プロジェクト推進における集合知の利用

集合知に関して考察した『「みんなの意見」は案外正しい』の中で、著者のジェームズ・スロウィッキーは、賢い集団の特徴として4つの要件をあげている。

  1. 多様性:それが既知の事実のかなり突拍子もない解釈だとしても、各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている
  2. 独立性:他者の考えに左右されない
  3. 分散性:身近な情報に特化し、それを利用できる
  4. 集約性:個々人の判断を集計して1つの判断に集約するメカニズムの存在

この4つの要件を満たした集団は、正確な判断が下しやすい。なぜか。多様で、自立した個人から構成される、ある程度の規模の集団に予測や推測をしてもらう。その集団の回答を均すと一人ひとりの個人が回答を出す過程で犯した間違いが相殺される。言ってみれば、個人の回答には情報と間違いという2つの要素がある。算数のようなもので、間違いを引き算したら情報が残るというわけだ。
ジェームズ・スロウィッキー『「みんなの意見」は案外正しい』

いま、あるプロジェクトに関わっているが、そのプロジェクトメンバーからなる集団は、それぞれ優秀な人が集まり、環境としても1~3の条件を十分に満たしている。
しかし、残念ながら4の条件はまったくといっていいほど欠けている。

個別での横のつながりで情報共有は行われても、それがプロジェクト全体として集約されることはない。
ミーティングなどで顔を合わせることがあっても、それぞれが異なる専門的な立場から意見を述べるため、集約機能のない集団では、最終的なアウトプットを出すことができない。

当然ながらプロジェクトの進捗はとどこおる。
それぞれ、みんな、自分の力を出してるのに、どうやってもうまくいかない。
プロジェクトメンバー内部で責任のなすりつけあいもはじまってしまっている。
上記の4つの要件がすべて揃うことがいかに大事かを思い知らされていたりする。

さて、そこで思うのは、面と向かっての会議というのは、実は情報あるいは知の集約には不向きではないかということだ。
意見を述べ合うのは、会議でもいい。
しかし、最終的な知の集約のためには、情報を横並びに並べてみることができるビューが必要で、そのビューによってはじめてスロウィッキーがいう「引き算」が成り立つのではないかということだ。
そのビューの生成にはやはりWebサービスのようなものが向いているのだろう。

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