サービス・エンヴィー

シェアビジネスの成功の鍵のひとつは、サービスをかっこよく素敵に魅せることでしょう。

シェアサービスを利用するユーザーは、必ずしも、そのほうが安いから、環境に優しいから、持っていても邪魔になるから、という理由でシェアしたいわけではないはずです。
シェアサービスになっても、ユーザーのトータルコストに関する感覚は大きく変化しないはずだし、モノを選ぶ際の趣味・嗜好が大きく変化するわけでもありません。

なぜ利用しようと思うのか?を考える

だから、ユーザーは相変わらず豊富なバリエーションから選びたいし、品質のよい素敵なものを利用したいと考えるし、利用するのにいちいち面倒な手続きを減るのはまっぴらです。
たとえ、安かろうと環境によかろうと、品質があまりよくなく、古臭く、バリエーションもあまりなく、それを手に入れる際にいちいち遠い場所まで取りに行ってまた返さなきゃいけないサービスなら、高いお金を出してでも自分がいいと思うものを買ってしまうでしょう。たとえ、それをほとんど使わず、置き場所に困るかもしれないと思っても。

そう。シェアのサービスは、単にコスト削減のためのリースやレンタルとは違います。
それを手に入れるため、利用するための金銭以外のトータルコストを含めても、所有するよりシェアするほうがよくなければ、ユーザーはシェアサービスを利用しないでしょう。

サービス・エンヴィー

誤解してはならないのは、ユーザーは何かを我慢してシェアサービスを使うのではないということです。所有をあきらめてシェアサービスを利用するのではない。シェアのほうが所有するより、いろんなバリエーションから選べたり、品質のよいものを利用できたり、いつでも好きな時に倉庫の奥から引っ張り出すような面倒な手間やメンテナンスの手間もなく、利用できるという明らかな利点があるから、シェアサービスを利点するのです。つまり、シェアサービスというのは、そのように設計されている必要があるわけです。

ユーザーは、製品そのものと同じくらい、それをどう手に入れたかを自慢したがる。自分のバッグは「借り物」か「レンタル」だということを隠さないルイーズと同じで、ユーザーはPSSを利用していることを誇らしげに語る。「どうモノにアクセスするか」がある種の社会的なステータスになり、ライブワークのデザインたちの言う「サービス・エンヴィー」(それを利用することがステータスになるようなサービス)が生まれる。ライブワークの戦略デザイナー、デヴィッド・タウンソンは、サービス・エンヴィーとは「モノよりサービスを欲しがらせること」だと言う。そして、そのためには持っているものではなくて利用しているサービスをとおして自分がどんな人間かを相手に表現できるようなサービスを作ることが必要だ。
レイチェル・ボッツマン&ルー・ロジャース『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』

ここでいうPSSはプロダクト=サービス・システムの略です。そう。シェアサービスを魅力的なもの、ステータスが感じられるものにするためには、そう思わせるサービス・システムの設計が不可欠ということです。

もちろん、ユーザーに魅力あるサービスにするためには、ユーザーの利用状況や好みや価値観などををよく把握した上でシステムをデザインする必要がある。しかも、多様性をもつユーザーのウォンツとバリエーション豊富なモノのマッチングを実現するには数学的素養も求められるでしょう。
そうしてはじめて、ここで言われるようなサービス・エンヴィーが生まれるのです。

どうやらマーケティングはますます人間中心の感覚を研ぎ澄ます必要がありそうです。



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