2010年07月20日

ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新/汐留ミュージアム

18日の日曜日、汐留ミュージアムで開催されている「ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新」を見てきました。
ルーシー・リー、バーナード・リーチとともに、20世紀のイギリス陶芸界を代表する作家として知られるハンス・コパーの日本での最初の大規模な回顧展です。



ユダヤ人として生まれたコパーは、1946年にイギリスに亡命し、同じくユダヤ系の家庭に生まれ、ウィーンから亡命してきたルーシー・リーの工房で、オートクチュール用のボタンづくりの助手として働きはじめます。今回の展覧会では、当時のリーとの共同製作のコーヒーセットなども展示されていますが、コパーの陶芸家としての人生はまさに、このリーとの出会いからはじまりました。

ルーシー・リーとハンス・コパー

今回の展覧会はなにより、国立新美術館でのルーシー・リー展がまだ記憶に残っていたこともあり、この同時期に活躍し互いに交流も深かった2人のイギリス人陶芸家の作風の違いが鮮明となり、面白かったです。

リーとコパーの作品は、一目見ただけでも違いは明らかです。
1958年にコパ−がリーの工房を独立した頃から、その作風の違いが明らかになりはじめます。

リーが生涯いろんな釉薬の実験を通じて、さまざまな色彩の作品を生み出したのに対して、コパーの作品はごく限られた釉薬を用いて、色彩的にはいささか乱暴にまとめてしまえば白、黒、茶の三色で展開されます。
その一方でコパーは、轆轤で別々に整形した2つ以上の形を組み合わせて作品をつくる建築的な構成による作品づくりを行っています。これもリーの作品があくまで轆轤による手の感覚を最後まで有していたのに対して対照的です。

また、先ほど、コパーの作品は色彩的には限られていると書きましたが、逆にいえば限られた色彩と形状、サイズなどのバランスをリーとは異なる論理的な視点で探求しているようにもみえました。白化粧土をかけてから部分的にそれを掻き落としを施し、焼成後にやすりをかけたりして作り出した複雑で多彩な質感は、その建築的な造形とともに、リーの作品以上に構成的な意志を感じさせるものです。

陶芸という火の偶然の影響が強いと思われる作品制作において、きわめて、その偶然を排する意図をつよく感じるのが、コパーの作品でした。
1960年前後に工業デザインや建築のためのデザインをコパーが手がけているのも、そんな彼の資質によるものかもしれません。リーがウェジウッドの依頼でティーセットのプロトタイプ作成を行いながらも結局はそれが実現されることなく終わったのとどこか対照的です。

晩年のキクラデス・フォーム

リーとの比較では、そんな点が見えてくるのですが、ひとことで感想を述べるとすれば、ハンス・コパーの作品はSFっぽかったです。

正直、1960年代のロンドン時代の作品は実験的かつ洗練されすぎてるように感じて、ちょっと退屈だったのですが、晩年の闘病生活のなかで制作された「キクラデス・フォーム」と題された小作品のシリーズは、存在しない植物の種子の化石みたいで面白かったです。

冒頭に載せた、展覧会カタログの写真に写っているのが、その「キクラデス・フォーム」の作品ですが、中期にみられた幾何学的で建築的な作品にはない、有機的な印象が感じられるのが、この晩年の作品群です。

ルーシー・リーもまた、その晩年の作品で非常に有機的な印象を与える作品をつくっていたことを知りましたが、彼女の作品に感じる有機性がどこかしら呪術的な印象を与えるのに対して、コパーの作品に感じる有機性がSF的な科学実験による人工的な生物の製造といった印象を与える点も興味深かったです。

その「キクラデス・フォーム」は、エーゲ海の島に伝わる古代の石偶に着想を得たものと紹介されていましたが、僕には、より現代的な遺伝子組み換え実験のような操作から生まれた造形を感じたのです。そのくらいコパーの作品は、形態・スタイルへの意志というものを強く感じる作品だったのです。

実は、このあたりの形態・スタイルへの意志の強さが逆に、リーの晩年の作品にあった迫りくるような異様な佇まいが生まれてくるのを排除してしまっているように感じられて、僕の好みからいうとリーに軍配があがってしまうのです。

ルーシー・リー展をみた方はぜひ

さて、ルーシー・リーに比べて、日本では知名度の低いハンス・コパーですが、国立新美術館でのルーシー・リー展をみて感激された方などには、ぜひおすすめしたい展覧会です。

会期も9月5日までと余裕がありますので、お時間のあるときにでも行ってみてはいかがでしょうか。

ハンス・コパー展 20世紀陶芸の革新
2010年6月26日(土)〜2010年9月5日(日)
パナソニック電工 汐留ミュージアム
http://panasonic-denko.co.jp/corp/museum/exhibition/10/100626/index.html

 

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posted by HIROKI tanahashi at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | アート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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