「所有」から「利用」へ

シェアのビジネスは、人びとのモノに対する態度を「所有」から「利用」へと変換します。

例えば、子供のおもちゃの「シェア」サービスであるBabyPlays.com

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このサイトで、使わなくなったおもちゃをもつ人と新たにおもちゃを欲しがっている人の間でおもちゃの所有権が移動するわけですが、これも「所有」よりも「利用」が重視されているからです。
買って買ってとねだられて買ったのに、すぐに飽きてしまう子供のおもちゃをゴミにしないために、賢くシェアする形にライフスタイルが変化します。

また、バッグやアクセサリーのレンタルサービスであるBagBorroworSteal.comでも同じです。

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高くて買えないブランドもののバッグでも、レンタルなら手が届きます。しかも、気分に合わせていろんなブランドのバッグを利用することができる。バッグがたくさんありすぎて、置き場所に困るなんてこともありません。

そうです。これらのサービスの利用者にとっては、何を「所有」しているかではなく、自分が「利用」したいものを利用するために、どうモノにアクセスしているかが、彼らにとってのステータスになっています。
ブランドものを持っていてかっこいいという古い価値観ではなく、どう賢く自分が好きなものを利用していて、結果として環境にもやさしい生活をおくっていることが新しいかっこよさになりはじめているのです。

シェアにもいろんなビジネスモデル

日本ではまだシェアのモデルはそれほど多くないのですが、とはいえ、まったくないわけではなく、例えば、クルマを借りたい人と貸したい人をマッチングするカーシェアリングのサービスであるCaFoReがあります。

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クルマを使わないときもその資産を有効に活用するために、利用したい人に貸すのです。もちろん、それで貸した人から利用料を収入として得ることができます。CaFoRe自体はその仲介料が収益になります。

同じカーシェアリングでも、アメリカで人気のあるZipcarとはモデルが違います。

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Zipcarのほうは企業自体がシェアリングするクルマを保有し、そのメンテナンスなども行なっています。
Zipcarのモデルでは、いつでも好きなときに利用者がクルマを使えるよう、どこにどんなクルマをどの程度は位置しておけばよいかがサービスのユーザー体験を高める1つの鍵になります。簡単に借りれて好きなだけ使える。そのあたりの利便性がなければ、いままでのレンタカーとすこしも変わらず、サービス利用が高まるはずはないのですから。

マーケティングが変わる

当然、これらのサービスのマーケティングは、従来の「所有」してもらうために一度売るだけで良かった製品のマーケティングとは課題が異なります。これらのサービスは、利用したい人に必要なときに必要なものを何度も利用してもらえるようにすることがマーケティングの課題になるからです。

もちろん、それにはソーシャルネットワークの「つながり」が必要ですし、そのつながりを分析し、サービスのインフラに落とし込む統合力が求められるでしょう。人間中心デザインでいう「利用状況の把握」がシェアビジネスの設計では必須のスキルとなるでしょう。
また、繰り返しいろんな人が使えるよう製品そのもののデザインも変わってくるはずです。耐久性やメンテナンス性はこれまで以上に重要になってきます。ただ、きらびやかなだけのプロダクトデザインは時代遅れになるでしょう。

そうなんです。シェアの時代のマーケティングは従来のマーケティングの考え方が大幅に変わります。
その変化にあなたはついてこられるでしょうか?

 

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