2006年04月25日

村上隆氏の著作権侵害訴訟の和解に関して

確かに、著作権侵害なのだろう。それは間違いない。

現代美術家でルイ・ヴィトンのデザインなどで知られる村上隆さん(44)が、自らのデザインと類似したキャラクターを勝手に使用され著作権を侵害されたとして、大手子供服メーカーの「ナルミヤ・インターナショナル」(東京都港区)に損害賠償などを求めた訴訟は24日、東京地裁で和解が成立した。

カイカイキキ:http://www.kaikaikiki.co.jp/
ナルミヤ・インターナショナル:http://www.narumiya-net.co.jp/

でも、なんだかしっくりこないのは何故だろう?
今回の訴訟で問題となった作品は、村上氏の会社「カイカイキキ」のページに掲載されている。

関連記事
「現代美術家 村上隆が訴訟提起した著作権侵害事件の和解による終了について」:
http://www.kaikaikiki.co.jp/news/list/murakamis_lawsuit/

その記事の中で村上氏はこう書いている。

これらのキャラクターは、キャラクターであると共にアート作品です。日本ではアートの社会的評価や理解度は低いままです。功利主義で、文化発展への尊敬の念乏しき,文化の民意が著しく低い国。それが日本です。
しかし,こうした現状に甘んじるのではなく、オリジナルアートの価値を社会に認識してもらうことが重要です。私は、これからもそのために精力を注ぎ続けていきます。

しっくりこない単純な理由はこうだ。

そもそも村上氏のDOBくんというキャラクター自体、ミッキーマウスを彷彿とさせるものだし、その名前自体、アニメ「田舎っぺ大将」の「どぼしてどぼしておしゃまんべ」に由来しているという、複製やコピー、模倣といった言葉を彷彿とさせる作品だからなのだろう。
さらに言えば、デジタル著作権に関しては、第一人者の一人であるローレンス・レッシグの『FREE CULTURE』を読めば、当のミッキーマウス自体、その誕生の瞬間である1928年の『蒸気船ウィリー』において、ウォルト・ディズニーが先行するバスター・キートンの映画『蒸気船ビル』を模倣であることがわかる。
(参考:OSCON2002基調講演<フリーカルチャー>

先の引用で村上氏は、アーティストとしての立場でアートの視点からコメントを述べているように思われるが、当然、ナルミヤ・インターナショナルという法人に対して起こした今回の訴訟においては販売権も争点の1つだったと思われ、単にアートというイメージから想起されるような意味での「オリジナル」云々の話では収まらないはずだ。

こういう点を考えるとき、村上氏の言う「功利主義で、文化発展への尊敬の念乏しき,文化の民意が著しく低い」という言葉のおける「乏しい」や「低い」という言葉があまりに主観的でいつでも上下の関係を逆転可能なレベルの話でしかないと感じられてならない。
もし先のコメントが、営業権あるいは販売権の側面から著作権の侵害であるというものであるなら、非常に納得がいっただろう。
しかし、実際のコメントはまったく腑に落ちないものだ。

誤解してほしくないのは、今回のナルミヤ・インターナショナルの類似が著作権を侵害しているという判断には僕自身、まったく異論はないし、アーティストの生活の基盤としての著作権を守ることは重要だと思う。

しかし、その一方でナルミヤの類似と、村上氏自身の類似がどう違うのか? 村上氏自身、何ゆえにそこに自身の「オリジナル性」を主張するのかは、営業権という意味以外ではいまひとつ理解できなかったりする。

アートのオリジナル性というのは非常に古くから問題視されてきたことだ。
何より今回の件で違和感が感じられるのは、村上氏のコメントで主張されるアート感がその古くから語れてきた問題を模倣したように思えるせいで、とても古臭く感じられることなのだ。

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posted by HIROKI tanahashi at 13:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 著作権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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