
この展覧会は、すでに紹介した『観じる民藝』
空間を温める品々
本展では、尾久さんのコレクションから、日本の陶磁器、木工や民画をはじめ、李朝朝鮮、中国だけでなく、西洋などの古い手仕事の品が300点以上展示されています。通常の展覧会同様にガラスケースに入れられた品もありましたが、いくつか「○○の部屋」と題されたスペースがあり、そこではテーマに従った品々が、部屋を模した空間にそのまま置かれていたのが魅力的でした。
本で見ただけでも惹かれるものが多かったのですが、実物を見るとやはり堪りません。
とにかく、尾久さんの集めた品々が並んだ空間は、それだけで温もりがあり、存在感のある空間になっていました。下手をすれば、僕の家なんかよりもよっぽど温かい。
僕の家にも民藝の品は結構な数あるのですが、それでも使い込まれた、あの古民藝の品の醸し出す存在感には到底及ばないということを肌で感じました。
展示された古民藝の品々の魅力は、すこし前に観たルーシー・リーの作品が魅せたものとは同じ手仕事によるものでも、また違う魅力を持っています。
ルーシー・リーの作品はあくまで作品としての孤高の佇まいをもっていましたが、古民藝の品々は強い存在感を持ちながらもあくまで生活にとけ込もうとする親しみを持っていました。
おそらく、あれらの品の作者は、決してその品々を作った職人だけではないのです。それを使い続けた人たちもあれらの品々においては作者なのでしょう。
もちろん、それをいま所有し、実際の暮らしのなかで用いている尾久さんも含めて、あの魅力ある品々を作り続けている。
美術館という無機質な空間に置かれてなお、あの存在感なのですから、尾久さんの家に置かれていたら、どうなるのだろうと想像すると嫉妬も感じたくらいです。
古民藝の魅力
物としての存在感がとにかく今の生活に普通に存在しているものとは比較にならないくらいあるのが、古民藝の魅力だと思いました。しかも、それが人を圧倒するような、自己主張の強い存在感ではなく、存在感を示しつつも、こちらを受け入れ、包み込んでくれるような存在感を持っています。
どうしたら、あのような物が作れるのか、いまの僕にはわかりません。ただ、その決定的ともいえる違いがわかるだけです。
『観じる民藝』
スペインの陶器やアメリカのインディアンが作った穴の開いた器などの存在感もとても温かく親しみのあるものでした。
手仕事の品の魅力というのは、地域を越えた魅力を持つものかもしれません。実際、僕自身も日本の民藝の品同様に、アフリカやインドの手仕事の品に惹かれて、買ってしまうことがあります。
それにしても、使い込んだ品の美しいこと、魅力的なこと。
この展覧会は、来週の日曜日まで開催されています。
ぜひ、一度足を運んでみてください。
尾久彰三コレクション「観じる民藝」展
横浜・そごう美術館
2010年5月29日(土)-7月4日(日)
http://www2.sogo-gogo.com/common/museum/archives/10/0529_mingei/index.html
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