シックスシグマとインターフェイス

最近、あらためてシックスシグマのフレームワークには、しくみ=システムを設計する上で役に立つことがたくさんあると考えるようになりました。インターフェイスを組み立てたり、インタラクションを最適化するという点では基本になる考えが満載だと感じます。

特に、デザイン思考を経営戦略として取り入れるということがいわれますが、こと日本という九人の現状においては、「デザイン思考」云々の前に「設計思考」とでもいうべき、人としくみ=システムのインターフェイスを実際に動き、利用可能にする技術を身につける必要があると思うからです。
デザイン思考というのは、主にユーザー体験を中心に、人と利用対象となる商品なりサービスなりの関係をインターフェイスの視点で定義しつくりあげるアプローチです。ですが、それが有効なのは、そのインターフェイスを実際に動くものにするシステム=しくみの設計力があってこそです。まさに足りないのはそこです。

その意味に置いて、設計力という計りごとを現実に設定する力が、画(絵、ヴィジョン)を企てる企画力以上に大事だろうと感じます。
そこではインターフェイスの絵を描くことではなく、実際に動くインターフェイスを実現する力が問われます。単に、ユーザー中心で企画するということではなく、インタラクション重視のインターフェイス設計を実現する力が必要で、その観点において、シックスシグマのフレームワークには利用可能なツールがたくさんあると思うのです。

人が動かさなければシステムではない

ここでいう設計は、いわゆる情報システムの設計をいうのでもなく、モノの設計をイメージしているのではありません。むしろ、企業における組織とか、社会システムのようなものを想定しています。
その観点では、設計というのは、必ずしもシステム化に収束するわけではありません。

むしろ、システムに落ちるところと、システム化せずに運用的にやっていくところを明確に分けて定義することも含めて設計です。もちろん、システムというには、情報システムも含めて、狭義のシステムとそれを利用するユーザーの側がともに、システムが想定したような形で動いて機能します。
狭義のシステム側がユーザーが想定通りに動いてくれれば機能するとしても、実際にユーザーがそのように動いてくれなければ、それは実際には機能しません。
それは商品でもおなじで、こんなに素晴らしい機能やベネフィットがあるのにと作り手側が思っても、実際にそれを使うユーザーがいなければ機能やベネフィットも実際の生活で役立つことはなく、単なる可能性でしかありません。機能の素晴らしさやベネフィットは可能性の次元ではなく、現実性の次元においてはじめて評価されるものでしょう。

シックスシグマにおける主要顧客とコアプロセスの特定

そういう観点で、シックスシグマの考え方を見直しています。

先にも書いたように、こと日本においては経営戦略として、インタラクション重視のインターフェイス設計という観点をしっかり取り入れることを考えたほうがよいと思います。どういう風にビジネス側とユーザー側のインターフェイスを設計すれば、ビジネスのインタラクションがスムーズかつ効果的に実現できるかという観点で、です。
その際には先に書いたシックスシグマのフレームワークが非常に役立つと思うのですが、残念ながら、シックスシグマはインタラクションデザインのためのフレームワークだということに気付く人は多くはありません。

シックスシグマでは、主要顧客とコアプロセスを特定し、そのあいだのインタラクションを評価します。その主要顧客の特定と明示したコアプロセスを関連させて、現行のビジネスプロセス上の重要な問題点のあたりをつけた上で、利用品質の改善を行っていきます。そうした考え方とそのために用意された各種のツールの使い勝手のよさが、シックスシグマの使える点です。

例えば、SIPOCダイアグラムでインタラクションを図式化して明示する。そして、明示したプロセスの各段階のパフォーマンスを測り、それが顧客要求を満たすレベルになっているかを分析する。このあたり、すこし科学的な視点が入ったUCDと捉えることができます。
しかも、一般的なUCDが、そのプロセスのなかで「ユーザーと組織の要求の明示」とうたいつつも、その両者の要求をつなぐ方法が明らかになっていないのに対して、シックスシグマは最終から主要顧客の特定とコアプロセスの明示を重視するように、両者の関係におけるインタラクションを重視してる点は非常に評価できます。

シックスシグマとインターフェイス

企業における個々のスタッフは、商品にとってのユーザーと似ています。しくみやそのインターフェイスに不備があれば、スタッフ=ユーザーは、動かないしくみを横目に勝手な工夫をするだけです。それが商品なら単に使われないだけのことですが、企業では仕事が成果につながらないという事態につながってしまいます。
企業内でしくみとそのインターフェイスの設計に不備があるということはそういうことなのです。それを単に「がんばれ!」という精神論でどうにかしようとしてもどうにもなりません。ここに設計的な視点のなさを感じますし、インターフェイスというもの重要性に対する無知を感じるのです。

シックスシグマはユーザー視点でみたビジネスプロセスを重視している点で、実はインターフェイス設計手法なのです。

繰り返しますが、インターフェイスやインタラクションのデザインの基本がある程度浸透しているアメリカでならデザイン思考は成り立ちますが、そのあたり、なんともお粗末なこの国ではデザイン思考からのアプローチではうまくいきません。せいぜいよいアイデア、よい企画で終わってしまい、実現可能なしくみの設計、実行に結びつかないのです。

その点で、ビジネス側からみれば、しくみの設計にシックスシグマをインターフェイス設計と結びつけて考えることが有効でしょうし、逆に、情報システムのユーザーインターフェイス設計にシックスシグマのフレームワークを導入することも有効だと思います。

そもそもまったく畑違いのシックスシグマとインターフェイス設計ですが、実は根底に流れるものは、人が使うシステムを現実的な視点で最適化するための手法という意味ではおなじものをもっています。下手に違う分野のものだからと、分野にとらわれて無視するのではなく、柔軟な発想で使えるものは有効に使うという姿勢が大事だと思います。



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この記事へのコメント

  • bizizexecution

    かつて製品の品質向上手法だったシックスシグマはGEで展開された時に、「顧客のために何をすべきか」という視点を埋め込まれ、顧客視点で適切な課題を選定し、実行態勢を作り、問題を定量化、可視化して解決するまでの活動マネジメント手法に変化しました。これにより、適用できる範囲は格段に広がったと思います。
    2010年10月07日 10:44

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