Web2.0というか、現在のWebベースのシステム開発の現場感が伝わるおもしろい内容だったので、読んでみてはいかがかと思います。
その中でのこんなやりとりがちょっと僕の目にとまりました。
編集部
Web2.0を礼讃する人たちが沢山いるけれど、それを「どうなの?」って思っているのが、実際にシステムやツールを作っているプログラマーさんだっていうのは、すごい重いことだと思うんですよ。
武田
そうですね、そうだと思います。実際にオンライン・マーケティングをやる人々にもっと気づいて欲しいです。あと、やっぱりデータってすごく貴重なものだと思うんです。で、今、ユーザーからそれを収集しようとする動きが強いじゃないですか。
オンラインマーケティングのMarkeZine:第1回 現場プログラマが見る、Web2.0:Page 3より
まず、前半の「Web2.0を礼讃する人」「オンライン・マーケティングをやる人々」と「Web2.0への礼讃をどうなの?と思ってるプログラマー」っていう対比は、結構、重要なポイントかなと思います。
売上の要因を因数分解する
僕自身、「Web2.0を礼讃する人」であり、かつ「オンライン・マーケティングをやる人々」の1人なわけですが、同時に僕自身が所属する会社はWeb制作を行う会社ということで、まわりにいる人は圧倒的に後者に近い立場、つまり、実際にものをつくる人々が多いわけです。そういう立ち位置にいることもあって、僕のやってるオンライン・マーケティングの手法は、「Web/ブログを使った企業理解の促進/企業ブランドの形成」でも書いたように、
- 情報発信のプラットフォームとなるWebをきちんとした形で構築すること
- それを基盤に計画~実行~測定~コントロールのPDCAサイクルで、定期的な情報発信、アクセスログ解析などを使った効果測定、関係者による定期的な編集会議の実施などによりオンライン・マーケティングの目的に応じたWeb運用を行っていくこと
実際、オンラインのそれに限らず、マーケティングとは、より多くの顧客(あるいは潜在顧客)と企業(あるいはブランド)との関係を築き、維持していく活動です。
そのためには情報発信あるいはユーザー側からのフィードバックというコミュニケーションを、より多くのユーザーとの間に積み重ねることで、ユーザーからの認知、理解、信頼をベースに実際の商品やサービスの購買・利用行動につながる関係性をつくっていくことが必要不可欠です。
とにかく商品を知ってもらえばいいというわけではありません。
なにかとSEOやリスティング広告が話題となりますが、それは「今そこそこ売れている」ものを、「今よりもうすこし/もっと売れる」ようにするといった効率化の問題であり、それ自体はいまだ満たされない顧客の欲求を新たに埋めることでもないですし、リピート購入を促進することにだってつながりません。
当然、マーケティング的な視点で総売上を増やそうと思えば、その要因を因数分解して、
- 顧客の数を増やす
- 購入頻度を増やす
- 1回あたりの購入個数を増やす
- より高い商品を買ってもらう
その場合、SEOやリスティング広告で可能なのは、その1要素である「顧客の数を増やす」ことだけです。
地味ながら効果の高い「ものづくり」からのアプローチ
もちろん、それでも価値があるのでSEOやリスティングがもてはやされているのですが、より総合的な視点でみれば、ほかの要素も踏まえて、顧客と企業の継続的な相互作用によって、双方の間に強いつながりをつくっていくプロセスを生み出すことが課題となります。こう考えた場合、先の2本の柱をベースとしたWebコミュニケーションとは非常に相性がいいはずです。
そのことは自身でブログやSNSを使って他の人との関係性を築いている方などには比較的理解しやすいことではないかと思います。
繰り返し訪問してもらう。頻繁に訪問してもらう。
そういったことはきちんと定期的な情報発信を行い、かつ、そのことがきちんと伝わるRSSの配信が行われていれば、SEOやリスティングによる新規ユーザーの獲得以上に、安定したリピートユーザーによるアクセスが得られるはずです。
マーケティング的には、これをアクセスだけではなく、売りにつながるしくみへとさらに一歩進めるだけでよいわけです。
まずはきちんとしたWebサイトを構築する。
内容のある情報をきちんとペースを守って発信し続ける。
どちらかといえば「ものづくり」の視点が強いやり方で、僕は普段、クライアントのオンライン・マーケティングの手伝いをさせてもらってるわけですが、このやり方、一見、地味なんですが、確実に効果を得ようとすれば、これほど確実性が高く、かつ結果的に手っ取り早い方法はないと思ってます。
簡単に言えば、「きちんとしたWebサイトをつくる」そして「きちんと頻繁に情報を発信していく」ことをやっていれば、マーケティング効果はちゃんと出るんです。
それをやらずに、見栄えがいいだけのWebサイトをつくって、ろくに情報発信もせず、かと思えば、ほとんど魅力のないページに向けたSEOやリスティングにばかり力をいれたとしても、お金がかかるばかりでマーケティング効果なんてでないんです。
たとえ、その手法をSEOやリスティングから、RSSやブログといった2.0的なものに変えても、基本ができてなかったとしたら、何にも変わらないんです。
オンライン・マーケティングをやる人も、ものをつくるということがどういうことなのかを知らなくてはいけない
このとき、大事なのは、目的の1つにはあくまで「マーケティング」があるとしても、それを成功するためには、そのベースをつくってくれるWebサイトそのものやそれを作ってくれる人たちへの敬意を決して忘れてはいけないということです。この手法でオンライン・マーケティングをやろうとするなら、マーケターはWebという「ものづくり」をちゃんと理解している必要があるし(もちろん、相互理解が大事なのでその逆もいえます)、WebデザイナーやWebプログラマーなどのものづくりの世界に敬意をもって飛び込んでいかなくてはいけません。
はっきりいって、それを見ても何をどう作っていいのかわからないような企画書を偉そうに、作り手の人たちに提示しただけのクセして、出来上がったものにあれこれくだらない文句を言うようなマーケティング・プランナーでは、はっきりいって役不足です。
本気でオンライン・マーケティングを成功させるつもりがあるなら、マーケティング・プランナーも、作り手がそれを見れば何を作ればいいか、理解できるような画面構成や画面遷移図をもって「ものづくり」の場に臨むべきでしょう。
これがMarkeZineの記事の最初に書いた「今後はコードが書けなければ、オンラインマーケティングに手を出せないような状況になるのではないかとさえ思えてくる」という言葉の意味です。
その意味で先の引用箇所での「実際にオンライン・マーケティングをやる人々にもっと気づいて欲しいです」という発言には大いに共感します。
と、ここまでの前半がどちらかというと短期的視点での話。
長くなりそうなので、続きは(後編)で。
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