはいけないなと思いますので、忘れないようにそれもここにmemo。
生物進化も忘れずに。

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この記事へのコメント

  • gitanez

    SWさん、

    非常にタイムリーな本の紹介ありがとうございます。
    2006年06月23日 01:30

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