"2020年"に関する補足情報

Web2.0を2020年に向けた準備としてとらえる」で、唐突に紹介してしまった"2020年"というターゲット。その数字がどこから持ってきたかをいちお補足しておこう。

それはいわゆるムーアの法則と関係がある。

ムーアの法則と呼ばれる有名な格言によれば、1つのチップ上の部品数は約2年ごとに倍になるという。今世紀初めに登場したペンティアム4プロセッサには、1秒間に10億回以上オン・オフを静かに繰り返す微小スイッチが、何百万個も入っている。(中略)今後もムーアの法則が成り立ち続けるとしたら、理論的にはたった1個の原子からなるスイッチにたどり着くはずだ。
ジョージ・ジョンソン『量子コンピュータとは何か』

この「たった1個の原子からなるスイッチにたどり着く」時点が2020年と予測されている。
そして、もちろん、それに対する対応は半導体業界で進んでいる。

半導体メーカーの予測、および米半導体工業会(SIA)の技術ロードマップによると、CPUに集積されるトランジスター数は、現在の10億個から2年後には倍の20億個、4年後にはなんと40億個になるという。SIAのロードマップは、チップの小型化と集積度増大が2020年まで続くと予測している。


米Intelは10月22日、2020年に向けてトランジスタの小型化、高速化、省電力化を進める先進プロジェクトの一部を披露した。(中略)Intel研究者らは、カーボンナノチューブ、ナノワイヤなどの新しい素材や、トランジスタを原子レベルに縮小化する新技術を紹介した。

そう。ちゃんと2020年をターゲットにしているのだ。

そして、下層である容れ物がその容量を増せば、表層に置かれる情報自体の量も増える。
実際、人類の歴史上、情報量が指数関数的に増え続けているという研究結果も出ている(残念ながら、その資料をネットワーク上で見つけられなかった。誰か心当たりのある人はいませんか?)。

ただし、技術的な問題がないわけではない。
チップの小型化が進み、それが原子レベルに到達すると、それは私たちが慣れ親しんだニュートーン的古典物理学の世界から、量子力学の世界に入るからだ。

コンピュータ技術者が量子レベルにまで小型化を進めると。チップの中の出来事はもはや決定論的ではなくなる。1と0をはっきり区別することができなくなるのだ。そして1と0に加えて、Φという状態も取りうるようになる(ここではこの記号はギリシャ文字の「ファイ」の意味ではなく、0と1が量子的に重ね合わされた状態を表す)。量子はこのようなあいまいさを持っているので、同じ原因が同じ結果を及ぼすとは限らない。不確かさが支配するのだ。
ジョージ・ジョンソン『量子コンピュータとは何か』

そして、こうした量子コンピュータ技術に関する研究も進んでいる。
参考http://www.labs.nec.co.jp/innovative/E3/top.html

こうした情報技術、情報科学に対する大きな視点の中でWeb2.0をとらえておくと、近視眼的な発想にとらわれずにすむのではないかと思う。

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